9.小手調べ②
前衛職がひたすら教官とのタイマンをこなしていた時、後衛組は何もしていなかった。
否、何もできなかった。
「はじめまして♡ 皆! さっそくなんだけど、魔力や遠距離攻撃、治癒を扱う職業のあなた達は、ここでまず『魔力の知覚』をしてもらうわ〜。これができないと、一番簡単なランク1の魔法すら使えないわ! なんとか頑張ってね。私は眠いから寝るけど、ヒントが欲しかったら起こしてちょうだい。期待してるわ」
といきなりエルサという教官に言い渡され、訓練場に放置されたためだ。
ゼロは一旦頑張ってみようと筋肉を振り絞ったり皮膚を傷つけたりしてみたが、一ミリも理解することができない。
(これは無理だな。まだ何もわからない5歳の子供に何も教えず外に放り出すとは……なんで呼ばれたんだあの人)
そんな事を考えていると、自分の隣から冷気が飛び散った。
「「「うぉっ、何だあれ」」」
確か授業中にどもりながらもエルフについて発言していた、水色髪ショートの少女(たしかリルと言ったか?)の体が青く発光しだし、周りに冷気をばらまき始めたのだ。
「これが、まりょく……?」
リルも不思議そうに自分の体を見つめる。するといきなり、
「お、俺にやり方を教えてくれ!」
と誰かが叫び、周りも負けてなるものかという勢いで押しかけた。
「俺にも!」「私にも!」
対するリルの反応は、
「え、え? あぅ、あ、あ、え?」
という感じで完全にパニック状態だ。
その様子を見て、ゼロは奥の手を発動する。
(スキル発動——【エイム】)
ゼロはなんと、スキルを鑑定の儀の直後から使用することができた、いわゆる「天才」だった。
このスキルを発動することで動体視力と観察眼を異常なまでに引き上げ、リルの身体を観察したゼロは、自らの体を黒い光で発光させる「魔力知覚」に見事成功したのだった。
数時間後、エルサが起きて目にしたのは、ゼロに教えられて全員が発光しながら、魔力と体力切れで地面に寝そべっている不思議な光景だった。
◇
一方その頃、前衛職の実力試しはまだ続いていた。
アリアのあと、教官とまともに打ち合ったどころか一撃を入れた者などほとんどおらず、初めての対人戦で足がすくみ叱咤されるまでがオチだった。
唯一アリア以上に教官と打ち合ったアーサーと言う名の赤髪の少年でさえ、スキルを発動することはできず引き下がっていった。
そしてついに——
「シオン・エイドリアン、前へ出ろ」
(お、やっと俺か)
「ういっす」
木刀を持ってガイル教官の前に立つと、これほど怖がらない生徒は初めてだったのか、教官は目を細めて話しかけてくる。
「お前のステータスは正直言ってバカげている。その年齢でとんでもない素早さと攻撃力、魔力は特に異常だ。それ以上に異常なのが、少なすぎる体力……まるで誰かにいじられたかのようだな」
(そうなんですよ! あのバカルーラ神にいじられてるんです!)
「お前の体力を減らさない程度に遊んでやろう。本気でかかってこい」
「……はい」
俺は返事した瞬間、木刀に紫色のオーラを纏わせて全力で突っ込む。
スキルを隠す気などない。どうせバレるしな。
「ふんっ!」
「ぬぅっ!?」
教官の目が驚きに細められる。
「その年齢でスキルを意図的に発動だと!? とんでもない才覚だな。しかもそのスキルは、無意識にとてつもなく緻密な魔力操作を行っている。良かろう、お前の力に免じてアリア・スペンサーに使用した剣術に加え、ワシのスキルも使ってやろう」
(大人気ないな!? この人、ちょっ力強すぎ、我が父を超えてね?)
当たり前である。相手は元・王立騎士団第一部隊隊長、通称『戦霊』ガイル=ファン・アレクサンダーなのだ。一介の武人と比べるのも失礼な領域にいる。
その教官が技を放つ。
「王国流剣術一の型『射斬』——スキル発動【壊剣】!」
通常ならそのスキルの効果通り、魔力纏いがあろうとレベルの差でシオンの木刀は木っ端微塵になるところだった。
しかし——
「スキル発動【封殺】!」
「むうっ!?」
(スキルが発動しない……!?)
なんとシオンはもう一つのスキルの効果を使用し、『射斬』を受け止めそのまま教官に一撃を入れたのであった。
(よっしゃ! うまくいったぜ!)
「……終了だ」
ガイル教官は重々しく口を開き、周りは騒然となる。
「え? あいつなんか勝ってた?」「うそだ!」「八百長だろ教官も」
周りがざわざわとする中、俺は教官に褒められる。
「見事だ、シオン・エイドリアン。その年齢でスキルの練度が達人の域に達している。これから1ヶ月授業があるが、実践訓練の時は私と練習するようにしろ」
こうして、俺の最初の小手調べは大成功に終わるのだった。
次回!超重要新キャラ登場!
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