第十話 御笠大尉怒ると怖すぎっす
サブタイトルはたいてい、早坂視点かローネ視点です。
はっきり言ってネタ切れです。ゴールしてもいいよね?
「御笠大尉の顔を見るのが、なんだか怖いっスよ」
「アコサン。きっと、だいじょうぶですから」
午後三時すぎに早坂サンと、大尉の待つ会議室へと向かいました。呼び出されるという事は、ほぼ間違いなくさっきの件ですよね……。どれぐらい怒られるんでしょうか。早坂さんといっしょじゃなかったら、泣いてしまいそうです。
「早坂……入りまーす」
「失礼しますです」
会議室に入っても、御笠大尉の反応はありませんでした。
「あっ。いたです」
「大丈夫なんっすか?」
御笠大尉は会議用のテーブルにうつぶせるような格好で、頭を抱えてました。
「はーやーさーかー……」
御笠大尉はうつぶせたまま早坂サンの名前を呼びました。地獄の底からの声のように、くぐもっていました。
「あの……もしかして、上のほうで問題になったっすか?」
「あんな事をしでかして……平穏無事なワケがないでしょう」
「あー。やっぱり、そうなんスかねぇ……うーん」
早坂サンは、ほおをかきながらつぶやきました。あまり深刻に見えないですネ。
「あんた、自分がした事を悪いと思ってる?」
「悪いのは、どう考えても、陸幕の連中っすよ。天城には悪かったスけど……」
「アノ、早坂サンはワタシを助けてくれただけナンです」
弁解しようと思ったですケド、言葉が続かなかったです。
「二人とも……いいから、ちょっとは落ち着きなさい」
御笠大尉は、ワタシたちに席につくように、ジェスチャーで示したです。
「まぁたしかに……その状況なら、仕方ないとは思っているんだけどさぁ……」
御笠大尉はボールペンをつつきながら、つぶやいたです。
「まさか、統合情報部長にでも、ネチネチ言われたっすか?」
「近いわね……。天城大尉が、非公式な経緯書を上に出しちゃったのよね」
「それに抗議文でも載ってたんですか?」
問題にしないと言ってましたのに、どうしてでしょうカ。
「経緯書というのは始末書の一歩手前で、上司に報告する書類なの」
「うーん……どっちも書いた事ないっすからねぇ」
「私があんたの代わりに、いっつも問題のないようにねェ――」
御笠大尉はテーブルにずるっと突っ伏してしまったです。
「アノ、それが出されると……どういう事になるんでしょうか?」
「非公式ではあるけれど、マイナスの査定になるわね」
提出された事でウチに何か不利な事があるんでしょうカ?
「天城は、どんな内容の経緯書を書いたんですか?」
「うろ覚えでいいのなら教えてあげるけど、口外無用よ?」
「外部の佐官級幹部により、接触禁止の人物への、干渉が生じてしまった」
御笠大尉は少し考え込んでから、通達書の内容をそらんじてみせました。
「通達の実行に遅延が生じてしまった事実を、小官は深く受け止めている」
御笠大尉はそこで言葉を切って、わたしと早坂サンを見つめました……。
「佐官級幹部って、その時点でウソじゃないっすか! 実際には、陸上幕僚長まで!」
「はいストップ――。箕島中将の件なら、口頭でのみ説明があったそうよ」
早坂サンは激高して席を立とうとしましたが、制止されてしまいました。
「そうっすか……たしかにその件については、間違ってはいないっすよね……」
「言っておくけど、あんたの事についても、口頭では過失を認めたそうよ」
「ウチとの間に感情的な行き違いが生じたが、解決する事ができたともね」
(エト……だとしたら、やっぱり約束を守ってくれた事になるですよね?)
