第九話 早くもラスボス?登場っすか?
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【帳簿はいつも真っ赤っ火】[Desperate Financial Situation]
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「こんな小娘がかね? 日本語はわかるのかね、アイルローネ中尉」
派手な軍服を着た人が、お供をぞろぞろと引き連れて、近づいて来たです。
「彼女がイアルローネ中尉に相違ありません、箕島中将」
「なんとまぁ。内調(内閣情報調査室)も何を考えているのやら」
「慣例とはいえ、期末直後に送り込むとは、油断がならんですなあ」
「今後は、このような出向を認めるわけにはいかなくなりましたな」
天城大尉は、ぼうぜんとしているわたしを、中将とか呼んでいた人のお供の人にも紹介したです。
(エッ、エトォ…………ラ・ノリダ※ウ・タ※ロウヤ・※エマエチ)
混乱のあまり、元の世界の言葉で考えてしまい、何も言えませんでした。
「ふざけとる。まともに口も開けないような小娘が中尉だなどと」
「午後の式典が終わり次第、内調の内閣事務官の後藤を呼び出すべきだな……」
「予算をこっちにぶんどられたのが、納得いかんのかもしれんが、これは許せん」
「まったくだ。このような形で統幕(統合幕僚監部)への妨害活動をするとは」
「箕島陸上幕僚長と、陸幕|(陸上幕僚監部)の管理・会計・人事部長だ……」
「よりにもよって、陸幕のカルテットに目をつけられるとは、あの子もかわいそうに」
後ろを通りかかった人たちが口にした言葉にわたしは耳を疑いました。どうして、そんな偉い人タチが、わたしをたずねて尋問するんですカ?
「処断をする、いい切っ掛けにはなったのかもしれんが、わたしは不愉快だ」
「ジョーホンに鈴でも手綱でも、しっかりとつけておくべきですな」
「こうなれば、本部長の宮中少将と統合情報部長にも責任を問えばよろしいかと」
「いやはや……我々は御笠大尉の事を過大評価していたのでしょうなぁ……」
お供の人たちは、口々に、御笠大尉まで責めているようでした。わたしのせいで第二に迷惑がかかったんでしょうか?
「天城大尉……ご苦労だったな。なあにすぐに風通しがよくなる」
「イアルローネ中尉の顔を見知っているのは、小官だけですから」
天城大尉がお供の人と悪そうな話をしてますけど……それって、第二や御笠大尉を恨んでいるからですカ? だとしたら許せないんですけど。
「ふむぅ……不愉快だが、いちおう聞いておくか。君は何ができると言うんだね? アイルローネ中尉とやら――」
「陸上幕僚長の箕島閣下じきじきの質問だ。答えないと無礼にあたるぞ!」
「エッ……エェッ? アッ、アノ。接触禁止の通達……ですカラ!」
ジョーホンビルなら、接触禁止の通達が出てるんじゃなかったですか? 回りを見渡してみましたけど、誰もが遠巻きに見てるダケだったです。
「大原二曹だったね……。話があるから、こっちに来てくれないか」
大原二曹の姿が見えましたけど、天城大尉に追い払われたみたいです……。とことん邪魔をする気なんですね?
「いったい君は何を言っとるんだね」
「情報本部は統合幕僚監部の一部所にすぎんのだから適用されるわけがないだろう」
「エっ……エト……ソノ……ワタシ……」
血相を変えて怒る人たちに囲まれて、わたしはいまにも頭がパンクしそうです……ニフ○ムかバシル○ラを使いたいと思ったのは、初めての事です!
こんな大勢の人に責められるのは初めての事で、泣くまいと思ってはいても……もうダメです。
「箕島中将……陸上幕僚監部の皆様も、恐れ入りますが、ちょっとお待ち願えませんか?」
必死に涙をこらえようとしていると、なぜか天城大尉が間に入って来ました。
「おう、天城君じゃないかね。もう帰ったのかと思ってたんだが、どうかしたのかね?」
天城大尉は、中将と話しているですけど、一体どうしたんでしょうカ? 悪いたくらみじゃなければいいんですけド。
「情報本部長の通達を確認してみたのですが、当ビル内においては発効中なので、閣下にも適用されるようです」
「天城くん。建て前ではそうかもしれないが、それは有名無実ではないのかね?」
「機会を改め、統合幕僚監部に上司と共に召喚する形が、もっとも望ましいかと」
天城大尉は顔色も変えず、わたしたちの処分を口にしていたです。
えぇっ? ショウカンって、サモンするんでしたよネ? って、いまわたしうまい事言ったです!
「そこまで、宮中少将に気を使う必用がありますかねぇ」
「待て待て……天城君の立場を危うくするようなまねは、避けねばならんよ」
「さすが中将。ごもっともです。彼は情報本部の人間ですからな」
「ここは、天城大尉の顔を立てる事にして、退散しますかな」
どういうワケか怖い顔の人タチは、ぞろぞろとエレベーターに乗って、引き上げていったです。コレって、もしかして、天城大尉に助けてもらった事に、なるんでしょうカ?
