表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/51

真相と懺悔

「佳奈さんは止まらなかったんじゃない。止まれなかったんだ」

京介の話は椿にとって信じられない事実だった。今の今まで親の仇のように憎んでいた相手が実はそうではなかったなど、すぐに理解出来るわけがなかった。

「ちょっと待ってよ。仮に今の話が真実だとして、なんであたしだけに隠さないといけないの?あたし以外はみんな知っていたんでしょ」

椿は3人を見回し最後に京介を見て疑問を口にした。

それをジッと見ていた京介は椿を見つめ返して逆に椿に質問した。

「おまえは佳奈さんのことどう思ってた?」

「はぁ?憧れてたに決まってるじゃない。あんたもそうでしょ?あたしにとってあの頃の佳奈さんが全てだったわ。憧れも尊敬も敬愛もしていた。崇拝のような感情もあったかもしれない。佳奈さんの側にいるそれが何よりも大事だった」

「そうだよな。俺もおまえも佳奈さんに特別な感情を持っていた。だから、俺はおまえにだけは佳奈さんが殺されたことを言えなかったし言わないように周りに頼んだ」

「なんでよ!?あんたがあたしの同類なら、真実を話さないで隠されたらどんなに辛いかわかるはずよね!!」

「わかるよ!わかるに決まってんだろ!スゲー辛くて悲しくてワケわかんなくなるよ!!」

「だけどよ、もしおまえにあの時真実を伝えて、もし佳奈さんのバイクに細工した犯人がわかったらどーするよ?」

「「そいつを殺す(わ)」」

京介と椿。二人は同時に言葉を放った。

そして椿の顔がみるみる青ざめていき震えた声色で言葉を繋いだ。

「ま、まさか、あんた、そいつを…」

「いいえ椿ちゃん。京介くんは殺してないわ」

奈美さんが椿の言葉を遮った。

それに京介は一呼吸おいて

「あぁ。だが、あの時、奈美さんが止めてくれなかったら間違いなく俺はあいつを殺していた。そして、おまえも真実を知れば間違いなく同じことをしたはずだ」

「………」

「だから、おまえにだけは伝えられなかった。俺が一番おまえの事をわかっていたから」

京介の話を聞いた椿は沈黙した。

つまり、京介の最後の言葉を肯定したのだ。

そして奈美さんが二人の沈黙を確認して話を切り出した。

「それが、三年前の真実よ。京介くんは、もし椿ちゃんが真実を知ってしまえば、一人ででも犯人を探しにいって最悪、相手を殺してしまうか、逆に相手に殺されるかもしれない。そう思ったから、あえて真実を伝えなかったのよ。そして事件からずっと犯人を探していた京介くんたちは数日後、遂に犯人を見つけ出したわ。連絡をもらった私は晃くんとすぐに現場に行ったわ。そこには血塗れになった男と村越くんに押さえ付けられている京介くんがいたわ。それを見て私が警察を呼んだの。その間ずっと京介くんは叫んでいたわ。“殺してやる”ってね。晃君と村越くんがずっと押さえていてくれて、警察の人も必死に宥めてもその言葉を発し続け、犯人に襲いかかろうとしていたわ。“連れていくな!仇を取らせろ”ってね」

奈美さんから語られる内容に椿は一語一語聞き逃さずに真剣にきいていた。

「それじゃぁ、どーして、犯人が捕まったのに直ぐに真実を教えてくれなかったの?」

椿は疑問に思ったことを奈美さんに聞いた。

「それは、貴女が一番わかっているはずよ。考えてみてあの頃の貴女ならどうしたか」

「…………多分、佳奈さんの居ない世界に絶望して、あたし、佳奈さんの後を追っていたわ」

「そう。だから京介君に私が頼んだの。椿ちゃんに憎まれてってね。京介も精神的に椿ちゃんと一緒で危なかったのよ。私は二人を繋ぎ止める為に酷いことをしたわ。京介くんは貴女に憎まれる為に生きなければならない。貴女は憎むことが生き続ける糧となる。それしか方法が考え付かなかったの。わたしもまともじゃなかったのかもしれないわ。今に思えばもっとやりようはいくらでもあったはずなのに、選んだのは一番最低のやり方だったわ」

奈美さんは語りながら瞳を潤ませ、口元を手で隠し涙を流したながら京介と椿に謝罪した。

「本当にごめんなさい。あなたたちの人生を狂わせてしまったのはわたしの罪なの。いいわけはしないわ。許してくれなんて頼むつもりもない。わたしたち親子が招いた惨状が今の歪んだ現実の元凶なのだから。本当に本当にごめんなさい。あなたたちには私を責める権利が充分にあるわ。だから、わたしはどんなことでも受け入れる。あなたたちが望むなら二度と姿を見せないわ。あなたたちが望むなら、どんな償いもするわ。だからお願い。もう苦しまないでほしい。自分を責めないでほしい。責められるべきはわたしなのだから」

そして、奈美さんは京介たちの前で深々と頭を下げ、その場にへたり込んでしまった。

奈美さんの泣き声とどうすればいいか分からなくなった三人の沈黙がしばらく続いたが、唐突に、ガチャっとドアを開ける音が静まりかえった室内に反響した。

「おいガキ共。もうその辺にしとけ。京介も山城もこの辺が引き際だ。奈美さんもこんな状態じゃ今日は無理だ。みんな一旦落ち着いて脳ミソ冷やせ。今日は旅館も臨時休業してあるから三人とも泊まっていきな。こんな状態で帰すことはできねーわ。奈美さんいいですよね。おい晃坊!おまえはちょっとこっちきて手伝え。さぁ、奈美さん立ってください。もうこの変で十分でしょう。晃坊は奈美さんを自室まで送ってやれ。そのあと厨房にこい」

ドアを開け中に入ってきたのは、この旅館の料理長兼初代黒死蝶メンバーの村越さんだった。村越さんは晃に奈美さんを部屋から連れ出すように促し、それから、二人を見てハァ~と溜め息をついてから二人の手を掴み、半ば強引に部屋から連れ出した。

「ちょっ、村越さん!何するンッスカ!?」

「え?何ちょっと!や、やめてください」

暴れる二人をフル無視した村越さんは、そのまま部屋を出て何故か大浴場に歩を進めていった。

此処まで読んでくださりありがとうございます。今回は京介と椿の佳奈さんへの想い、奈美さんの懺悔と後悔を主に、書いてみました。次話からは。前向きな展開へとなっていきますので、シリアスシーンは今回で一旦終わりとなります。次話もどうぞよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