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5時46分ー僕が僕として歌う理由を探して  作者: はお
第1章 異国での出会い

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3/10

ep.1-2 【異国での出会い】叶うと願えば叶う

風見鶏の館を巡り萌黄の館で海都と出会った湊は、これから海都の案内で色々な場所をまわっていきます。

少しずつ湊も海都に心開き始めているので、そのあたりもお楽しみください!


「あ、ここ座って!」


湊より数歩先を歩いていた海都が、数メートル小走りして振り返り手招きしてくる。

萌黄の館の敷地を出てすぐにある、ベンチだ。向かって左側にはサックスを吹いた男性の銅像がある。

これは試されているのだろうか、思わず湊は海都の顔を見た。やはりその顔は、それを求めている表情をしていた。

ご要望通り、隣に腰掛けエアーでサックスを構えると、海都は「いいねー!」と嬉しそうにスマホのカメラを連写する。

敢えてだったのかもしれない。このまま重い空気を携えて回るのは違うと思ったのだろう。海都の明るさは、そんな気遣いの上に成り立っている気がした。

風見鶏の館そばにある広場に戻ると、同じような銅像が他にもいくつもあった。

「今度は海都の番ね」

少し意地悪のつもりで提案したのだが、海都は思いの外乗り気だった。今にも奏でた音色が聞こえてきそうなほどの楽器さばきだった。


「やっと笑ってくれたね」


そんな海都の姿を見て、無意識に口を開けて笑っていたらしい。海都に出会ってからこれまでも充分楽しい時間を過ごせていたが、いかんせん表情が乏しいため海都にはその感情が伝わっていなかったようだ。

「さっきからずっと、楽しいよ。海都のおかげ」

表情で伝わらないのなら、言葉で伝えたらいい。そうやって今までも歌詞に想いを込めてきたから、表情を作るよりずっと言葉に感情を託す方が得意だったりする。

鳩が豆鉄砲を食ったような顔というのはこれのことか、と改めて理解できたくらい豊かな表情で海都が固まっているから、自然とまた声を出して笑った。この数十秒で2〜3ヶ月分の笑いをもらった気がする。


「そういえば、北野天満神社へご挨拶は行った?」


海都に尋ねられ、初めてその神社の存在を知った。

風見鶏の館からさらに坂を登った先に、その神社はあるという。

「京都に北野天満宮があるでしょ?そこから勧請して祀られてる神社なんだ」

つまりは京都にゆかりがある神社ということ。同じく京都にルーツがある湊は惹かれる想いで長い階段を登った。

登り切った先でまず目に入ったのは、大きな鯉だった。おそらくそれ自体は手水なのだろうが、大きな石の鯉が1匹、まっすぐと天に昇る方角へ泳いでいるように立っていた。「かない鯉」というらしい。恋愛に無頓着な湊にとっては無縁だが、恋愛成就を願って人々はこの鯉に水をかけ祈願するそうだ。

「まずは本殿にご挨拶かな」

神様にとって、神社は住まいのようなものだろう。主へのご挨拶なしにそこらを彷徨くわけにはいかないというのが、有数の寺社仏閣がひしめき合う京都の地で生まれ育った湊なりの考えだった。作法として合っているかは、湊にとって関係ない。

まっすぐと本殿まで歩んでいくと賽銭を投げ入れ二礼二拍手一礼、初めて赴いた神社では必ず心の中でまず「初めまして」と挨拶するのも忘れない。願い事も、初めましてでおねだりなど図々しいから極力しないのが湊にとってのお約束である。

早々に湊は一礼まで終えたが、隣りの彼は熱心に何かをお願いしているのか未だ瞼を閉じて手を合わせたままだった。ようやく瞳を覗かせて丁寧に一礼まで済ませると、彼は満足そうに微笑み本殿を後にする。

「湊の旅がこの先も楽しいものになりますように、そうお願いした」

自ら願い事を発表してくれるスタイルのようで、湊から聞かずとも彼は神へ捧げた願いを教えてくれた。

「願い事って、言葉にしたら叶わないらしいよ」

出会って数十分の人間のことをあれほど一生懸命に願ってくれた彼には感謝しかないが、今後のことを思って湊はそのジンクスを教えておいた。

また豆鉄砲をくらわせてしまったかもしれないと、あの顔を見ることになることも想定していたが、海都の反応は違った。


「叶うと思ったら、何でも叶うんだよ。俺はそうやって叶えてきたから、全部」


湊の助言は、海都にとって大きなお世話だったみたいだ。海都がそう願ってくれているのなら、きっと湊のこれからの旅は明るいはずだ。自然とそう思えてくるから、海都の言うことはあながち間違いでもないかもしれない。

「ここからの景色を、湊に見せたかったんだ」

登ってくる時は気づかなかったが、本殿を背に右手へ目線を向けるとその景色は見えてきた。


風見鶏の館、この小高い場所から見るとまた違った印象を受けた。


幸い今日は青空が広がっていたから、空の青色とレンガの土色がポストカードのような絵になる風景を生んでいた。とんがり帽子のような三角屋根とトレードマークでもある風見鶏が目線の高さにあるのもまた新鮮だった。心の中で何度もシャッターを切っている自分がいる。

この景色が生まれる前から、北野天満宮神社はこの地で人々を見守っていたという。偶然なのか、必然なのか、この神社の麓に異国情緒溢れるこの街並みが出来ていった。


ますます、湊はこの街に心惹かれていった。


今回巡ったのは、北野天満神社でした。

神社としてもですが、とにかくあの小高い場所から見た風見鶏の館と青空が絶景で…私の拙い文章で伝わっているか心配ですが、少しでもお裾分け出来ていたら幸いです。


次回もまだまだ異人館街を巡ります。お楽しみに!

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