第十九話 超電磁発電マッスィーンっスね
「へ? いま、魔法とか仰いませんでした? この方……」
「瑞穂はだまってるっす。そんな事やった事あるんすか? ローネ」
「ハイ。扇風機が壊れてしまったので、魔法で回していた事があるデス」
「うーんと……出力と持続時間が問題になるけど、空母って超重いのよ? 大丈夫そう?」
「えぇと……メタンハイドレードの発電所がありますよネ?」
「え? ええ……この近くにもあって、破壊されたけれど、それがどう関係するのかしら?」
「あれ、実際はわたしの魔法で運用をしていたんです……」
「な、な、なんだってぇ? そんな事が可能なんっすか? ローネ」
「ハイ。ワタシたちの世界でも、電力は活用していたんですヨ?」
「話が唐突すぎて、さすがに理解が追いつかないんだけど」
「そうっすよ! そんなの初耳っすよ」
「エト……ワタシにとっては、水くみも発電も労力は、まるで同じなんですけど」
「はぁっ? けど、つきっきりじゃなくても動くんスか?」
「私たちにも分かりそうな言葉で説明できるのかしら」
「内調の初瀬さんは、間欠式の磁力増強型の永久機関だって言ってましたけど」
「間欠式磁力増強型? 永久機関ってそんなのアリっすか?」
「風力発電に使う、三つの羽のついた、大きいプロペラを見た事ありますよネ?」
「横にして、ヘリコプターみたいに回るようにして、二か所に装置を置くんです」
「装置が交互に発動する事によって、プロペラの金属を近づけようとしますから」
「えーと、それって、電力使ってプロペラを回してるのと、どう違うんですかね?」
「ハイ……。最初に回すのには電力使うですけど、速度が落ちなくなる魔法があるんです」
「それって摩擦係数を限りなくゼロにするとか? プロペラが飛んでいかないっすか?」
「実際は枠に入れますから……あぁ、ハムスターが回すやつを横にしたような感じです」
「それにしても、その回転力を電力として蓄積する事で、スピードが落ちるっすよね?」
「魔法というのは分かりませんけど……フレミングの右手の法則を九十度傾ければ……」
これまで黙っていた瑞穂さんが、何かに気づいたようです。
「非接触式の電磁誘導発電ダイナモ……自転車についてるやつの、化け物みたいな――」
瑞穂さんの推測は、きっと近いと思いますです。
「あぁっ、マジっすか。けど、非接触型なら、たいした発電量じゃないんじゃないっすか?」
「たくさん装置ありますから……。縦に四個ぐらいつめて、それが百二十セットでしたネ」
「旧綾瀬市のメタンハイドレード発電所なら、およそ東京ドーム四個分の広さですよ? 姉さん」
「だとしても、それを空母のタービンを回すのに使うには……改造が必要なんじゃないの?」
「エェト……そうですね。原子力じゃない、補助エンジンとかは、ありますヨネ?」
「そりゃあるはずっすよ? 離岸する程度なら、それでじゅうぶんな出力っすよ」
「それで一度回してもらったら、タービンブレードの摩擦係数を、なくしますカラ」
「ああ、こういうフウにも言ってたですね。ジョウオンの超電導電磁石だって!」
「はぁっ? その……タ、タービンブレードを、超伝導体にでもするんっすか?」
「そ、それなら原子力なんて、いらないじゃないのよう! マジ? それマジ?」
「超電導電磁石は、装置の横を通った人がヤバい出力なので、理論だけですケド」
「えと、向こうの世界では、その豊富な電力で何をしてたっすか? ローネ」
「ハイ。それを使って水を川からくみ上げて、畑とかにまいたりしてましたデス」
「はぁーん。それで、水くみも発電も、労力は同じなんっすか? 超もったいねー」
「まぁ……何にせよ、試してみる価値は大ありじゃないかしら?」
「そうっすね……。最悪エンジンをぶっこわしても、もともとっすもんね」
「方針は固まったわ! 何にせよ人員は必要だから、ジョーホンの官舎に行きましょう!」
「全然知らない人を動かすのは面倒ですし、了解っす」
「人数を集めたら、パイロットを横須賀のサンダーホークまで移送してちょうだい!」
「あのぉ……ですから、さっきから……魔法って一体何を仰っているのでしょうか……」
瑞穂さんは、最後まできょとんとした表情を、浮かべてました。
「ハイ……補助エンジンをもう、止めてもらっていいですよ? 終わったです」
「あのー、補助エンジンを止めてくださーい。はい! 大丈夫っすから!」
