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空と海の掌握者(コンダクター)  作者: 小田崎コウ
第一章
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17/27

第十六話 御笠のおやっさん大出世っす

「えーこの度、総理より国防大臣に任命されました……。御笠信照(みかさ のぶてる)です。その所信表明を述べさせていただくと共に、凶弾に倒れた、渡邊前国防大臣に深い~」

「えー……ただいま国防大臣に着かれた、御笠信照氏による、記者会見が始まりました」


「この度の凶行は民主主義への挑戦であり、国際法上においても交戦だとみなされます。これは、我らの生存権を守るための戦いであると、皆様にも認識していただきたい!」

「また、昨日発生しました上海軍の伊豆大島への侵攻でありますが、もしこれを阻む事ができなければ、我が国の生命線であるシーレーンは崩壊していた事は言うまでもない事であります。重油を穀物を鉄鋼を絶たれては、我が国は一年と持たないのであります」

「しかるに申しあげて、えん戦の気風が広がりつつありますが、生存戦争におきまして、一人の部外者もいない事を、申しあげると共に、行動方針の転換が必要であるとぉ~」

「えー……現在も、御笠信照新国防大臣による、強い語調の記者会見が続いています!」



「うっわー……。御笠のおやっさん、言う事は間違ってないけど、強気っすよねぇ……」

「姉さん……。御笠のお屋形さまには大変お世話になっていますのに、そんな口使いを」

 テレビを見て感想を漏らしたアコさんに、その妹の瑞穂さんが横から注意をしました。

「うっさい。あんたの親方は日の丸っスよ! いつまでも前時代的な事を言うなっス!」

「まぁまぁ瑞穂ちゃん。これは、吾子の言う通りだと思うわ。わたしたちはあくまで公僕なのよ?」

「詢子お嬢様がそう言われるのであれば、認識を改めるにやぶさかではないですが……」

 ついさっきあいさつしたばかりだと言うのに、瑞穂さんはすっかり居着いていました。

「いやー……しかし、わたしらのトップに立つのが、御笠のおやっさんとは驚きっすよ」

「いえ、姉さん……。国防軍の最高指揮権は首相になりますから、トップとは言えないかと」

 先ほどから見ているに仲が悪いようではないですけど、ツッコミが激しいようですね。

「あーもう……瑞穂は堅苦しい事しか言わないんスから。警察やめて秘書になったら?」

「わたしとしてはそれでもいいんですが、拳銃を所持できませんから、役には立てません」

「あー……。この間の国防軍との合同射撃大会でも、かなりいい成績だったわよね」

「詢子お嬢様ほどじゃありませんよ。CQB訓練ができないんですから、畳水練ですし」

「来週にでも射撃訓練をするつもりだから、私に同行して訓練すればいいんじゃない?」

「いいんですか? 詢子お嬢様と射撃をするなんて久しぶりですね。グアム以来ですか」

「あー……ついに拳銃を所持する気になったっすか……なら、自分も付き合うっすよ!」

「アノ……。どうしてテッポウを持ち歩く事になったんですか? ワタシ、撃てないです」

「ローネはいいんですよ……。最近、物騒になって来たっすから、念のためなんっスから」

 もしかしたら、わたしを危険から守るためかもしれないですね。不安になるです。



「あの……そろそろ、そちらの方を紹介しては頂けないものでしょうか? 詢子お嬢様」

「へっへーん。部外者は接触できないんスから、こんな事をしてもいいのは自分だけー」

 アコさんはわたしを後ろからハグして、ほおずりをしていますけど、どうしてですか?

