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今日は少しだけ早起きをする。
姫が起きる前に身支度を整えて、姫の着替えの用意もしなければならない。
なぜなら、
『この後は、絶対セレブ、ゴーゴーマグナム! チャンネルは変えちゃダメなんだから!』
今週も、ゴーマグが始まるからだ。
私がゴーマグに興味を持ったのはいつ頃だっただろう。
姫のために子ども向けの番組を探していたら見付け、私も一緒に付き合って観ていたのが始まりだっただろうか。
最初は、内容も子ども向けだし、戦闘シーンは暴力的だし、あまり姫にお見せしたくないなと思っていた。
ただでさえ当時の姫は、虫や動物を水に沈めるような趣味をお持ちだったからだ。
それでも、ゴーマグは観れば観るほど魅力的なお話だった。
戦闘のすべてに意味があるし、そこには正義があった。
敵だって完全な悪者じゃなくて、彼らなりの正義を遂行しているだけのことが多くて、嫌いになれなかった。
可哀想だとすら思った。
だから、どんどん引き込まれていった。
「おはようエイリー。今日は早いね」
眠そうに目を擦りながら、パーチェ姫が起床された。
「……おはようございます」
とても、男性とは思えない。
女の子のようにふんわりとしているので、私はたまに姫が男性であるということを忘れてしまう。
でも姫は私に、キスをしたのだ。
キスを、したくなって。
それはつまり——
「エイリー? 何か顔赤くない? 風邪?」
「へ⁉︎」
頬を触ってみると少し熱かった。
「そ、そんなことはないです! 大丈夫ですから! ほら、ゴーマグ始まりますよ! 顔を洗ってきてください!」
「……えー? うん、分かったぁ……」
ふあわ、と大きなあくびをしながら洗面所へ向かうパーチェ姫。
「集中集中、ゴーマグに集中……」
小さく呟きながら、流れるCMに意識を集中させた。
「で、前回はどこまでいったんだっけ?」
すっかり外着に着替えたパーチェ姫が、きらきらとした瞳をこちらに向けてくる。
「先週は、ボンビーンのネオ四天王の一人、『試食男爵』の過去が判明したんです」
ボンビーンは、ゴーマグサイドが戦っている敵の組織の名前だ。
彼らは悪事を働いているものの、そこには理由があり、仕方なく悪事に荷担していることも多いため、一概に『悪』とは言えない。
「まさか『試食男爵』が、旧四天王の『オバタリアーノ・ワリビキマチス』と同じ『スーパーサンフレア・イースト店』の店の中で活動していたとは思いもしませんでした……」
ボンビーンの旧四天王、『オバタリアーノ・ワリビキマチス』『コウエンノミズ・ウマインジャ』『サンプル・ホシガリーノ』『ドブサライス・コゼニスキー』の四名は、みんな強力な能力者だった。
そして、悲しい過去の持ち主だった。
最初は彼らの非道な行いに腹が立ち、こんなものをパーチェ姫に観てほしくないと思っていた。
しかし彼らには彼らの正義があって、それを遂行しているだけなのだ。
こちらが正義を振りかざしても、それは相手からして見たら悪なのかもしれない。
そのことを、ゴーマグは私に教えてくれた。
「あー、そっか。『試食男爵』はスーパーの試食を食べちゃう人なんだよね。で、『オバタリアーノ・ワリビキマチス』はスーパーで割引シールが貼られるのを待つ人だったね」
パーチェ姫は少し考えてから、
「じゃあこれ、かなり伏線あったな……。そうなると、他の四天王達も過去につながりがあったんじゃない?」
「他にも? なるほど……」
姫の洞察力には毎度驚かされる。
まるで姫は、私の知らない物語を百も二百も観てきたかのように、知識が深い。
いったい、どこで見てきたというのか。
それとも、天性のものなのか……。
本当に不思議なお方だ。
それにしても、過去につながりか……。
私も思い付きを口に出してみる。
「たとえば、『サンプル・ホシガリーノ』はネオ四天王の『リストラ仮面』辺りとつながっているのでは? 職がなくなりお金がなくなった彼が、サンプルをもらうことで食いつないでいる、とか」
「うーん……サンプルって化粧品の試供品とかも多かったし、食いつなぐのは無理じゃない? それだったら『コウエンノミズ・ウマインジャ』から水の場所を教えてもらってた、っていう方が、まだ説得力が——あ」
パーチェ姫が固まった。
「ど、どうされました?」
「ネオ四天王の『リストラ仮面』と、旧四天王の『コウエンノミズ・ウマインジャ』は、同一人物なんじゃ……?」
「そ、そんな、まさか……⁉︎」
「いや、でもさ、公園の水を飲んで暮らしてたわけでしょ? その原因がリストラだとしたら——」
姫の仰る通りであれば、話がすべて繋がってくる気がする。
これだから、ゴーマグは目が離せない。
「は、始まりましたね……!」
ゴーマグのオープニングが始まる。
ぎゅっと握った拳が、汗をかいているのが分かった。
続く