「イアルローネ・アインス・ミストーク中尉だったな。もう大丈夫だぞ……」
「エト……ワ、わかりましたですけど……どうして天城大尉が……」
あまりのショックにひざが震えて、床に崩れ落ちてしまいそうでした。いまごろになって気がゆるんだのか、ほほに流れた涙に気づきました。
「大丈夫なのか? イアルローネ中尉……ん? この騒々しい音は一体なんなんだ……」
どこからともなく、階段を高速で駆け上がってくる音が聞こえて来ました。ワタシはこの足音を知っているです。
「ちょっとぉ! どういう事なんスかぁっ! 今すぐ中尉から離れるっス」
想像した通り、早坂サンが顔を真っ赤に染めて、マッパの速度で駆けつけてくれました。エト、マッパじゃなくてマッハだったですかネ? そんなのどっちでもいいですネ。
「ローネ中尉っ……もう大丈夫っすからっ……ぜぇっ……ぜぇっ」
早坂サンは叫び声を上げて、ワタシと天城大尉との間に、割って入って、両手を広げて制止しようとしてくれまシタ。それがとっても心強かったんですけど、ちょっと勘違いをしているような気もしますネ。
「ちょっと待ちたまえ早坂少尉……。別に僕は中尉にどうこうするつもりは」
「黙るっすよ! 親の七光り使って陸上幕僚長まで動員するとは、見上げたクソヤロウっス!」
「アノ、早坂サン? 怖かったですけど、いまはもう大丈夫なんですよ?」
早坂サンは天城大尉が原因だと思っているのか、大声でののしりました。頭から湯気を立てて怒っているので、わたしの言葉が聞こえてないみたいです……早く止めた方がいいんですけド。
「そこまでしてウチに手を突っ込むんスか! 御笠大尉の足を引っぱろうだなんて、自分が許さないっスよ!」
「いや、待ってくれ! 誓って僕にそのような意図はないんだ! 頭を冷やしてくれないか!」
早坂サンは何階から階段を駆け上がったのか、全身に汗をかいてるです。冷たくひやしたオシボリを、誰か早坂サンに持って来て欲しいです……。
「自分や御笠大尉ならまだしもっスけど、ローネ中尉をマトにかけるだなんて! 言語道断、横断歩道っすよ!」
「いや……だから、それは誤解だ……。お願いだから、冷静に話を聞きなさいよ!」
「誤解も六階もないでしょうがっ! かわいそうに、ローネ中尉はぽろぽろ泣いてたんっスよ!」
「アノ……早坂サン? もうだいじょうぶです……泣いてないですから!」
大原二曹の姿がまた見えたです。もしかして、早坂サンに連絡をしてくれたんですかネ?
「いや……だからね……箕島閣下に、中尉を紹介したのは事実だけどね……」
「もう容赦しないっスよ! 陸幕の一派の公金横領の証拠を暴いてみせるっス! もうしっぽはつかんでるんスよ!」
「だ、ダメですよ? 早坂サンッ! 警察に捕まっちゃうかもしれないですよ?」スーパーハッカーの早坂サンの言葉だけにわたしはあわてちゃいました。
「嫌なヤツだとは思ってたすけど、ここまでそびえたつクソヤロウだと逆に安心っス」
早坂サンは腕まくりをして、いまにも天城大尉につかみかかりそうです。
「思い違いとは言え、満座の中でこうまでののしられたとあっては面目にかかわる」
「あんたのような、そびクソに何の面目があるっすかぁ?」
「口をつつしんでくれ! 第一と第二……。ひいては統合情報部の面目にかかわると言っている――」
「はっはぁーん。だーいすきなパパに統合情報部長の座をおねだりっスかぁー?」
「キミッ。いくらなんでも、いまの言葉は撤回してくれないか? 父は関係ないだろう父は!」
早坂サンは、ついに天城大尉の、逆鱗に触れてしまったです。やっぱり、親のナナビカリャーだと思われている事には敏感なんですネ。
「あの……もう大丈夫ですから、チョット待ってくださいデス……早坂サン!」
「ご心配は無用っすから……大原二曹! 中尉を早く部屋の中にお連れしないかっ!」
「は、ハイっ!」大原二曹さんは、早坂サンの声に体をビクッとさせて、近づいて来ました。
「さぁ、中尉……いまのうちに……」
「あの、早坂サン! 待ってくださいです!」
腕を引かれたですけど、アコさんを早く止めないとこのままでは大変な事になるです!