「うぅ~……。そんな、西欧風の美少女を独り占めするなんてぇ、姉さんのいじわるっすー」

「あっはっは。久々に瑞穂の素が見えたっすね? かわいい物好きは相変わらずっすね」

「うーんと……。首席法務官の判断待ちなのよねぇ。国家公務員の警備をする事についても」

「今日は土曜日ですから、早くてもあさってになるんですか? 詢子お嬢様ぁ~」

「そうね。あくまで今日は警護ではなく、私人として訪れている建て前だからね」

「まぁ仕事として警護を命じられているのは、あさってからなんですけどね。つい……」

「ほぼ趣味で仕事してんじゃないっすよ……。まぁ、分からないでもないんスけどねぇ」

「ところで……いつの間にSPになってたのよ。何も言ってなかったじゃないっすか!」

「別に姉さんに報告するような事でもないと思いましたし、配属されたばかりですから」

「高卒で警察なんかに入らなくても、御笠のおやっさんは大学に行かせてやるって……」

「せっかくですけど、そこまでのご恩を受けたら、純一さんを引き受けさせられそうで……」

「ぶはは……。たしかに、しっかりもんのあんたとくっつけたそうな感じだったすね!」

「さすがに、いくらわたしでも、御笠家にそこまでの忠誠心は持ってないですから……」

「もう……純一ったら、何かちょっかいでも出したんじゃないでしょうねぇ……ったく」

「新入りのSPのあんたが、少佐の警護をする事になったのは、志願でもしたんすか?」

「別に志願という程でもないのですが、御笠家との関係を述べましたら、このように……」

「女性のSPは絶対数が少ないって聞くし、不思議な事じゃないのかもしれないわよね」

「たしか、大臣の家族であっても、警護対象者じゃあないはずっすよ? なのにどうして」

「それは、前国防大臣が二発の対戦車ミサイルとプラスチック爆弾で殺されたからです」

「えぇっ? そこまでの大事件だったの? まだ、報道規制がされているのかしら」

「マジっすか? それ、よく天城政務官助かったっすね。意外と強運なんっすかね……」

 あまりにもショッキングな情報に、おふたりとも、目をむいてしまっていたです。

「わたしが派遣された理由は、ほかにもありますから……すぐに分かると思いますけど……」

 そう言って瑞穂さんは、テレビのリモコンを手に取って、ボリュームを上げたです。

「もう、午後五時のニュースが始まるっすか。ホント時間がたつのが早いっスねぇ……」



「こんばんは……SNN午後五時のニュースです。本日は予定を変更して国防大臣に就任した御笠信照氏を特集いたします。それでは解説者の中須賀さん、お願いします……」

「SNN解説員の中須賀です。御笠信照氏はまだ54歳と、政治家としてはお若いのですが、五年前に亡くなられた、御笠信昭元総理大臣の後継者であり、党の若手の中では~」



「エェー……詢子さんのおじいさんは、総理大臣だったんですか? 知らなかったです」

「失礼ながら、我が国の元総理大臣の名を知らないだなんて、軍人として不見識では~」

「はいストップ! 接触は禁止だって言ってるのに、瑞穂は油断もすきもないっすねぇ」



「今回、御笠信照氏が国防大臣に推される事を想像できていた方は少ないかと思います。長女の詢子さんと長男の純一さんのお二人の子どもさんが国防軍に奉職している事も、高評価につながったのではないかと見られております。政治家が戦争に近親を派遣~」



「えぇ? いくら軍人とはいえ、公人と言うには微妙なのに、名前まで出すんっすか?」

「わたしが派遣される事になった理由……。察しの悪い姉さんにも理解して頂けますよね?」



「また四菱グループとも深い関係のある、天城国防大臣政務官は御笠信照氏の義理の兄にあたり関係も良好で、今後は政軍関係も柔軟になるのではないかと見られています」



「うわ、四菱の株は週明けにはストップ高っすねぇ。自分も買っておけばよかったっす」

「んー。まぁ、実際に軍事予算に即座に変化があるかというのは、別にして……動くでしょうね」

「詢子お嬢様と、純一さまについて、早ければ今晩……。遅くても明日には報道が……」

 瑞穂さんは、少し表情を暗くしていました。



「例の件についても、報道されるかは局の品位によるとは思いますが、止める事は……」

「は? 例の件って何の事っすか? 止めるって……わけわかんない事言うなっすよ!」

「あれ、姉さんはご存じないんですか? 詢子さんの、実のお父様は天城政務官ですよ? 普通養子縁組ですから、戸籍にもそう記されていますし、秘密とも言えませんが」

 突然の来訪者である、早坂瑞穂さんは、新たな爆弾を投下してしまったです。



 御笠・早坂の、ワンポイント・バレバレの伏線講座

御笠:「あれだけフラグ立ててれば、さすがに気づかれるわよねぇ」

早坂:「って事は、天城大尉は実の弟っすか? それとも不倫!?」

御笠:「次回に持ち越しですが作者取材中のため次回は休載に……」

早坂:「こんな引き方しておいてそれは許さないっすよ? 作者ェ」


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