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挿絵(By みてみん)


      12


「起きなよ、おじさん」


 別に起こす必要なんてない。

 気を失っている間に殺してしまえば、それで終わる話だ。


 でも、それじゃあ俺もエイリーも、先にいけない。

 今ここで正々堂々やって勝てないようじゃ、意味がない。


 この先の戦いに、勝てるわけがない。


「甘ちゃんだなぁおい……」


 大男はよろめきながら立ち上がる。


「あのでかいアームで俺を潰せば、勝ちは見えてただろ」

「動かない相手を倒しても仕方がないでしょう。ねぇ? エイリー」

「えぇ、あなたをちゃんと倒して、私達は次へいきます」

「なるほどね」


 大男はびゅ、っと拳を振るう。

 その拳を、鋭い風が包む。


「そういう、人を食った余裕……本当にあの男にそっくりだぜ」


 あの男——


 さっきは必死だったから流してたけど、コイツ、リベロ王の知り合いなのか?


「ねぇ、さっきから気になるんだけど、あなたは父上を知っているの?」

「さぁな。俺をぶっ倒して無理矢理聞いてみたらどうだ? ——っらぁぁああ!」


 大砲が打ち込まれるように、大男がぶっ飛んでくる。

 まばたきをした瞬間、大男の顔が目の前にあった。

 ぶつかる直前の肩を——


「——『絶望の終末《パンターノ・シン・ファンド》【着(トッピング)】』!」


 泥のアームでがっちりと掴む。


「力づくとか好きじゃないけどっ……」


 ぐっ、とアームに力を入れる。


「——たまにはっ……悪くないかもね!」


 そのまま地面に叩き付けようと力を込める。

 だけど踏ん張られたから、逆に思いっきり上に投げた。


「はぁっ!」


 空に向けて挙げたアームを、今度は地面に叩き付ける。

 その反動で、大男を追いかけるように一気に上昇する。


 心臓がひゅっと浮かび上がる感覚と、頬を涼しい風が切っていく感覚。

 遠くまで見える青い海と白い建物がきれいだ。


 キャンディを口から出すと、アームはさらさらと輝いて消えていった。

 重力に従って、大男と共にゆっくりと自然落下していく。

 次に舐めるのは——


「『——操獣機巧(ベースティア・フェローチェ)【着(トッピング)】』!」


 がちゃがちゃがちゃ、と全身に力がみなぎっていく。

 勇気が、みなぎっていく。


「お先に——どうぞ!」


 空中で身を翻して、大きな鎌を振るうように——


「——うぐっ!」


 重力と歯車の力が合わさった脚の一撃を、大男の腹に入れる。

 どぼん、と確かに入った音がして、大男は地面に吸い込まれるように、俺より先に地面に到達した。

 地面に叩き付けられて、泥が飛び散る。


 それを確認してから再び泥のアームに切り替えて、重力に従って大男目がけて真っ直ぐ振り下ろし——


「——いやぁ、悪かったよ」


 俺のアームの攻撃を拳と風で受けて拮抗しながら、大男は低い声で静かに唸った。


「大人よりガキが強いだなんて、そんなバカな話あるわけないと思ってた。だけどよ、お前と戦って改めて分かった。子どもってやつは容赦がねぇな——」


 ぐぐぐ、と力を入れてくる。


「——なら、こっちも容赦なく潰していかねぇとなぁ!」


 突然、大男は膝の力を抜いて後ろに倒れ込んだ。


「う、うわっ——」


 後ろにぶん投げられる。

 空中で身動きが取れない。

 逆さまに目に映る大男の足元に風が展開する。

 血走ったその目が一瞬で目の前に迫って——


「ぶっ飛べ!」


 衝撃に身構える。

 全身が砕かれるような衝撃が——こなかった。


「——エイリー!」


 グルにくわえられた俺は、乱暴に背中に乗せられる。


「ありがとう! 助かった!」

「まだ油断はできませんよ!」


 空振りをした大男から距離を取って、再び正面に向き直る。


「ちょこまか動き回るんじゃねぇ!」


 大男は足元の風を器用に操って体勢を整える。


「上等だ——『操獣機巧(ベースティア・フェローチェ)【着(トッピング)】』!」



 真っ正面から大男と殴り合う形になって——


「——ぉお⁉︎」


 消えた——と、大男は思っただろう。


『困った探偵鳥(スピア・パッパガッロ)【着(トッピング)】』——


 カリーノからコピーさせてもらった、オウムの能力。

 一瞬しか消えられないけど——


「可愛い女の子から目を反らすなんて、男としてどうなの?」


 コイツの頭上まで飛べさえすれば、それでいい!


「——『絶望の終末《パンターノ・シン・ファンド》【着(トッピング)】』!」


 空高くからの重加速と、泥のアームの一撃が——


「お前、いつの間に上に——」

「ひみつ」


 ——轟音と共に、大男の脳天に叩き込まれた。


続く

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