4話『始まりの聖女が語る真実』
『私は、最愛の人を最後まで救えなかった……』
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残念ながら焼け焦げた箇所は読めそうになかったが――
そこに書かれていたのは、初代聖女の独白だった。
千年前の悲劇――
断片的な記録から、千年前の出来事が見えてくる。
初代聖女は王を愛していた。
王もまた、彼女だけを深く愛していた。
しかし王は戦で瀕死となり、聖女は何度祈っても治癒魔法を成功させられなかった。
『私は何度も祈った』
『朝も夜も祈った』
『それでも王の傷は癒えなかった』
『王は笑って言った』
『君が泣く必要はないと』
『その笑顔だけが、今でも忘れられない』
『王を愛したことを、私は何度も悔いた』
――初代聖女は最後に王を愛したことを悔いていた。
「やっぱり……私も、あなたと同じ結末になるの?」
そう思ってしまう。
しかしエネラルは首を振った。
「まだ、わかりませんよ」
そう言われた瞬間。
突然、子どもの頃の記憶が蘇った。
幼い頃の私が――
泣いている子供を慰めていた。
その面影がエネラルと重なる。
「……あの時の泣いてた男の子って――殿下だったの?」
私がまだ聖女になる前に。
私はエネラルを助けていた。
「やっと思い出してくれた。あの日から、ずっと待っていました」
「殿下……」
「――リシェルは十年前も知らない子を助けました。今回も同じ顔をしています。だから、きっと大丈夫ですよ」
◇
私達は礼拝堂の祭壇へと向かった。
『真実は聖女の箱へ』
日記の最後にそう書いてあった。
私は初代聖女のために祈りを捧げる。
すると、聖女の祈りに反応し、青白い光が集まり出した。
光はゆっくり人の形を取り、千年前の聖女が静かに目を開いた。
「この方が始まりの聖女様……」
「私を目覚めさせたのは、あなたですね」
「はい。聖女が誕生してから千年――神託に混乱が生じています……」
初代聖女が悲しそうな顔をする。
「どうか、本当の神託を教えてください」
私は思わず叫んでいた。
「私もあなたと同じでした。あの神託は……」
初代聖女は一度目を閉じた。
「愛を捨てろという意味ではありません。本当の意味は――」
初代聖女が口を開いた。
その瞬間。
エネラルの胸の黒い紋章が強く輝き出した。
「そ、その紋章は……まだ残っていたのですね!」
初代聖女が明らかに動揺している。
エネラルが血を吐き膝をついた。
黒紋の痛みに耐えている。
「エネラル!!」
私は駆け寄った。
紋章の光が初代聖女を貫き――
魂が薄くなっていく。
初代聖女は苦しそうにしながらも最後の力を振り絞る。
「これだけは伝えなければなりません。神託を書き換えたのは――」
そこで言葉が途切れた。
神殿全体が大きく揺れ、初代聖女の姿が揺らぐ。
祭壇の奥から古い封印箱が現れた。
その蓋には封印紋。
封印紋がリシェルの手に反応し、金色の光を放つ。
しかし、途中で黒い霧が光を押し返した。
箱には一行だけ文字が刻まれている。
『真実を望む聖女のみ、この箱を開く』
……私が開けないということは、さっきの黒い霧が邪魔をしたってこと?
「そこまで辿り着きましたか……」
ダズエルが小さく呟く。
「神官長――」
しかしその表情は勝ち誇った笑みではない。
深い後悔の顔だった。
「王太子を救いたいなら私を信じてください」
嘘をついている人の目には見えなかった。
「殿下。あなたは昔から知っていたのでしょう」
エネラルは静かに目を閉じた。
「十年前――君は俺を救ってくれた。だからこそ、俺は、あの日からずっと君に伝えられなかったことがある……」
私は思わず息を呑んだ。




