2 異世界
時は十分前に遡る。
「ん、ん? ここどこ……?」
目が覚めた俺は、何か温かくて柔らかいものの上にいた。
声を出そうとしても上手く出ない。なんとか喋ろうと試みるが――
「あ、ああ、あー!」
ん? ちょっと待て、これ……俺、赤ちゃんになってねぇか……!?
「なーに? あら、お腹すいたの?」
あ、これ完全に異世界転生コースだ。
ってことは、俺の頭に当たっているこの柔らかい感触は……。
目の前にいる女性が俺の母親なのだろう。とてつもない美人だ。
「おお、元気な子だな〜!」
隣にいるのは超ムキムキイケメンのナイスガイだ。
え、俺この二人から生まれたの???
見た感じ性格も優しそうだし、親ガチャ大当たりの予感なんだが??
「じゃあ、ちょっと肉でも取ってくるか!」
「何言ってるの! 赤ちゃんが肉食べられるわけないでしょ! ちゃんと離乳食作るわよ!」
母に耳を引っ張られながら連行される父。
うっひょー、めちゃくちゃ雰囲気のいい家庭だ。だけど二人ともだいぶ若く見える。せいぜい25歳前後だろうか。
窓の外をチラッと見た感じ、ここはどこかの小さな村らしい。
……と呑気に考えていた俺の前に、信じられないものが現れた。
両親が部屋を出ていくと、謎のふわふわした光が目の前に溢れ出す。
そして光の中から現れたのは――なんと地べたに思いっきり土下座した、自称・神様だった。
驚く俺を何とか宥め、目の前のこいつが口にしたのはまたまたとてつもない話だった。
「やぁ、僕はルーラ! 神様だよ! 単刀直入に言わせてもらうと、君が死んだのは僕のせいなんだ!! 本当にごめん!!!」
(うん、どういうこと……?)
「僕の手違いで魔物が君たちの世界に飛ばされちゃってさ……。だから君が死んだのは完全に僕のミスなんだ! 本当にごめん!!」
(あー、なるほど。あの理科室で見えた謎の影は走馬灯じゃなかったのね)
俺:「いいよ」
ルーラ:「え?」
俺:「だから、いいって言ってんの! 許してあげる。正直、前の世界は醜い部分が多すぎて嫌いだったし。何なら感謝してもいいくらいだわ」
ルーラ:「へー……ガチか。自分の死をこんなに気にしない生物がいるんだ……」
ルーラの目が興味深そうに輝いたため、俺は釘を刺すように言った。
俺:「だから神様だからってあんま気に病むなよ。俺は全然気にしてないから」
ルーラ:「うぅっ……優しいぃぃ! ありがとおおおお!!!」
見た目が幼い神様が、顔中を涙と鼻水でぐしょぐしょにしながら抱きついてきた。赤ん坊の非力な身体でなんとか振り払う。
「ふぅ、スッキリした! よーし、こんなに優しい君には生きていきやすいようにチートスキルと……へへへ、これもいじっちゃえ!あ、そうだ自分が転生したことは隠しておいてねー!お兄ちゃんにバレたらヤバいから」
ルーラは変な顔で光る透明なパネルを操作すると、光と共に消えていった。
なるほど、神にも怒られることあるんだな。てかルーラポンコツっぽいな。隠しておいてやるか。
まあ、多分お礼に俺を強化してくれたって感じだろう。
(まあ、あいつのことは忘れてこの世界にさっさと慣れるとするか! てか情報量が少なすぎるから、何か聞いておけばよかったな……)
――後日、村の神殿で俺はルーラを激しく恨むことになる。