「指揮系統に乱れが生じるから、なかった事にするそうよ?」
「そうなんですか? じゃあ、統合幕僚監部とも手打ちをしたって事っすか」
「そうよ。つまり、ウチ……おもにあんたも、天城大尉もおとがめなしって事よ」
「そうなんですか……。それなら別に悪い話じゃないですよね? 早坂サン」
「そうっすね……中尉。ぶっちゃけ、今回はヤバイかなーとは思ったんスよ」
「だーけど。それは表向きの話で、第一との歩み寄りを求められたのよね」
「そうっすか……って、自分が率先して、第一との対立を広げてるわけじゃ」
大尉の、冷ややかな視線を浴びて、早坂サンはしりつぼみになりました。
「今回、大原二曹も関与したそうだけど、もし第一の子だったら大問題よ?」
「あー……。やっぱ、そうですかねぇ。今後は気をつける事にするっすよ」
協力してもらってたですよね? でもわたしは空気を読める子ですカラ!
「話を戻すけど、深刻な事態に発展していたら、大変な事になってたわよ」
「すみません。天城が中尉を泣かせてると思ったら、頭がカーっとなり……」
「まぁ、これ以上はいいわ。けど、天城大尉にたいして……なにか思う事はないの?」
「筋を通す事はできる人間のようなので、ワンポイント分アップですかね」
早坂サンは少し考えてから、神妙そうな表情を浮かべて言ったです……。
「急きょ明日行う事になった中尉の実験だけど、その関係で第一と、共同になったから」
「マジっすか? 第一にそんな介入をさせていいんですか? 御笠大尉!」
「だから、頭を冷やしなさいって……。天城大尉は同行しない事になったわ」
「そうっすか……。まぁ、どちらかは残らないといけないからっすかねぇ……」
「実験の都合上、第一の管轄内で行う事になったから、仕方がないじゃない」
「そりゃ……ウチの管轄内で、第一が勝手な事をしたら許さないっすけど」
腕まくりをして、第一に殴り込む早坂サンの姿を想像してしまったです。
「明日の件っすけど、特殊な衛星を中尉がって線で行く事にしたんすか?」
「そこで早坂に相談なんだけど……。それを裏付ける装置を用意できる?」
「どんな装置を作ればいいっスかね。やっぱり、欺瞞系すかね」
「そうね……中尉が、衛星とアクセスしていると思わせるだけでいいわよ」
「端末制御が前提になるっすね。HMDにリンカーをつなげばいけますね」
「それでいいと思うけど、明日の朝一までに用意する事はできるかしら?」
「うーんと……。今日中に作るなら、私物を組み合わせる事で、何とか……」
「だけど、その作業は課業中には無理だから、帰宅後にお願いするわね?」
「えぇっ? 今晩は徹夜確定で、明日は朝から夜中までになるんスよね?」
「なにか問題があったかしらね。できるの? それともできないとでも?」
「万難を排して、完成させるでアリマス! 御笠大尉殿ッ――」
御笠大尉がこめかみを震わせているのを見て、早坂サンは敬礼したです。
「課業中は中尉に協力してもらって、索敵可能範囲を割り出しておいてね」
「了解であります!」
「は、ハイ!」
「これから、関係各所に実験の協力をとりつけるべく、折衝してくるから」
御笠大尉は、時計を見てから立ち上がり、第三会議室を出ていきました。
「なんだかチョット怖かったですケド……」
「あれは噴火する寸前のきざしなんっスよ。覚えておいた方がいいっすね」
わたしは早坂サンと顔をつきあわせて、ヒソヒソと話をしていたです。
「テンゲンを使うのも、久しぶりですネ……」
午後四時を回ったころ、わたしは個室に戻って、大きい地図を広げました。
「…………イキマス」
わたしはめい目して、脳内で組み立てた術式を順次実行して行きました。
「このあたり……デシュね」
中心となる地点は分かっていたので、東西南北の限界地点を探ったです。
製図用の大きいコンパスで術の範囲を確認して、大きい円を描きました。
「衛星……『はやぶさタン』の反応……来ました」
同じようにして、西日本の図でも場所を確認していき、円を描きました。
「フゥ……疲れたです」
かなり頻繁に拡大縮小を繰り返したので、二十分で限界を迎えました。
「メールしないとです……」
集中のために切っていた携帯の電源を入れて、早坂サンに連絡しました。
今回は『谷』の回ってやつですね。
次回から急展開するのでお楽しみに。




