自衛隊コンビ
奈美先生のよさこい授業開始から1時間半が経過。
時刻は午後3時を調度過ぎるところだ。
店内は昼食時の賑わいを失くし、俺たちの他に客も殆ど居らず、ウエイトレスも注文や来客が居ないので調理場のスタッフと談笑している。
そんな昼下がりの一時に非日常が訪れるとは誰も思わなかっただろう。
そう。これが俺と村越さんにとって悪夢の始まりになろうとは……。
カランカラン
「いらっしゃいませ~」
店内入口のドアが開けられると同時に談笑していたウエイトレスが笑顔で入口に向かおうとしたその時ファミレス内が喧騒に包まれた。
「全員動くなよ!」
「早く金出しやがれ!!」
「きぁー!」
「ひぃー!」
「うるさいよ!大人しくしてりゃ、殺しゃしないよ」
強盗事件発生!強盗事件発生だ!!
覆面をした“THE強盗です”スタイルの4人組がハンドガン片手に押し入って来てレジで金を巻き上げようとしている。
「あらあら、話の途中だっていうのに」
「おいおいビール追加できねーじゃねーか」
「まったく人騒がせな奴等ね」
「トイレ行きたくなってきた」
「話終わる時間が長引くじゃないかよ」
そんな異常事態にまったく動じることなく俺たち4人は不満を口にしながら椅子に座っている。
「おいっ!そこのお前ら呑気にしゃべってんじゃねーよ!」
ったく、めんどくさいなぁと思いつつ俺たちは奈美さんのトークタイムが中断していることに気付いてしまった。
待てよ。これってもしかして、誤魔化せるんじゃね。
「「「「(チャンスだ!)」」」」
俺たち4人は同時に頷き合った。
「どうしたの4人とも?えっとどこまで話したかしら」
こんな状況でも尚トークしようとする奈美さんに俺は真剣な表情で話しかけた。
3人の想いを託された俺に失敗は許されないのだ。
「奈美さん。今このファミレスは強盗に襲われています」
「襲われているわね?」
「俺たちは今、ここで奈美さんの有り難いよさこいヒストリーを聞くことも超大事だと思うんですが」
「ですが??」
「ここは一つ、事件解決に一役かってはいかがでしょうか?」
「京介くん。それは警察の仕事で、あなたの仕事は私の話を一語一句余すこと無く脳ミソの中にインプットすることなのよ」
「おいっ!黙れってのが解らねぇのか!?撃ち殺すぞコラァ!さっさと手上げて立ち上がれ!!」
わぁお。いつの間にか仕事にされてたよ。ていうことは、話終わったら時給くれんのかな?
「「「………」」」
チラッと3人を見たがジェスチャーで“時給なんか発生するかボケぇ!いいからさっさと奈美さん説得しろっ!!”と伝えてくる。
よく俺の複雑な思考回路を読み取れたなコイツら。さては能力者か!?科学と魔術が交差されてたりするのか??シスターと不幸なツンツン頭とビリビリツンデレはどの席に居るんだ!?
