8 小手調べ
「今から剣術や近接の力試しの指導を行う。が、魔術師などは近接などをすることは基本的にできない。そこでだ、一人特別教師をご当主様が呼んでくださった。出て来い」
すると、ガイル教官の足元の草からいきなり人がニョキニョキと生えてくる。
そして完璧に魔人の妖艶な女性に変わると、
「は〜い♡ 王立魔術団序列7位のエルサ=フォウ・アグレシアです♡ よろしくね♡」
俺はその神経を逆撫でする声を聞いて、背筋に悪寒が走る。
(ちょ、鳥肌ヤバい……何だあの声!? 生物としての恐怖が自然に湧き上がってくるんだけど!)
周りの生徒達はざわめき出す。
「「「え? 序列7位って国家戦略級じゃなかったっけ。アルシュ家ってやっぱりガイル教官もいるし、とんでもないんじゃ……」」」
ゼロだけが事前に知らされていたのか、相変わらず目は笑っていない笑顔で話を聞いている。
「早速だけど、後衛職の子はこっち来てね〜。あんまり厳しくしすぎちゃダメよ〜? ガ・イ・ル・ちゃ〜ん♡」
「うるさい。さっさと行くが良い」
エルサ教官がゼロやリル達と共に、姿が完全に隠れる裏の訓練場へ引っ込むと、ガイル教官は最前列の俺にしか聞こえないほどの小声で愚痴をこぼした。
「は〜……あいつは苦手じゃ」
(お? やっぱりガイル教官も苦手なんだな。わかりますわかります、超わかります!)
ガイル教官は元の威厳のある声に戻ると、朗々と告げた。
「では早速、腕試しを始める。ルールはシンプル。3分間全力で俺に打ち込め。鑑定の儀から1週間で何かできるとは思わんが、スキルの発動もありとする。怪我はない程度に遊んでやろう。せいぜい頑張れ」
(なんか悪役っぽいセリフが似合うな。やっぱいかついからか)
「では最初、アリア・スペンサー前へ出ろ。武器はそこにある木剣や木斧から好きに選ぶが良い」
「わ、ワカリマシタ」
アリアは初めての対人戦でガチガチに固まっている。
「アリアー、がんばれー!」
俺が応援してやると少し緊張がほぐれたのか、教官に向けて木剣と盾を構え、真っ直ぐ突っ込んでいく。
「おりゃあーー!」
アリアが木剣で打ち掛かると、ガイル教官は当然のように払い、カウンターを3撃入れる。
しかしアリアも打たれるだけではなく、なんと盾で横に殴り飛ばそうとする。
教官は普通に木刀で軌道を逸らしながらかわし、言葉を放つ。
「ほう、常識にとらわれぬ良い戦法だな。しかし、甘いな。食らうが良い。……王国式剣術一の型『射斬』」
刹那、教官の手がブレて瞬時にアリアの首元に迫る。
(速っ! ちょ待って?? ぜんぜん見えなかったんだが!)
勝負ありかと思われたが、ガイル教官はふっと息を吐いて動きを止めた。
「ほう、驚いたなこれは。スキルを使用したか」
なんとアリアの首元に薄い盾のような膜ができ、教官の木刀の威力を減衰させていたのだ。
「アリア・スペンサー、面白いな。そのステータスならば優秀なタンクとしての道が有望だ。今のところ打ち合ったときの足腰の粘りが甘い。しかし、その年齢でスキルの発動は大したものだ。頑張るが良い」
アリアは自分の首元の膜を見ながらキョトンとしていたが、ニコリと笑って元気よく返事をすると、こっちに戻ってきた。




