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空と海の掌握者(コンダクター)  作者: 小田崎コウ
第一章
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22/27

第二十一話 御笠提督もとい、司令の決断っスね


「それでは護衛の各艦は、戦術リンク確立限界にまで進出し、防空網を構築せよ!」

「御笠司令! 護衛艦が四隻と、イージス艦一隻が、新たに参加を申し出て来ました!」

「承認する! 配置は英輔の判断で行っていいわ。余裕ができたら、進出させて!」

「了解しました! 護衛の各艦はすべて、指示したポイントへの、移動を開始しました!」

 天城大尉は、作戦司令室の電子パネルを、指先で操作しながら、指示してました。

「相模湾に隣接する、すべての防空陣地の掌握が完了! 御殿場の部隊も連絡中」

 地上の部隊との連絡係になった純一さんは、真剣な表情で報告を上げていました。

「純一! 厚木との通信も可能よね! 駿河湾の各基地への情報伝達を急がせて」

「航空燃料がないので、連絡機は出せないそうです。御殿場の通信網の結節点の修復を急がせています」

「タンクに入っていた分だけでも。あぁ、パイロットを集めたから無理なのね」

「司令! 国防省がようやく活動を開始し、佐官級幹部も命令書を配達しています」

「遅いわね……。更なるテロも考えられるから、警視庁との連絡も続けてね、瑞穂!」

 みな、てきぱきと行動していて、わたしは少しうしろめたい気分になりマス……。



「アコ! その早期警戒管制機って使えそうなの? 乗員は確保できるのかしら」

「そうっスね。少なくとも電波中継機と『スピーカー』としては使えるんスけど」

 格納庫でヘッドセットをつけて確認しているアコさんを、呼び出していました。

「という事はなに? 早期警戒管制機としての能力は期待できないって言うの?」

「ソフトウエアがまだないんで無理なんスよ……あと、航空燃料をバカ食いっす!」

「いくら実験機とはいえ、二十五トンもある機体を浮かせるんスから……。んー」

「アノ……まだ見てないんですけど、その飛行機には何人乗り込めるんですか?」

「ローネ? んんーと、パイロットと、管制をする自分の二人と、もう一人――」

「それ、ワタシも乗り込みます! テンゲンも使えますし、重力をアレします!」

「えぇっ? じ、重力をアレって。軽減する事ができるんっすか? ローネ!」

「エト……垂直方向だけ、十分の一にすれば……じゅうぶんじゃないんですか?」

「そ、そりゃそうっすけどぉ……。そんなにサラっと言われても、頭がついていかないっす」

「危険な事は言うまでもないし……。それは最後の手段という事にしてね、ローネ」

 ようやく、わたしも活躍できる場を確保できそうで、内心ほっとしました――。

「新たに参加したイージス艦は、乗員が不足しているそうなので、索敵のため進出させます」

「そうね……向こうも対艦攻撃なんか行わないでしょうし、情報を集めさせて!」

「いま、午前二時半……最低限の布陣は完了したわね。敵さんは、闇を利して来るかしらね」

「そうですね……我々に時間を与えれば成功の確率が減少しますし、可能性はあります」

 天城大尉は御笠司令の副官的なポジションを得て、問いに答えていました――。

「宮崎あたりから飛ぶなら、800キロ……巡航速度でも一時間弱で到達します」

 天城大尉は電子パネルを操作し、大きい戦術スクリーンに地図を表示したです。

「そうね。東の空が明るみ、突入地点の視界がクリアーになる限界点を探らせて……」

「夜明けは五時二十一分。南中高度は六十一度ですから……高高度からなら四時半で可能になるでしょう」

「手回しいいのね……。そうよね。低空飛行を余儀なくさせれば、一時間は稼げるのね」

「高高度か低高度……そして、日本海ルートか太平洋ルートか……絞り込めれば!」

 純一さんは、ポンと手を打って、御笠少佐に提案しましたけど、それは無理ですよネ……。

「それがわかれば世話がないし、相手の選択枝をどうやって奪うってのようっ!」

 御笠少佐は、バインダーを丸めて、純一さんの頭を軽くぽかりとやってました。

「いずれにしても、二時間は先になる可能性が高いんですよね……でしたら――」

 瑞穂さんが、おずおずと、御笠司令に問いかけたですけど、どうかしたですか?

「なに? 何でも気がついた事は言ってちょうだい! なにせ日本の危機なんで」

「では……Fー2はやや大型とはいえ、Fー16とシルエットは似ていますよね」

「あーそういえばそうよね……。じゃあ、こっちの機体にマーキングでもする?」

「はい……。黄色い航空機用塗料でしたら、すぐに使えますけど、どうしましょうか」

「ハイハイ……。黄色いカミナリの絵でも描くんでしょ? それでやっちゃって!」

 御笠司令も、瑞穂さんの狙いを即座に見抜いて承諾していました……カミナリ?

