第十二話 激しい戦いの始まりっス
「そうだ! 伊豆大島に、上海軍の物と思われる小型空母を始めとする艦隊が来ている!」
「小笠原の基地は通信が途絶している! もう占拠されたかもしれん! 伝達を急いでくれ!」
「統幕でも、海上幕僚監部経由でもいいから、伊豆大島の駐留艦隊に連絡を取るんだ!」
「何でわかったのかって? 御笠大尉の例の実験で来ていたんだ! いいから早くしろっ!」
隣で見学していた人たちは、連絡する相手を割り振って、あわてて電話をしてました。
「ええ……。そういう事だから、詳細はあとで説明するから、臨戦態勢に入るべきね!」
御笠大尉も携帯電話で、天城大尉のいる第一分析室に連絡をしているようでした……。
「えーと、中尉……上海軍の艦隊は御蔵島の東を北に向けて進行中でいいんですよね?」
「ハイ……あっ……いま、ミクラジマのおわんが壊されたです! 建物も燃えてマス!」
早坂サンは、小型の端末のキーをタイプしながら、わたしに聞いて来たですけど……。
「高橋少尉……UAVの燃料補給は終わったかしら? どのあたりまで進出できるの?」
「はい……いま、新島と三宅島のレーダー基地を使用可能ですので、御蔵島までなら!」
「やはり、UAVによる実際の映像がないと、上の方が判断しかねる可能性があるわね」
「いま、離陸しました。大島空港に配備されていた中型機二機も、準備中だそうです!」
御笠大尉はこの基地の管制官の人と、早口で会話をしていたです。
「早坂サン! いま空母からヘリコプターが一機、北に飛び立ったです!」
「あちゃー……。三宅島のレーダー基地を破壊するつもりっすね。了解っス」
「アノ……それって、いったいどこに連絡をしているんですか? 早坂サン……」
「あぁ、これっすか? 中尉。昨日言ってた、裏のネットワークっスよ!」
早坂サンは、悪びれた様子もなく、トンデモない事を口にしたんです。
「エェッ? アノ……大丈夫なんですカ? 捕まったりしないですカ?」
「普通じゃ間に合わないっすからね。どこにでも女子はいますからね!」
エト……ジョーホンビル内だけじゃ、なかったんですか? 早坂サン――。
「場合が場合だから、仕方ないわねぇ……。まぁ、万一に備えて、その準備をさせていたのは私だし――」
御笠大尉がわたしと早坂サンの会話を聞いたのか、近づいて来たです。
「ソウなんですか? 良かったです。あ、ヘリがロケットを撃ったです!」
「もうっすか? 上海軍のヘリではもっと時間がかかると思ったんすが……」
「ヘリの機種とか……わからないわよね。今度、写真を用意しておくわ」
「今度があればの話っスけどねぇ……こんな感じのヤツっすか? 中尉」
「ハイ! ちょっと色が違うんですけど、前と後ろに、座席がアルです!」
早坂サンは、小型の端末で、ヘリの写真をわたしに見せてくれました。
「うわー……こりゃ、上海軍は本気だわ……。時速二百二十キロは出るっす」
「高橋少尉! 大島のUAVは、一機を残して待避させた方がいいわよ」
「アノ、敵の艦隊にここまで攻めて来られても、ここは大丈夫なんですヨネ?」
情報本部に着くまでの間に見た景色と、御笠大尉の言葉を思い出しました。
「本土にまで上陸する気なら、対処はできるけど、あちらさんに、その気はないかもねぇ……」
「大島に居座り続けるだけで、日本はすぐに音を上げる事になるっすから……」
それって、どういう事なんでしょうカ? あとで質問をしておくです。
「伊豆大島に避難指示は届いたのかしら……せめて、民間人の救助だけでも……」
「大尉! 二人ぐらい間を介したら、駐留艦隊の海将とコンタクトが取れるっスよ!」
「じゃお願いするわね……ここは、なんとしても時間を稼いでもらわないといけないの」
「了解っス! すぐに手配をするっス 直接電話をするっすか? 大尉」
「その方がいいわよね。統合情報部長経由とかだと、遅くなるかもしれないし」
「詢子です……ええ、第一報が届きましたか。私の部署でつかみました。第一と共同という体裁で実験中だったものですから。では、後ほどに……」
御笠大尉の、私物の方の携帯電話が鳴り、誰かと話をしていました……。
「追認という形になるけど、天城国防大臣政務官の協力はとりつけたわ――」
「そうっすか。もう、駐留艦隊と連絡がつくっすから、そこの受話器で話せるっす」
「突然の連絡失礼します。小官は統合情報部の御笠大尉であります……ええ、すでに最新の戦闘ヘリが、各所の施設を破壊しています」
御笠大尉は、電話の向こうの誰かに、必死で何かを訴えかけてました。
