名乗りをあげよう
「じょ、冗談じゃないよ。なんなんだよこの状況は!?こうなったら、私だけでも」
「お待ちなさいな」
俺、村越さん、椿と三人の活躍を目の当たりにし、女強盗はやっと自分達が不利だということに気が付き逃走を謀ろうとドアへと走り出した。
しかし、奈美さんがその行く手を遮るように店内への出入口に立っていた。
そんな奈美さんの傍らに俺達は揃い踏み完全に女強盗へ王手をかけた。
「な、なんなんだよあんたたちは!?」
おっとこれは、アニメでいうところの“名乗りシーン”だな。
よしよし。
俺は、一歩前に出て名乗りを挙げた。
「元中部方面隊第37普通科連隊本部管理中隊情報偵察小隊所属、現よさこいチーム一颯メンバー、正木京介」
次に村越さんが一歩前に出て名乗りを挙げた。
「同じく元中央即応集団第一空挺団落下傘部隊所属、現よさこいチーム一颯煽り、 村越 英吉」
今度は椿が一歩前に出て名乗りを挙げた。
「元真神会空手人喰い華、現よさこいチーム一颯スター 担当、山城椿」
そして、奈美さんが番傘を肩に担ぎスッと前に出て名乗りを挙げた。
「元黒死蝶初代総長、現よさこいチーム一颯代表、桐木奈美 」
さらに、名乗りの最後を閉めたのは
「肩書き無し、よさこいチーム一颯マスコットガール、音無 カレン」
パコーンというコミカルな音を鳴らし女強盗の脳天をトレーで殴り付けた青髪ショートのウエイトレスだった。
「あら、カレンちゃんじゃない。バイト先ここだったのね」
「カレンあんた、おいしいとこ持っていったわね」
奈美さんと椿の言葉に無言でVサインを返した。
「晃。銃回収。ついでにこのおばさん捕縛」
「りょーかい~っと」
またまたまたまた晃が銃を回収しに女に歩み寄り緊縛も忘れずに実行した。
しかも女強盗だけ、亀甲縛りだ。
晃のやつ縛りなれてるのか動きに無駄がない。
女性人ゼンインガドン引きである。
そんな状況の中でカノンという少女は俺の方を見て小首を傾けた。
「あなた、誰?」
初対面だからごもっともな発言だろう。
「俺は、正木 京介。さっき一颯に入会したんだ。君は話の流れからするに一颯の人なんだよね?これからもよろしく」
片手を上げて軽い挨拶を交わした俺をジーっと見つめる自称マスコットガールな彼女。
「ごめんなさい。こんなときどうすれば、いいのか分からないの」
「笑えばいいと思うよ」
すかさず答えた俺に満足したのか
「うん。ナイス」
お褒めの言葉が貰えた。
「私は、カレン。音無 カレン。そこにいる空手ガールとは正反対の大人しくか弱い女の子。ちなみに、スターより、マスコットガールの方が地位と人気は上。京介は特別にカレンと呼んでくれていい」
なんか椿に然り気無くケンカを吹っ掛けての自己紹介をしてくれた彼女は、ナチュラルに俺を下の名前で呼んで自分も下の名前で呼んでいいと言い出した。
「ちょっ、待ちなさいよ!なに然り気無くあたしの事ディスってんのよ!!」
「“楽しかったか?”“スッゴい楽しかった”これ事実。写真撮られる枚数わたしの方が多い。これも事実」
「くっ、あ、あんただってトレーで強盗倒してるじゃない。それも普通じゃないと思うけど」
「トレーはウエイトレスの武器。武器はいざというときに使わないといけない。それにお店を守るのもウエイトレスの使命だから、私は忠実にそれをこなしただけ。あなたみたいにステゴロストリートファイトをしたわけじゃない」
「は、反論できない」
「ちょっと待て、ちょっと待て、お姉さん!反論出来るだろ!?トレーは運ぶ物であって武器じゃないからね!ウエイトレスは店の守護神じゃなくて顔だから!笑顔スマイル0円の癒し系だからね!!それに、戦うメイドさんならよく居るけどウエイトレスはレアだぞ」
彼女と椿の話についバズーカなノリでツッコミを入れてしまった俺は、彼女と椿の二人からイタイ子を見るような目で見られた。
「「戦うメイドさんなんて居るわけない(じゃん)」」
「なんでそこだけ冷静なツッコミ入れるの!?てか、ほんとは仲良いんじゃねーかよ!」
