人喰い華
「え~と、その~。何か捕まっちゃいました~みたいな」
椿がテヘペロしながらこっちを見ている。
「……余裕そうだな椿」
普通捕まったらガクブルするか悲鳴上げるか助けを求めるかするよな。
テヘペロってリアクションしないはずだよな。
俺は間違ってないよな。
うんうん。
「余裕じゃないわよ!銃向けられて後ろから羽交い締めにされてんの見てわかるでしょう!さぁ、京介。あたしを助けなさい。可憐なヒロインを助ける主人公がごとき颯爽とね」
「椿なら、自分で何とかできるだろう。何たって男の間じゃ芸能人並みに知名度高いんだし」
確かに見た目は可憐な美少女の分類に入るだろうが、中身はまったくもって見た目と釣り合ってない残念美少女な椿さんは空手の黒帯で初段以上の有段者なのだ。
虎殺しのスキンな館長さんの空手道場に中学高校と通っていた経歴を持つ実戦空手家で、下手に近付いた男はことごとく地面にキスさせられるのである。
別名「人喰い華」
可憐な華には棘がある的な感じなんだが、いかんせん好戦的な性格と言い寄るアホな男(主にチャラ男ナンパ)の数が多かったせいで“人喰い”という異名が付いたのだ。
付けたのは館長さんらしいのだが“その魅惑の見た目で男を近づけ片っ端から喰らう(倒すともいう)なんざ、まるで食虫植物だな椿。人呼んで人喰い華ってか。ガハハハ!”という一言が門下生に広がり、その知人に知れ渡りという具合で広がり続けて今に至るそうだ。
本人も学生時代は満更でもなかったようで、自分で名乗りを挙げていたそうだ。
「その呪われた名称であたしを呼ぶな!あたしそろそろ卒業しないとヤバいの!彼氏いない歴年齢の記録を絶賛更新中なの。だから、人喰い華は封印して見た目とのギャップを無くすの。そうしたらきっと彼氏が出来るはずなのよ。人喰い華とはもう言わせないわ。だから自分からは助からないから、京介が助けなさい」
めんどくせーよ。自分でやりゃいいのに。どうせ今更変えようとしても変わらないだし。
その決意は一体何日目持なんだろうな。
「ごちゃごちゃしゃべってるんじゃねぇ。さぁ、二人とも手を上げてな」
仕方ない。とりあえず言われるがままに従って隙見て助けるか。
俺は村越さんに目で合図を送り両手を上げた。
「よしいい子だ。そこのおまえ!拾った銃をこっちに投げろ」
「ちっ!仕方ねぇな」
晃は二人から取り上げた銃を床をスライドさせながら男の方に投げつけた。
「手間かけさせやがって。姉御そっちはどうだ?」
「準備OKだよ。早いこと逃げるよ。二人は仕方ないけど置いていくわ。あんたも早くこっちへ来な」
姉御と呼ばれた女が現金が入ったバッグを肩に担いで逃げる準備をしている。
「よく見たらおまえ中々の上玉じゃないか、このまま人質として連れて行って後でたっぷり可愛がってやろうか」
男は椿を見て下卑た笑いを浮かべ椿を連れていこうとしている。そのとき男の手が故意にか偶然か分からないが椿の胸を触ったというか当たった。
それと同時に、ストリートファイターでお馴染みの戦いのゴングが鳴り響いた。
……ような気がした。
ラウンド1 ファイ!!
「あんた、調子に乗るのも大概にしなさいよ。なに乙女の胸を断りもなく揉みしだいてんのよ!」
椿選手のどう見ても言い掛かりとしか思えないコメントからの後頭部ヘッドバットが強盗選手の鼻にクリーンヒット!
強盗選手は後ろに後退り鼻を押さえなが前傾姿勢に立っている。まだ倒れていないさすがは強盗選手だ。
おっと椿選手何やら屈み込み呼吸を整え出した。こ、この体勢はまさか!
出た~!!ヤクザな握力世界一の喧嘩師が地下の闘技場で一度だけ見せた“胴廻し回転蹴り”だぁ~!!!
側頭部にクリーンヒット!
と思いきや、な、なんと強盗選手がこれを腕でガードした!なんだこいつ下っ端のくせに意外とやるぞ。先の二人とは大違いだー!
「俺だって元空手の有段者だ!これぐらいじゃくたばらねーぞ!!」
なんと強盗選手も空手家だった!それなら納得のガードだ。それに対して椿選手は不敵な笑みを見せている。なんか怖いぞバトルジャンキーみたいだぞ。可憐な印象なんてまったく無いぞ!
「ちょっと楽しくなってきたわ。あんた、さっきの胸の件は許してあげる。だから再起不能だけは勘弁してあげるわ」
な、な、なんと椿選手はちょこっと胸に当たっただけだというのに空手家強盗選手の息子を再起不能にするつもりだったらしい!
えげつない。えげつなすぎり!
そして“バトルジャンキーみたい”じゃなく、真性のバトルジャンキーだった!
楽しい発言に乙女な部分が皆無だ!
「次で決めるわよ」
「おー!こんかぃ!!」
ラウンド2ファイ!!
椿選手が上段蹴りを放った!
しかしこれをまたもやガードした空手家強盗選手がお返しと言わんばかりに上段蹴りを放った!
これをしゃがみこみ躱した椿選手は低い姿勢から空手家強盗選手の鳩尾目掛けて掌底を放つ。
これを受けた空手家強盗選手は倒れはしなかったものの方膝を着いてしまった。
「終わりよ」
椿選手決め台詞と共に男の水月を蹴り込み、肩へ駆け上がって膝蹴りで顎を打ち上げ、全体重を乗せた肘打ちを顔面に叩き落とした!!!
こ、この技はもしや、習得には自己を発狂寸前にまで追い込む荒行を必要とするという館長さんの息子が見せた技だ!!!
さしもの男もノックダウンだ!!
カウントは必要無いぞ!
勝者!山城 椿ーー!!!!
K.O.!! TUBAKI Win!
「いや~さすがでしたねぇ。見事な大技の連発に私鳥肌が立ちましたよ。如何だったでしょうか村越さん」
「そうですね。人喰い華はまだまだ枯れていませんね。そんな山城選手に私から言えることは一言しかありません」
「それは??」
「はい。それは……あいつ絶対に嫁の貰い手いないわ」
やりきった感を醸し出しつつ爽やかな笑顔で倒れている強盗を見つめる椿。
途中から空いた席に座りながら一部始終を村越さんと解説しながら見物していた俺は、村越さんの素の言葉に深く同意したのであった。
「おーい椿。楽しかったかー?」
「スッゴい楽しかった!……あっ」
村越さんの引っ掛けにスゴく良い笑顔で振り返った椿だが、現実を目の当たりにして固まってしまったのだ。
「て、晃。悪いんけど銃回収しといてくない。ついでにそこの空手マン縛り上げといて」
「り、りょーかい~っと」
椿は、何事もなかったように、晃に声をかけまたまたまた晃が銃を回収しに男に歩み寄り緊縛も忘れずに実行した。
床に投げた銃もちゃんと拾い上げ、晃の腰には三丁の銃が刺さっている。
此処まで読んで下さりありがとうございます。
今回もネタ満載自己満足な話になってしまいました。すいません。
今回の話で主人公たちは実は武闘派なんですアピールをしたかっただけです。
なので、もう少しこの話にお付き合い下さい~




