第二十五話 裏切りの大空(エ○ア88っスね)
クリスマスイブの公開です。
「いやー。その様子だと、お茶も飲んでないんですね? 意外と、頭がいいんですね――」
「お、おい……嬢ちゃん……何をやってんだ……話せば分かる……話せば分かるんだぜ」
エリックさんも、昔なら振り向きざまに、銃をたたき落とす事ができたと思いマスけど……。
窓から外をのぞき込んでいる時に、背後から狙われたんじゃあ、むずかしいんでショウ。
「おかしいですよね。けっこう強めの睡眠剤を入れておいたのに、ぜんぜん眠らないんですから」
「お茶を飲むような状況でもないのにポットを持っているなんて不自然でしたから――」
「この睡眠薬って、ほぼ限りなく無味無臭で、濃く入れたお茶に混ぜていたのにぃっ!」
「それと、あの段階でさらなる一手が繰り出されるんじゃないかと、思ったですから――」
アコさんですら驚いていた、あのウイルス……。手引きした人がいると思いましたから。
「本当に驚きましたよ……わたしが偽りの情報を上げたんじゃないかって疑われまして、おかげでビトレイヤーには気づけましたよ。自分が言われる言葉には敏感なんでね」
大原二曹さんは、うずく良心を抑えつけようとしているのか、偽悪的な口調でした――。
「という事は……香港軍の手先として、働かされているんですね。英国帰りの提督サンに――」
「あなたって、頭がいいのか悪いのか……最後まで判断しきれず、おとりかと迷いましたよ」
「奇襲をしても、不思議なぐらいに回避しちゃうんですから……そりゃ、報告しますよ。けど、おかげで私の願いはかないそうなんですよ。だからあなたには感謝しています」
「そんな事をして……妹さんが本当に喜ぶとでも思っているんですか? 大原二曹――」
「なっ、なにをわけのわからぬ事を……。我が身かわいさに、血迷いでもしましたか?」
「そうでもなければ、ジョーホンビルとトーカンビルの爆破の手引きなんてしないです」
「い、いや……別にわたしが直接、爆薬をしかけたりはしなかったですよ? さすがに」
ですけど、言葉とは裏腹に、目尻からはいまにも涙が吹き出そうに見えたんです――。
「いまの日本で、イチオクエンやニオクエン……もらったとしても、安心できないです。金銭的な理由で裏切るというのは、チョット考えにくいですから、事情があるとしか」
「だって……仕方ないじゃない! 九州で死んだと思っていた妹が生きてたなんてっ!」
どうやら本当に妹さんがいたんですね。動揺してたので、心を読む魔法をかけるのはムリでしたから、カンでしたけど。
「戦況は分からないですけど、ハープーンを撃ちつくした香港軍と魚雷の撃ち合い――。こっちは、応援が来る可能性あるですけど、香港はコンキョチがもうないですから!」
「もう……わたしには、これ以上話す事はなにもないから……終わりにさせてください」
大原二曹はついに覚悟を決めてしまったのか、銃を持つ手を緊張させていました。
「作戦が失敗したいまとなって……あなたの妹さんが……助かるとでも思うんですか?」
これを口にするのは、少し胸が痛いのですが……このままでは、三人とも……なんです。
「ぐっ。だからと言って……今さらどうしろって言うのよ! 何人死んだと思っているのよ――」
銃口はわずかに揺れていますが、逆に危険性が高まってしまったのかもしれないです。
「撃つんですか? 撃って証拠を残すんですか? どこにも逃げるところなんかないですよ? いまなら……空母サンダーホークの、作戦司令室の中だけで済ませる話ですから!」
「たしかに。事故で死んだ事にした方がいいですよね。そんなに心配してくれるんなら、ここから飛び降りてくださいよ! さあっ! あんたはドアを開放しなさいよっ――」
「開けはするが落ち着け……。若いドミソ|(原文ママ)で、思い詰めるもんじゃねえよ……嬢ちゃん」
エリックさんは、ひざを銃口で狙われてしまい、しぶしぶとドアを開放しました。
高度は二百メートルぐらいでしょうか。けど、激しく風が舞い込んできてるです。
「わ、わかりました……。わかりましたから、あまり興奮をしないでくださいです――」
わたしはシートベルトを解除して、席から立ち上がろうとしました。その時に、胸ポケットに入れていた携帯電話が落ちてしまいました――。
「ちょっと! 何をしようって言うの? 手を上げなさい」
「アッ……ご、ごめんなさいです……手を上げマスから」
「まさか、空母と通話でもしていたとでも……なんなのよコレは」
大原二曹は拳銃で威嚇してから、携帯を拾い上げました。
「お願いです。返してください……。帰る場所のないわたしには、トッテモ大事な物なんです」
「なんで、なんでよっ……こんな五百円もしない、おみやげが……どうして大事なのよぉっ!」
大原二曹は、わたしに携帯電話を放り投げてくれました。
「これはウチのスタッフが買ってきてくれたお土産で……司令とアコさんとおそろいなんデス」
「なんでっ、わたしが買ったおみやげを……後生大事に……つけてたりするのよぉっ!」
「わたしはこんな人形……子どもっぽいから、恥ずかしいけど、杏那が大好きでっ――おそろいでつけていた人形が……ボロボロになったから、休みにっ……ふぅぅっ――」
大原二曹は開いた両目からボロボロと涙をこぼし、ひざをついて崩れ落ちました。
「なぁ嬢ちゃん……長い人生で、やり直せない事なんてなぁ……。そんなにねえんだよ!」
「ソウです……。ワタシも……もう、帰るところはどこにもない。そう悲しんだけれど……大好きな人たちと……居場所を作る事は、できるんですからっ……だから大原さんも」
わたしは大原さんに拳銃を捨てさせるべく、両手を広げて、近づいて行きました。
すぐ後ろのドアは開いていて、怖いですけど……大原二曹さんを助けないとです――。
「いいの? 本当に……こんなわたしを……許してくれるって言うの? ローネちゃん」
「ハイ……。大原二曹さんは……やさしい人だって知ってマスから……妹さんもっ――」
「うぉわっ! なっ、なんでぇっ!」
つぎの瞬間、シャイニングホークは大きく傾き、ドアの前に立っていたわたしは――。
「ロ、ローネちゃんっ!」
アハっ。わたしに手を伸ばしてくれるなんて……やっぱり、いいヒトじゃないですか。
わたしは、初島のもっとも高度の高いところから、大空へ投げ出されてしまいました。
さすがに、空を飛ぶ魔法とか……ナイんです。
御笠・早坂の、ワンポイント講座
御笠:「悪魔――! これ以上私に、鬼引きで苦しめと言うのか!」
早坂:「このエ○ア88から生きて還るには(志垣太郎ボイスで)」
御笠:「空を飛べないなら、ワープをすればいいじゃない(電球)」
早坂:「いやいや、それを認めたら何でもアリになっちゃうんスよ」
街をカップルでうろつくリア充は爆発しろ!
もとい、実はもう少しだけ続くんぢゃ(笑)
12月31日に最終話を公開します。
エ○ア88は原作とOVA(八十年代)しか認めないよ派です。