「ハッ! パパの取り巻きに、お手盛りもーりもりで、大尉にまでしてもらって、よく言うっス」
「まだ言うのか! キミのその言葉は、国防軍そのものを侮辱しているんだぞ?」
「こうなったらその腐った性根を、御笠大尉に代わってたたき直してやるっス」
「待ちたまえ! こんなところで暴力を振るいでもしたら、それは御笠大尉の責任問題にもなるんだぞ」
「ダメです! わたしのためにそんなこと、やめてくださいですッ」
殴り合いになりそうだったので、アワてて二人のところに、戻りました。でも、早坂サンは頭に血が登っていて、わたしの声が聞こえていないようです。
「中尉! だ、ダメですよ? 早く安全なところにぃ!」
「お願いです! 待ってくださいです……早坂サン……」
わたしは大原二曹さんに制止されたので、片ひざをついてしまいました。
けど、お二人がわたしのせいで処分されでもしたら、とてもここにはいられないですから。
「アノ、ワタシは、やめてクダサイって言っているんデシュよ? おねがいですから…………アコサンッ!?」
大原二曹に引きずられていきそうになったので、わたしはこれまで出した事のないような声で早坂サンの背に向かって叫んだです。
「えぇっ? どうしたんですかぁ? 中尉」
早坂サンは、急に毒気が抜けたような表情で振り向いてくれたです。さっきの感覚……もしかして、ナニカの魔法を使っちゃったんですカネ?
「アノ……。天城大尉は、通達書を見せて、チュージョーさんを、オッパラッテくれたです! ケド、天城大尉のせいで、御笠大尉とわたしは召喚されてしまうんですヨ!」
混乱していて、伝えたい事の半分も伝えられないのが、もどかしいです。
「あー……ローネ中尉? 何がなんだかさっぱりなんスけど、どうしたらいいんスかねぇ」
「事のはじまりは、箕島中将の部下が通達書を見て、不審に思って出向かれたようなんだ。式典に行く途中だったので中将も同行されたようで……」
「はぁっ? けど、箕島中将ったら、あんたのパパの熱烈な信奉者じゃないっすか」
「たしかにそうだが、けっして僕が手を回しただとか、そういった事実はないんだよ」
天城大尉は、早坂サンになじられた事を問題にする事もできマスよね? なのに、説明してるですから、悪気はなかったのかもしれないですね。さっきから、うそをついているような表情には見えないんですよネ。
「本当にそうなんスか? 中尉……。大原二曹は、何か見てないんスか?」
「経緯は分からないんですが……通達を確認して、箕島中将を説得していました」
わたしが口を開く前に、大原二曹さんが丁寧に事情を説明してくれたです。
「えぇ? それで箕島中将たちの姿が見えないんスか?」
「誤解を生んだのは、僕の不徳のいたすところだよ」
「じゃ、じゃあ……中尉を泣かせたのは、天城大尉じゃないんすか」
「通達書を熟読しておけば、接触は避けられた。その点に関しては非を認めるよ」
早坂サンは経緯を知ってトーンダウンしていったです。
「それが本当なら……。その、クソヤロウだけは撤回するっすよ」
「こんな事で溝を作るのは本意じゃないんだ。そもそも大きな誤解だが、僕は御笠大尉を尊敬している」
「エエ? そうだったんすか? いとこだからっすか?」
「それもあるんだが……まぁいい。これ以上はよしておこう」
「はぁ……そうっすか……」
「ただ、そのセクト主義は今後控えて欲しい……行っていい」
天城大尉は、落ち着いた表情で制服を整えていましタ。
言っている事は、まともなような気がするですね……。なんだか、天城大尉にたいする見方が変わって来たように思えるんですケド。
「そりゃあ、そんだけあんたに信用が……」
「早坂サン! もうやめてくださいです!」
「いえっ! 失礼しました、天城大尉……」
納得してはいないようですが、頭を下げてくれました。さっきも、魔法を使っちゃったんでしょうか。
「いろいろ誤解があるようだが、双方が歩み寄る事で解消すると、僕は信じているよ」
「は、はぁ……」
「この件は、あまり問題にならないようにしておくから、君も自重してくれないか」
「え、えぇ……」天城大尉の方から歩み寄りを見せる態度に、早坂サンはきょとんとしていました。
「イアルローネ中尉……怖い思いをさせてしまって、すまなかったな。この通りだ」
「エ? いや……ソノ……どうもです……」
天城大尉はなぜかわたしに、深々と頭を下げてまでして、謝ってくれたです……。わたしも、わけがわからずお辞儀をすると、第一の方に走って戻っていきました。
「あの、少尉! そもそも自分が、中尉を最後まで護衛しなかったのが悪いんです」
「アノ……ごめんなさい……ワタシ、食べるのが、とても遅かったですカラ!」
「えーと……もう一時を回ってるし、話は後にした方がいいっすね」
早坂サンも、ようやく落ち着いてくれたようで、安心しました。
御笠・早坂の、ワンポイント・ミリタリー講座
御笠:「陸上幕僚監部や陸上幕僚長とか、覚える事が増えたわよね」
早坂:「統合幕僚監部に含まれてはいるとか、ワケわからんですよ」
御笠:「陸海空の幕僚監部が内包され、それぞれに幕僚長がいるの」
早坂:「こんな説明されても、ほぼわけわからんすよね。埋め草乙」
ガヤのセリフがそれとわかりにくいですかね?




