表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空と海の掌握者(コンダクター)  作者: 小田崎コウ
第一章
PR
18/27

第十七話 女の戦い(エヴ○風っスね)

「なんと、国会議事堂の眼前で行われた、テロリストによる襲撃事件が都民に大きな衝撃を与えました~(~はチャンネル変更)」

「本日就任した、御笠信照(みかさ のぶてる)新国防大臣の記者会見が早くも、大きな反響を呼んでいます~」

「御笠信照新国防大臣の記者会見における、行動方針の転換が更なる軍備につながり、それにより中華連邦を刺激する事により~」

「事情通の情報によれば、この襲撃には対戦車ミサイル二発と、プラスチック爆弾が使用されたとの事です~」

「御笠信照新国防大臣の父親である、故御笠信昭元首相もタカ派と呼ばれ、軍事的な政策を推し進めていました~」

「みんなっ! あと少しだけでいいから、時間を稼いでくれよっ! 『フッ――。無駄だと言っている……いまのはただの、』~」



「いやー……。この局だけは相変わらずっスね。なんだか、一息つけた気分っすよ……」

 時間は午後六時をすこし回っていて、部屋の中では張り詰めた空気が漂っていました。

「何見てるのよ……。聞けば何でも答えてもらえるとでも思っているの? ふたりとも」

 視線は自然と、いすにしがみつく格好で回答拒否を通している、詢子さんに集まりました。

 事情を知るもう一人……。瑞穂さんは護衛の人と打ち合わせして夕食の調達をしてマス。

「いやー。説明責任を求めているようなワケじゃないっすよ……。話せる事からでもと」

「だから、一言で切ってすてるような事ができるような、単純な問題じゃないのよ――」

「うーんと……。じゃあ……天城大尉は、この事についてご存じなんでしょうかね?」

「……ったく、わざわざ一番クリティカルな部分を、突いて来るんじゃないわよ――」

 詢子さんは顔をしかめつつも、いすに座り直しているので、何か話してくれそうです。

「英輔は、この事を知らないと思うわ……。けど、何らかの事情がある事は知ってるはずよ」

「と言いますと……。国防大学時代に、ごく一部で流れたという、うわさが関係するっすか?」

「ムッキー! あんた、知っていて、私をなぶってるんじゃないでしょうね? 早坂ぁ」

「さすがに自分も間接的な情報しか知らないっすから。天城氏が告白し玉砕したとしか」

 わたしは、お二人の会話に踏み込む勇気はなかったですけど、耳をすませて聞いていました。

「そりゃあ……実の弟に、結婚を前提とした交際をしてくれ、と言われたら、断るしかないでしょうが」

「という事は……そのころ天城大尉は事情を知らず、少佐だけは知っていた……んスね?」

「あんたねぇ……寸分の乱れもなく、致命的な部分によくメスを入れられるわよね」

「えへへ……お褒めにあずかり光栄っス。という事は、ご両親ともに同一であるんすね」

 少なくとも、不倫であるとかフギミッツーであるとか、そういう事じゃないんですね。

「はぁっ? いや、そこまで分かるような情報なんか出して……。はかったわね! 早坂」

「えっへっへー……。有効的だからこそ、長く使われる手法である事は、ご存じの通りで」

「もー……。そっちが、そういう手法まで使うのなら、もう口は開かないわよ? 早坂!」

「なら勝手な推測をば。長男が産まれたから、子どもがいない御笠家に請われたんすね。天城氏がその事実を知らないという事は……少佐が二歳か三歳ぐらいのころなんすよね」

「四菱グループの、総帥と呼ばれる人物のめいを養子にする事により……関係を強化……」

「ストップ! そのあたりは私も確認した事でもないし、踏み込むべき問題じゃないわ」

「コホン……御笠夫妻には子どもが産まれず、めいである少佐を養子として迎えた――。どちらの家にも利益をもたらしたが、まさか四年後に御笠夫妻に長男が産まれるとは」

「あんた、コンピューターがなくっても、内調でも公安でも、どっこでも活躍できるわね」



「詢子さん。あんた、なんで自分に言ってくれなかったんすか! こんな事を一人で抱え込んで!」

「仕方ないじゃないっ。女だから不要だと思われた事にたいする、腹いせにあんたを……。いもうと同然のあんたを、巻き込めるわけがないじゃないっ……っく……ふぅっ……」

 お二人は涙を流しながらお互いの体を抱きかかえ、おえつをこらえているようでした。

 わたしはそこに踏み込む資格がないから……いっしょに泣いてあげる事しか……。



「私は天城家に不要だとされたのに、英輔は一人息子として愛されて……そんなあの子に、結婚を求められてみなさいよ……あの子に罪はないけど、傷つける事しかできないじゃない」

