運命の出合い
「おーい。生きてるか~?」
意識を失っていたのだろうか?投げ掛けられた言葉で俺の脳が覚醒し、うっすらと目を開けた。
「いって~。あん?誰だよあんた?なんだこれ??っつか、あの眼鏡の女の人は!?俺は一体何をしたんだ???」
京介は見覚えの無い女性を睨み付け周囲を見回し、襲われていた女性を探したが見えるのは周囲に倒れる男達だけだった。
「一変に質問するなめんどくさい。あたしは桐木って名で、あいつ等は私がやったの。んでもってあんたはあそこで白目向いてる男いや、今女っかな??まっいいや、アイツに後ろから殴られて気絶してたってわけ。ちなみに、襲われていたおしとやか文系美少女さんはあたしだ?見りゃわかんだろう?
」
そう言いながら目の前のおしとやか文系美少女とは全く見えない桐木と名乗った女性に手を引かれ立ち上がった俺はまっすぐ女性の方を見て率直な意見を述べた
「いや、全くの別人でしょ?ヘボッ!」
軽い腹パンを食らって膝まずいてしまった。
「あんたも経絡秘孔突かれたいのかな?かな??」
右の親指でうずくまる男の方をクイクイっと指差し、鉈が似合う少女のようなヤバイ顔と語尾の言い回しに背筋がゾクッとした俺は全力で
「いや!よく見たら同じ人でした!!お姉さん超美少女!」
と汗をダクダク流しながら肯定し立ち上がった。
「ったく、照れずに最初からそういやいいんだよ」
少し頬を赤く染め明後日の方を向く女性を見て
「チョロいな」
俺はついポロッと本音が出てしまった。
「あぁ!?やっぱ秘孔突かれてーみたいだなおいっ!」
女性の顔が一変し再度身の危険を感じた俺は慌てて弁解しようとしたが遅かった。
「あべしっ」
本日2度目の気絶である。そしてこれが、桐木 佳奈さんと俺の最初の出逢いでもあった。
「っいってー。ってあれここどこだ?」
何故か布団の上に寝かされていた俺は上半身を起こし辺りを見回した。旅館の和室のような場所に寝かされていたらしく、井草の良い臭いが肺を満たしてくれた。そして、旅館によくある木製の簡易な椅子に座って本を読んでる女性が目に写った。
「そこは普通“知らない天井だ”っていわないとダメですよ?」
赤いフレームの眼鏡に艶やかな黒髪をサイドテールで縛った大学生くらいの美人だ。
「あっ。す、すいません」
よく分からないが、謝ってしまい。その謝罪に慈愛の満ちた微笑みを向けた女性は
「どーしてここに居るかわかりますか?」
と訪ねてきた。
「確か、貴女が男たちに絡まれていたのを見つけて、助けに入ろうとしたまではよく覚えいるんですが」
記憶を辿りながら説明をしつつふと思い立ったことがあった。
「あっ!そういえば、俺に経絡秘孔突いた暴力女に意識を刈り取られたような。そーだ!くっそうあの女~」
美人なお姉さんの眉がピクッと動いたがまだ笑みは崩れていない。
「あまつさえ、貴方の事を自分だなんて言うんですよ!もっとマシな嘘つけばいいのに、貴方みたいな天使とアイツみたいな悪魔が一緒だなんて笑ってちゃいますよね?」
「!!?」
京介が終始微笑みながら話を聞いてくれていた美人さんの方を見るとそこには眼鏡をかけサイドテールに結んだ髪型の悪魔がボキボキっと拳を鳴らしていた。
「言いたいことはそれだけかな?かな?」
「あっ、いや、その」
京介は恐怖のあまり声が出せなくなり、そんな京介を見下ろしながら掴み掛かろうとした時に部屋のドアが開いた。
「そのくらいで勘弁してあげなさい」
柔らかな声色に和服を来た三十代前半の女将さんらしき人が声を掛けながら京介の前に立っていた女性を制した。
「お母さん」
「え!?お母さん!マジで若すぎだろあれは!!?」
お母さんと言われた女性はあらあらうふふと口元を手で隠しながらコロコロと笑った。
「もう大丈夫みたいね?佳奈の事助けてくれたみたいで、ありがとう。この子ちょっと頭がパーだからよく絡まれるのよね。もう二十歳に成ったのに落ち着かなくて」
「誰がパーだ誰が!」
「はいはい。さぁ、とりあえず部屋を片付けるから、話をするなら佳奈の部屋に連れていきなさい。ゆっくりしていってね。え~と」
「京介です。正木 京介」
「そう。京介くんね。ごめんかさい。お客様が来るから部屋を空けないと駄目なの」
「あっ、はい。こちらこそすいません。直ぐどきますから」
「ふふっ。ありがとう」
「チッ、とりあえず付いてきなよ。こっちだ」
京介は布団から起き上がり、後を付いて行こうとしたが、ふと机の上においてあった読みかけの本が目に入り手に取った。ブックカバーが巻いてあったので何の本かは分からないが、さっき起きた時に読んでいた本だったので、暴力女を呼び止め
「おい。忘れてるぞ!」
と声を掛けた。するとハッと驚いた顔をしてすごい剣幕で本を奪い取ろうと暴力女が掴みかかってきた。
「か、かえせ!」
そんな剣幕にびっくりした俺は後ろに倒れてしまい、手から本を離してしまった。そしてブックカバーが剥がれた本はそのタイトルを露にしたのだった。
「俺の妹がこんなに●●なわけがない」
この時にこの本のタイトルを見なければ、俺がオタク道に進むことも、佳奈さんと繋がりを持つこともなかっただろう。
此処まで読んでくださりありがとうございます。京介と佳奈さんの出会いとサブカルチャーとの出会いを今回は書かせてもらいました。過去のシーン今回で終えて、次からはまた、現在に戻ります。やっぱりシリアスなシーンを書くよりこういうコメディ的なほうが書きやすいですね。次話もよろしくお願いします。