「ふん。誰がこんな貧乳」
「ふん。誰がこんな脳筋」
「「あぁ!?」」
やっぱ仲良いじゃんか。けど、椿一人でも疲れるのに二人揃うと余計にめんどくさいわ。こっちの身がもたない。
「あ、あのよ。俺だけ名乗り上げ損ねたんだが、忘れられてないよな」
腰に銃四丁を刺した晃が、こっちに歩いてきた。
「「「「「あっ、ごめん」」」」」
「そういうやり取りは村越さんの時だけにしてくれよ!俺のキャラじゃねーんだよったく!そして、何故に俺を変態見るような目線で観るんだよ!?」
晃の抗議の声に場の雰囲気が和み、おもむろに椿が晃へ声をかけた。
「ねぇ、晃。あんたの趣味や性癖はあえて聞かないわ。さっきの状況も見なかったことにしてあげる」
みんな一斉にウンウンと頷き亀甲縛りのリアルパフォーマンスは記憶の彼方に消去した。
「それより、銃一つ貸してよ。本物って見たの初めてだし、持てるタイミングって今しかないと思うのよ」
「そうね。何事も経験が大事よね。私にも持たせてくれるかしら」
「わたしもお願い」
何の事を言っているのか分からないような顔をしていた晃は、椿たちのお願いに応え各々に銃を手渡していった。
みんな、マジマジと銃の感触を味わってる。
そんなみんなには非常に申し訳ないのだが、俺は、一つの真実を語った。
「あっ、それ偽物だから」
「「「え?」」」
「ただのモデルガン。ここは平和の国日本だよ。外国じゃないんだからこんなチンピラみたいな奴等が銃なんて持ってるわけないじゃん」
俺の説明にガックリと肩を落とし残念そうにしている奈美さんとカノン。
しかし、椿だけはマジマジとハンドガンを見つめている。
「最近のモデルガンって結構重たいものなのね。昔買ってもらった物と全然違うわ」
そういいながら、こっちに銃を向けて構える椿。
「そんなことないぞ?モデルガンは外は銃だけど、中身は只の玉飛ばす水鉄砲みたいなもんだから、重くなりようが無いはずだし、むしろ重くする意味がないからな」
「ふ~ん。そうなんだ」
そう言いながら、的を探して構える椿。ちょうど、ひっくり返っていた丸テーブルを見つけ狙いを定めている。
「そういや、一個だけやけに重い銃があったぞ?確か音無が倒した女のやつだったかな」
Bang!!!!
「「「「え?」」」」
「……なんか出たんですけど、ていうか本物っぽいんですけど」
パリーン!
「全員動くな!」
「犯人を確保しろ!」
「人質を外へ!」
銃声と共に警察鎮圧部隊が店に入ってきて、犯人を捕まえている。
ていうか、捕まえられてるのは銃を持っている椿と晃に奈美さんとカノンの四人。俺達はというと
「大丈夫ですか?二人でこれだけの人数を相手にするなんて無茶ですよ。半数は撃退できたみたいですけど、後は我々に任せて下さい」
概ね、間違ってない扱いをされている。
「ち、ちがうのよ。あたしたちが強盗をやっつけたの!」
「あらあら、どうしましょうか」
「離せよ!俺は強盗じゃない」
「わたしは只のか弱いウエイトレスです」
あっちはかなり間違った扱いを受けてるな。
「銃声が聞こえたんだ。今おまえたちが持ってるのが証拠だろ!よし。全員確保完了だな。さぁ、大人しくパトカーに乗りなさい。君も、ウエイトレスに扮した共犯者だろ?来るんだ」
カチャっと手錠をかけられ連れていかれる四人を俺と村越さんは呆然と見つめていた。
「ちょっ、ちょっと京介!村越さん何か言ってよ!助けてよ!!」
「うるさい!騒ぐな!!」
報道陣や野次馬の中をフラッシュに照らされながら強引にパトカーに乗せられた椿と大人しくパトカーに乗り込む奈美さんたち。
そして、床で縛り上げられている本物の強盗四人をパトカーに乗せ、すべて確保し終えた警察の人は俺達にも事情を聞かせてくれと言うことで、警察署への同行を求め、俺達はそれに従ったのだった。
此処まで読んで下さりありがとうございます。
一話に登場したカレンをやっと出せました~。
これで、メインキャラ勢揃いしました。
本格的なよさこいシーンまで残りわずかです。……たぶん