って、そんな非現実的な展開は無いわな~。
「じゃぁ京介くん続きを」
「ま、待って下さい奈美さん。俺が思うに、えーと、そう!これは一颯の名前を売るチャンスじゃないでしょうか?」
「チャンス??」
「そうですチャンスです。ここにいる一颯のメンバーが」
「おいっ無視してんじゃねぇ!!テメーらなめてんのか!あぁ?!」
もう。煩いな。もう少しで説得できんだから少し待ってくれないもんかな。
「お兄さん。すいませんが今、俺たちの今後を左右する危機的状況何ですよ。だから、せめてあと少しだけ待ってもらえませんか?」
俺は立ち上がり、強盗の方へ振り向くと丁寧に頭を下げた。
「え??そ、そうだな。すまねぇ。銃付き付けられて生きるか死ぬかの危機的状況だもんな」
「ありがとうございます」
お兄さんも今の現状を納得してくれたらしく待ってくれるようだ。
そんなに悪い人じゃないのかもしれないな。
そして俺は改めて奈美さんの方に振り向き話を続けた。
「奈美さん。俺たちがコイツらを捕まえて、新聞やニュースに取り上げられれば、自然とマスコミが俺たちの事を調べ上げ全員よさこいチームに所属していることを突き止めるでしょう。となれば、一般の人が捕まえたって報道じゃなくて、一颯のメンバーが強盗を捕まえたってことになるわけで、一気に全国的にチームの知名度がアップ、更に社会貢献としての一颯の好感度もアップ、更に更に、お店の店長あたりが、感謝の意を込めて今後の飲食代一年間無料とかの特典も付けてくれるかもしれませんよ!さぁ、どうでしょうか!?」
「殺りましょう」
即答だ。一切の間を空けずかつ、被ることの無い見事な即答が返ってきた。
「ファイナルアンサー?」
「ファイナルアンサー!!」
奈美さんが立ち上がり勝鬨を上げた。
カチャ。
「盛り上がってるとこわりぃんだけどよ、やっぱあんたら今の状況分かってねぇだろう。誰が誰を捕まえるんだって?頭のネジ飛んでんじゃねうのか。まっ、俺も良心のある人間だ。土下座して泣いて許しを請いたら殺さずに嬲るだけで勘弁してやってもいいぜ」
話を待ってくれた優しいお兄さんもとい下っ端お兄さんが俺に銃を突き付け、やられ役に有りがちな台詞を言い放った。
仕方ないなぁ。優しいお兄さんだからあんまり手荒にしたくないんだけど、テンプレ通り下っ端を倒さないとイベント進まないだろうな。
仕方ない。真面目モード発動だ。
「どうするよなぁ兄ちゃんよ~」
「…殺れよ?」
殺せと言い放ちズッと体を前に出すと銃口が額に当たった。
「!!」
睨み付ける俺を見て驚く下っ端兄さん。
まっ、安全装置も外さずに銃口向けられてもねぇ。まだモデルガンの方が恐いわ。あれ地味に痛いんだよって、うん?これは、あーなるほどね。
「ここ日本だからそりゃそうか。けどまぁ、とりあえず場の雰囲気は大事だよなここは空気を読まないと」
「何わけわかんねーこと言ってんだよテメー!」
「あのよ、訓練も受けてねぇ素人が重火器扱えるわけねーだろーよ。銃は脅しの道具じゃねー!人に向けた時点で相手を殺す道具になるんだよ!人殺す覚悟もねぇのに銃口向けてんじゃねぇ!!」
廻し蹴り一発でぶっ飛び気絶した下っ端お兄さん。
「erst」
そしてかっこよくドイツ語で1人目と呟く俺。決まったな。
「おーい晃。わりぃけど銃回収しといてくれ。ついでにそこの兄ちゃん縛り上げといて」
「りょーかい~っと」
晃に銃の回収と緊縛をお願いして二人目を目で捕らえたが、今度は確りと安全装置をガチャリとスライドさせた男がこっちに照準を向けている。
「調子に乗るなよ!」
「それはこっちの台詞だ」
叫ぶ男の後ろで村越さんが本気モードで仁王立ちしていた。
「歯食いしばれよ兄ちゃん」
振り返る強盗に
「オラ!オラ!!オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオーラ!!!」
奇妙な冒険を繰り広げる一族も拍手しそうな見事なパンチの嵐を繰り広げ、最後はアッパーで兄ちゃんを壁にぶっ飛ばした村越さん。
「ふっ。やれやれだぜ」
と決め台詞も忘れない。
「おい晃。わりぃけど銃回収しといてくれ。ついでにそこの兄ちゃん縛り上げといてくれ」
「りょーかい~っと」
またまた晃が銃を回収しに男に歩み寄り緊縛も忘れずに実行した。残るは二人。主犯各っぽい女の人と、下っ端の男だ。
「そこまでだ、お二人さん」
声の方を見る俺と村越さんは目を見開いた。
「動くとこいつを殺す!」
下っ端男に捕まって銃口をコメカミに当てられた椿がそこにいた。
此処まで読んで下さりありがとうございます。初登場の頃の奈美さんに比べキャラがかなり変わってきたと感じている人も多いと思います。やはり、佳奈の母親としては清楚真面目キャラよりもっと砕けた方がよいかなと思い、キャラ変更してみました。
そして、やはり、ネタ満載の強盗事件はまだまだ続く予定です。よさこい脱線ですいません。