 少し落ち着いて来た詢子さんは、涙をぬぐいながら、再び口を開いて話し始めました。

「天城の、父さんは……勝手なのよ。ずっと黙っていればいいのに、息子の世話を任せておいて……。間違いが起こらないように、私にだけ事実を告げるなんて……残酷なのよ」

「御笠の母さんは……心から愛する兄の子だからもらったと、なじった私に説明したわ。けど、御笠の父さんは……説明しようともしなかったわ。だから私は家を捨てたのよ」

「そもそも、弟の純一……あんな名前をつけたのも、わたしには、当てつけに見えたのよ。だから私は、自分の能力を証明する事でしか……復讐(ふくしゅう)できないと、思ったのよ」

「英輔も、純一も……何も知らないから……それ故のごう慢さで、私を責めていたのよ! 二人にそんな事をされてみなさいよ……。仕事に逃げる事しか……できないじゃないっ」

「天城にも……御笠にも……二人の弟にも、目に物を見せたかったから、石にかじりつくようにして勉強して……力を蓄えていったのよ……いつか復讐する時のためにっ――」

「本当はどちらの親からも、愛されているのかもしれない……けどそんな事を認めたら、私は、ただの一歩も……前に進む事はできない状態だったのよ……こっけいよね」


「そんなひどい事をされても……恨み切れなかったんっスね……。だから、自分を……」

「そうよっ! 恨みきれるわけないじゃない……天城の両親もかわいがってくれたもの。だけどその事が英輔にたいしても、何らかのうっ屈を生じさせたのかもしれない」

「直接的には知らないけど、私にできる事が英輔にできず、しかられた事もあるのかも。だから一番悪いのは、養子を迎えておいて、それでも男子の後継者を求めた父なのよ!」

「純一はそれを知っていて、あんなふうな性格になってしまったのかもしれないわ……。だっておかしいもの! あの子は軍なんかに進まずに、政治家になればよかったのよ」

「たしかに、東央大学に合格したてのころは、そういう野心を見せていたっすよね……。これは憶測ですけど、入学手続きの時に戸籍抄本でも見てしまったのかもっすね」

「そのころには、私もかなり純一とも距離を取っていたから……恨んでる事に気づいてたのかもね」

「それって……恨んでる事にはならないですよ。愛しているから、そんなに苦しむんすよ……」

 アコさんは涙を流しながら、詢子さんの手を取って、包み込みながら言ったです。


「自分も……。どことなく、詢子さんの思いには気づいてたんスけど、父の事があって」

「いいの……。私も今回の事で、どれだけ父の事を愛しているのか……気づけたのよ」


「どうも、遅くなりました! なにせ、調理してるところを監視したりしてましたので」

 保温ボックスを手にした瑞穂さんが入って来たんですけど、空気読んでクダサイ――。



「あのイタリアンレストランって、テイクアウトはしていないんスよね……よく認めたっすね」

「そりゃあ……。警察のSPと、軍の警務隊がコンビを組んで交渉すれば、一発ですよ」

 Lサイズのピザを三枚と飲み物を買って来てくれたので、ちょっとしたゴチソウです。

「そういえば、ボートで上陸したって言う敵兵士は、いったいどこに消えたんすかね?」

「軍服を着た敵兵士を見たら、いくらなんでも発見できそうな気がするんですけど……」

 アコさんと瑞穂さんは、ピザをジュースで流し込んだあと、不思議そうに話しました。

「軍服を着ていなかったら……。もし、上陸したのが日本人だったら……。って茅ヶ崎!」

 詢子さんはピザのピースを取りかけていた手を止め、血相を変えて立ち上がったです。

「わわっ……なんすか、なんすか? ってこんな時間に停電なんっすか? 御笠少佐!」

 その次の瞬間、部屋の照明が消えてしまいました。

「私の大失態よ……どうやら一歩も二歩も遅かったみたいね……敵に浸透されるわよ!」

 窓から見えていた建物の明かりも次々と消えていき、わたしもようやく気づきました。

 後に第三次攻防戦と呼ばれた戦いは……まだ、始まったばかりだったという事に――。



 御笠・早坂の、ワンポイント・ミリタリー講座

御笠:「便衣兵べんいへいは、あの国の常とう手段だったのに」

早坂:「便意兵? トイレぐらい、我慢せずに行けばいいっすよ?」

御笠:「台本通りのボケをありがとう。けど、ぜんぜん笑えないわ」

早坂:「上海軍の闇夜の浸透を撃退できるのか、乞うご期待っすね」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