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挿絵(By みてみん)


      1


 今日は少しだけ早起きをする。

 姫が起きる前に身支度を整えて、姫の着替えの用意もしなければならない。


 なぜなら、


『この後は、絶対セレブ、ゴーゴーマグナム! チャンネルは変えちゃダメなんだから!』


 今週も、ゴーマグが始まるからだ。

 私がゴーマグに興味を持ったのはいつ頃だっただろう。

 姫のために子ども向けの番組を探していたら見付け、私も一緒に付き合って観ていたのが始まりだっただろうか。


 最初は、内容も子ども向けだし、戦闘シーンは暴力的だし、あまり姫にお見せしたくないなと思っていた。

 ただでさえ当時の姫は、虫や動物を水に沈めるような趣味をお持ちだったからだ。


 それでも、ゴーマグは観れば観るほど魅力的なお話だった。

 戦闘のすべてに意味があるし、そこには正義があった。

 敵だって完全な悪者じゃなくて、彼らなりの正義を遂行しているだけのことが多くて、嫌いになれなかった。

 可哀想だとすら思った。


 だから、どんどん引き込まれていった。


「おはようエイリー。今日は早いね」


 眠そうに目を擦りながら、パーチェ姫が起床された。


「……おはようございます」


 とても、男性とは思えない。

 女の子のようにふんわりとしているので、私はたまに姫が男性であるということを忘れてしまう。

 でも姫は私に、キスをしたのだ。

 キスを、したくなって。


 それはつまり——


「エイリー? 何か顔赤くない? 風邪?」

「へ⁉︎」


 頬を触ってみると少し熱かった。


「そ、そんなことはないです! 大丈夫ですから! ほら、ゴーマグ始まりますよ! 顔を洗ってきてください!」

「……えー? うん、分かったぁ……」


 ふあわ、と大きなあくびをしながら洗面所へ向かうパーチェ姫。


「集中集中、ゴーマグに集中……」


 小さく呟きながら、流れるCMに意識を集中させた。


「で、前回はどこまでいったんだっけ?」


 すっかり外着に着替えたパーチェ姫が、きらきらとした瞳をこちらに向けてくる。


「先週は、ボンビーンのネオ四天王の一人、『試食男爵』の過去が判明したんです」


 ボンビーンは、ゴーマグサイドが戦っている敵の組織の名前だ。

 彼らは悪事を働いているものの、そこには理由があり、仕方なく悪事に荷担していることも多いため、一概に『悪』とは言えない。


「まさか『試食男爵』が、旧四天王の『オバタリアーノ・ワリビキマチス』と同じ『スーパーサンフレア・イースト店』の店の中で活動していたとは思いもしませんでした……」


 ボンビーンの旧四天王、『オバタリアーノ・ワリビキマチス』『コウエンノミズ・ウマインジャ』『サンプル・ホシガリーノ』『ドブサライス・コゼニスキー』の四名は、みんな強力な能力者だった。

 そして、悲しい過去の持ち主だった。


 最初は彼らの非道な行いに腹が立ち、こんなものをパーチェ姫に観てほしくないと思っていた。

 しかし彼らには彼らの正義があって、それを遂行しているだけなのだ。


 こちらが正義を振りかざしても、それは相手からして見たら悪なのかもしれない。

 そのことを、ゴーマグは私に教えてくれた。


「あー、そっか。『試食男爵』はスーパーの試食を食べちゃう人なんだよね。で、『オバタリアーノ・ワリビキマチス』はスーパーで割引シールが貼られるのを待つ人だったね」


 パーチェ姫は少し考えてから、


「じゃあこれ、かなり伏線あったな……。そうなると、他の四天王達も過去につながりがあったんじゃない?」

「他にも? なるほど……」


 姫の洞察力には毎度驚かされる。

 まるで姫は、私の知らない物語を百も二百も観てきたかのように、知識が深い。


 いったい、どこで見てきたというのか。

 それとも、天性のものなのか……。

 本当に不思議なお方だ。


 それにしても、過去につながりか……。

 私も思い付きを口に出してみる。


「たとえば、『サンプル・ホシガリーノ』はネオ四天王の『リストラ仮面』辺りとつながっているのでは? 職がなくなりお金がなくなった彼が、サンプルをもらうことで食いつないでいる、とか」

「うーん……サンプルって化粧品の試供品とかも多かったし、食いつなぐのは無理じゃない? それだったら『コウエンノミズ・ウマインジャ』から水の場所を教えてもらってた、っていう方が、まだ説得力が——あ」


 パーチェ姫が固まった。


「ど、どうされました?」

「ネオ四天王の『リストラ仮面』と、旧四天王の『コウエンノミズ・ウマインジャ』は、同一人物なんじゃ……?」

「そ、そんな、まさか……⁉︎」

「いや、でもさ、公園の水を飲んで暮らしてたわけでしょ? その原因がリストラだとしたら——」


 姫の仰る通りであれば、話がすべて繋がってくる気がする。

 これだから、ゴーマグは目が離せない。


「は、始まりましたね……!」


 ゴーマグのオープニングが始まる。

 ぎゅっと握った拳が、汗をかいているのが分かった。


続く

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