「ふぅ……民間人の救助と並行して、艦隊に遅滞作戦を行う事を、承諾させたわ」
「マジっすか? そんな横車を押されて、向こうもよく納得したっすねぇ……」
「頭越しもいいところなんだけど、伯父の名前を出して、納得させたわ……」
「あっ……。ええと、横田からスクランブルした戦闘機なんスけど、たどり着けずに迷ってるっす!」
「いっくら電波障害とはいえ、大島にぐらい飛べないものなの? もう!」
「やー……。戦闘機じゃ速度が速すぎて、下の地形を見ながら、飛ぶんじゃ仕方ないっすよ」
「アノ……ワタシが飛行機を案内シマス……もう見つけましたですから」
「マジっすか? じゃあ戦闘機との通信に割り込むっスよ! うーんと……」
どっやら、早坂サンはハッキングの要領で、介入をしているようです……。
「いま、戦闘機の部隊と戦術リンクがつながりました! 中尉、指示をお願いするっす」
「エト……。現在の進行方向から10時の方角だと、伝えてくださいです」
御笠大尉から、最低限の軍事的な用語を、習っておいて良かったです……。
「対艦ミサイルは無誘導では、まず当たらないでしょうし、気休めにしかならないわよね」
「そうっすねぇ。第二次大戦期のレシプロ機に、爆装させた方が、まだマシっす!」
「あっ、左に行きすぎたです……。ちょっと戻すように、言ってくださいです!」
その後、何度か誘導して、ようやく戦闘機部隊が、敵の艦隊のところまでたどり着いたです。
「あ、空母は引き返していったです……けど、回りの船は直進していマス」
こちらの戦闘機が、船を攻撃する手段があるのを、知ったからでしょうかネ?
「空母の護衛じゃなくて、浸透奇襲するつもりっスよね……。このパターンは、やばいっすね」
「もし、中尉が今日ここで実験をしていなかったら、大変だったわよねぇ……」
「敵の戦闘ヘリが、伊豆大島に近づいて来たです! 大丈夫なんでしょうか?」
「えぇ? 空母に引き返したんじゃないんっスか。うーわ、こりゃやばいっすね……」
「レーダーも使えないんじゃ、戦闘ヘリ相手とはいえ、分が悪いわねぇ……」
「敵の船が二方向に分かれたです! ひとつは大島に向かっています! もうひとつは左の方にいきマシタ」
「いま、駐留艦隊に連絡したとしても、できる事はないわね……。避難状況は?」
「ええと、大島空港のスタッフは、軍属も含めて、現在避難中だそうです……」
「まだその状況? 間に合うのかしら……それにしても、全体的に動きが遅すぎるわよ!」
「うーん……。御笠大尉に、もっと大きな権限と、作戦指揮所ぐらいはないと、無理っすよねぇ」
早坂サンは、小声でぼそぼそと、そんな事を言ってましたけど、御笠大尉に出世して欲しいのは、ワタシも同じです。
「えぇと……。左に向かった敵の船は、たくさんボートを浮かべているです!」
「マジっすか? 下田か相模灘にでも、上陸する気で向かってるんすかねぇ……」
「あのあたりは第二次攻防戦で放棄されているし、向こうの目的が見えないわねぇ」
「エト……。二カ所を同時には見られないです……どっちを見た方がいいですか?」
「じゃあ、大島の方を注視してもらえる? 早坂は至急、陸幕に連絡をしておいて!」
「了解っス! そういえば、そろそろ二時間ぐらいたつんじゃないっすかね?」
「中尉……持続時間はあと、どれぐらい持ちそうなのかしら?」
「無理して、拡大したですから……三十分ぐらいです」
さっきから、ちょっと頭も痛いですけど、仕方ないです。
「あの、御笠大尉……ここも退去指示が出たんですが」
「えぇっ? そもそも、ここまで突破されたら負けるわよ?」
ここの基地の高橋少尉とか言う人が話しかけてきたです。
「御笠大尉……。ここにいて自分たちにできる事は、もうないみたいっすよ?」
「そうねぇ……。たしかにもう、横車を押せるような状態じゃないわねぇ……」
「情報本部に戻って、いろんな情報を集める指示をした方がマシっすよ!」
「わかったわ……。じゃあ三十分後をめどに、退去の準備を進めてちょうだい!」
「大尉! 大島から、最後の民間人を乗せた艦艇が、いま離岸したところっす!」
「よかったわ……。駐留艦隊は、数を減らしながらも、敵の突破を阻止しているようねぇ」
お二人も、忙しそうに、いろんなところと連絡をしているようでした。
「エト……大島の左から船が回り込もうとしてるです…………」
できるだけ時間を延ばそうとしてましたが、目の前が暗くなったです。
サブタイトルが若干ネタ切れにw