「あぁっ、カミナリですよカミナリ! 日本海を中心に、カミナリを起こすです」

 わたしはその発想に、頭のてっぺんから、体の中心に、文字通り電撃が走ったようでした。

「えぇっ? そんな事が可能なの? ローネ……それが可能なら、太平洋コースを低空でしか飛べないわよね!」

 御笠少佐は、目を丸くしながらも、わたしの意図を即座に把握してくれたです。

「エト……。初瀬さんは『高高度における、電磁パルスの発生によるEMP』だと言ってました」

「もしかして……試してみた事あるの? 初瀬もとんでもない事を考えるわよね」

「ハイ! ほかに飛行機は飛んでないんですし、大丈夫ですヨネ? 詢子さん!」

「え……ええ。それは大丈夫だけど……なんだか私、めまいがしてきたわよう!」

「エト、前にアクティブスキルとして使った時は、三時間はカミナリが収まらなかったです」

「あぁ……今日は曇天ですし、もしそれが可能なら、電波障害も相当なものでしょう!」

「そっか……。上空の帯電した火山灰に衝撃を与えるだけだから、楽って事なのね」

「そうですそうです……。ワタシ、役に立てますよね?」

「もちろんよ! じゃあ、時間的には今すぐ開始でもいいわね」

 わたしは歓喜した詢子さんにハグされました……エヘッ。



「うわっ……。こりゃ日本海ルートも高高度も、とても飛べそうにないですよ!」

「エヘッ……。イアルローネ曰く(いわく)、作戦はセイコウです……フフフ!」

 天城大尉が最新の天候データを参照すると、日本海に雷マークが大量に点灯しました。

「どこが、攻撃魔法は使った事ないのよう……。というか、戦略の根本的見直しを……」

「ええと、司令。敵機の予想侵攻ルートを、二つ用意したんですが……いいですか?」

「和歌山のレーダーをギリでかすめるようにして通るルートと迂回(うかい)かぁ……」

「さすがに日本列島上空を飛ぶのだけは、ありえないと思いますので……どちらかだと」

「って英輔……これ、あんたは答えがでてるんでしょ? 私の顔なんか立てなくていいって。和歌山レーダーの、予測通過時間に反応なければ、シフトするつもりでしょうが」

 そう言って御笠司令は、丸めたバインダーで天城大尉の頭をぽかりとやりましたけど。

 天城大尉……なんだか、喜んでいるように見えるですね。



「電波中継機能と『スピーカー』は、自分がいなくても動かせるように、なったすよ!」

 格納庫で作業を続けていたアコさんが、油にまみれた手で、作戦司令室に戻りました。

「ご苦労……。じゃあ、『スピーカー』の仕様書を、思い出せるうちに書いといてね?」

「うっへぇ……。マジに人使いが荒いっすよ? まぁ、やっておきますけど……あ、ローネ!」

「ハイ! どうかしましたか? アコさん」

「ちょっと癒やされたいから、ハグさせてよー……」

「じゃあ、手をあらって来てからに、してくださいネ?」

「じゃあじゃあ、手がきれいなわたしが先という事で」

「ちょっ、瑞穂ずっこいじゃんよー! 私が先ぃー」

「いやいや、司令の私が先に決まっているでしょう? 常識的に考えて!」

 そんな事で無邪気に笑っているうちにも、時刻は迫りつつありました。



「和歌山県南端のレーダーが、大量の、不明瞭な機体をとらえています。発進準備を下します!」

 時刻が五時を少し回ったところで、ついに敵を発見し天城大尉が受話器を取りました。

「あちゃー、大量って……。私が読み違えたのかしら……。まさか、全部に戦術核が?」

「司令、九州の米軍基地にあった総数は三個ですから、さすがにそれはないですね……」

「って、なんで警察のあんたが知ってるのよ……まさかあんたって、公安の回し者じゃないすよね」

「あぁ。乗ってる人にとっても死刑宣告なんだし、本人にも告げていないんじゃないですか?」

 純一さんはとぼけた顔をして、トテモ恐ろしい事をわたしたちに告げていました……。

「んー……まぁ、想定内という事かしらね……護衛艦やイージス艦さえ活用すれば――」

 あの、詢子さん? さっきから、肩がぷるぷる震えていて、顔色も悪いですよ?

「こうなると、ある程度引きつけるしか手はないですね。絶対防衛戦はどこにします? 僕の案としては、下田の南と伊豆大島の区域が、よろしいかと思いますが……」

「これからは、確認をする時間がないから、航空隊の指揮はあんたにゆだねるわ。英輔」

 御笠司令と天城大尉は、目と目で何かを語り合っているようでした。良かったですね。

「司令! 御蔵島に応急設置されていたレーダーサイトが、敵の艦隊を発見したと、UAVを飛ばして大島まで報告して来ました! 例の空母を含む数十隻だそうです!」

「そりゃあ、人海戦術と飽和攻撃はお手の物なお国柄ですもんねぇ……。って想定できるか!」

 あまりにも予想外な展開に、御笠司令は手にしていたバインダーを、床にたたきつけました。

 こうして、後に第三次攻防戦と呼ばれた戦いは、ようやく第一の幕を開いたのでした。



 御笠・早坂の、第二章以降が不要になる作戦講座!

御笠:「なんか上空の火山灰を中華連邦上空だけに誘導したら……」

早坂:「そんな事をしたら食糧生産もガタ落ちで泣きが入るっスよ」

御笠:「上空の火山灰を全部まとめて、メテオ的に落とすとか――」

早坂:「いっそサンダーホークを飛行空母にすればいいんっスよ!」

御笠:「そんな事をしたらローネが○の人になって飛んでっちゃう」


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