「止まったそうですけど……って、まだ煌々と照明が輝いてるんっすけど」
「えっと、出力は八割ぐらいを維持するような感じでいいんでしょうかネ?」
「いいんじゃないでしょうか……って、これ……ほぼ錬金術みたいなもんっすよ!」
「じゃあ、メーターを読み上げて、ストップって、言ってくださいです」
「わ、わかったっすよ……ど、どうぞ。十……二十・四十・六十・ストップ」
「じゃあ、これで安定させましたから……だいたい十年ぐらいは、持つと思いマス」
「それ、マジっすかぁ? これはエネルギー革命じゃあ! 日本の夜明けぜよ」
「何を言ってるの? 早坂……。もうすぐ、パイロットが到着するわよ?」
「もう、ここにいなくても大丈夫ですから……一緒にいきましょ? 早坂サン」
「えぇっ? そんなにイージーに、扱っちゃっていいもんなんすかねぇ」
早坂サンは少し遅れて、わたしのあとをついて来ました。
「これはどういう事だ……なぜサンダーホークが動いている」
「お疲れさまです。厚木か横田の方ですか? あぁ、元米国海軍の方のようですね……」
日本語を話しているのですぐは分からなかったですが、車から降りて来た人は、金髪でした。
「あ、ああ。なんでも、Fー16を飛ばせるそうだが」
「ええ。最低限の整備はしていたそうですけど、保証はちょっと」
「あんた、素直な人だな……だが、やるしかないだろうさ」
「まさか……またこの船に乗り込む日が来るとはなぁ」
「あぁ……昔のツテで、甲板員のヘンリーも連れて来たからよ」
「よろしく……射出カタパルトの事なら任せておくんだな」
「それは心強いです……では、船にどうぞ」
「御笠少佐……いちおう、横田からも連れて来ましたけど」
「ああ、お疲れさま……ところで、情報本部長や、統合情報部長の行方はどう?」
「情報本部長は太ももに傷を受けて入院中……。統合情報部長は、殉職されました」
「まさか、テロリストに? 自宅まで割れていたなんて!」
「いえ……トーカンビルで臨時の会議中だったそうで、情報本部長以外は即死です」
「なっ……どうりで、ちっとも集まって来ないと思ったら。いたましいわね……」
「なので、情報本部長から、情報本部の生存者の最上位者に、指揮をゆだねると伝言が」
「暗闇の中でこれだけ煌々としているんだから、上位者も集まって来るでしょう」
天城大尉は御笠少佐に、引き継いで欲しそうですネ。
「ところで……天城政務官や、国防大臣の安全はその後、確認されたのかしら?」
「ええ……地下で緊急の閣僚会議を開いているそうですが、何もできませんよね」
「そうね。戦術核を搭載した戦闘機による、自爆攻撃の件は聞いているわよね」
「ええ……。厚木と横田の燃料タンクが破壊された事で可能性は高いかと……」
「恐らく間違いはないわね。現状では機銃ぐらいしか、使えそうにないんだけれど」
「それはともかく、レーダーもなしでどうやって敵機を発見する気なんですか?」
「ああ……それなら、魔法を使うから大丈夫よ……。いえ、比喩(ひゆ)ではなくて」
「は? 魔法……ですか? その、昨日の襲撃を察知したという、物の事ですか?」
「そうなのよ……ウチのイアルローネ大尉は、異世界から来た魔術師なのよ――」
「なっ……それを、僕に信じろって言うんですか? 御笠少佐っ!」
「頭固いはね……見ての通りこの空母は、イアルローネ大尉の魔法で動いているのよ?」
「だからと言って……。すぐに信じられるような事じゃないでしょう!」
「実の姉の言う事が……信じられないとでも言うの? 英輔!」
「そ、それは……本当だったんですか……しょ……」
「姉さんでいいわよ。ごめんなさいね……英輔」
詢子さんは天城大尉をそっと抱きしめていたです。よかったですね。
「やあ姉さん! 英輔兄さん! ぼくを置いていくなんて、本当にひどいなぁ」
そこには、空気を読もうともしない、御笠純一少尉の姿があったです。
御笠・早坂の、ワンポイント・でたらめSF講座
御笠:「ちょっと今回は、ムチャがすぎたんじゃないのかしらねぇ」
早坂:「そうっすよ。ピ○○ュウを百匹走らせる方がまだマシっす」
御笠:「作者は家電量販店の社員をしてたけど、電気の事は無知よ」
早坂:「通電してる電線を二本ともニッパでまとめて切ったそうす」
御笠:「それ、どうなったのかしら? 家庭用電源なのよねぇ……」
早坂:「もちろん停電して、ニッパは刃先が欠けてたそうっすよ!」




