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挿絵(By みてみん)


      20


 ビーバッグの悲鳴はすぐにしなくなった。

 それでも、攻撃を続けた。


 動かなくなったヘドロの塊を睨み付けながら、二人でいつまでも歯車を回し続けた。

 そして、今度こそ完全に魔力を失って、エイリーと二人してヘドロの海に倒れこむ。


「私のせいだ……」


 大変なことをしてしまった。

 俺がエレナを無理矢理戦わせてしまったから、こんなことになってしまったんだ。

 そもそも俺が安請け合いで『助ける』と言ったから、こんなことになってしまったんだ。


 もう、取り返しが付かない。

 どうやったって償えない。

 震えが止まらない。

 視界が白くなっていく——


「こくおうのおねーちゃん、しんじゃいや!」


 いきなり聞こえた声に目を向けると、一人の女の子がエレナに駆け寄っていた。


「あれ、あの子って——」


 大男に蹴られて、顔をケガした女の子か……?

 何でここに——


「しっかりして! しんじゃだめ!」


 バリバリ、バリバリ、と数回、青白い電撃が飛ぶ。


「おねがい! しんじゃだめ! しんじゃだめ! しんじゃだめぇ!」


 どれだけ電気を与えても、エレナは動かない。

 ぴくりとも、動かない。


「おい、あんな小さな子一人にやらせてていいのかよ!」


 遠くから、一人の観光客が駆け寄ってきた。


「俺はアクアだから、ケガとかは治してやれなくて申し訳ないが……」


 彼はそう言いながらエレナの手を取って、そしてその場に倒れこんだ。

 魔力を分け与えたらしい。


「私達も分けましょ!」

「そうだ、魔力さえ無理矢理入れちまえば、生存確率は上がる!」

「行こう! 行こう!」

「ホーリー魔法の出番だな!」

「行くぞ!」


 周囲にいた国民や観光客が、ヘドロを踏みながらぞろぞろとエレナに駆け寄っていく。

 その中で、


「あの子がああなったのは、君達のせいじゃないぞ。君達もよく頑張ったな!」


 と俺達に声をかけてくれる人もいた。


「ほら、アンタ達も立てる? 行きましょ!」


 高そうな服に身を包んだおばちゃんが、俺達に少し魔力を分け与えてくれた。

 彼女は自分の服が汚れることなんて気にせずに、ざぶざぶとヘドロの中を進んでいく。


「おねーちゃん、ほら、こくおうのおねーちゃん!」


 ばり、ばり、と威力が弱まったものの、女の子は必死にエレナに放電を繰り返している。


 ホーリーの人達のおかげで、エレナの血は完全に止まっていた。

 そしてエレナの回りには、自分の魔力を分け与え尽くしてへとへとになった人達が、ヘドロまみれになってたくさん倒れこんでいた。


「ほら、国王頑張りな!」

「起きろ、目ぇ覚ませ!」

「こんな若いんだから死んだらもったいないぞ!」

「うちの国のやる気ない国王よりも、あんたの方がよっぽど頑張ってるわ!」

「あんた確かに弱いけど、この国のために体張って頑張ってくれてんだろ!」

「エレナ姫!」


 周囲の人達が、口々にエレナに声をかける。

 中には、泣いてる人もいて、俺とエイリーも泣いていた。


「——ん、」


 エレナの眉が、少し動いた。

 周囲の人達が、いっせいに静かになる。

 エレナは周囲の人を見て、自分のなくなった腕を見て、


「……えへへ」


 照れ臭そうに笑った。


「国王……生還しちゃいました」


 そしてエレナは、残っている手を、いつの間にか晴れ渡った青い空に向けて伸ばし、言った。


「やっぱり、セーレットの空はきれいだなぁ」


 観衆が、大歓声をあげた。


 いつまでも、エレナコールが鳴りやむことはなかった。


続く

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