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「起きなよ、おじさん」
別に起こす必要なんてない。
気を失っている間に殺してしまえば、それで終わる話だ。
でも、それじゃあ俺もエイリーも、先にいけない。
今ここで正々堂々やって勝てないようじゃ、意味がない。
この先の戦いに、勝てるわけがない。
「甘ちゃんだなぁおい……」
大男はよろめきながら立ち上がる。
「あのでかいアームで俺を潰せば、勝ちは見えてただろ」
「動かない相手を倒しても仕方がないでしょう。ねぇ? エイリー」
「えぇ、あなたをちゃんと倒して、私達は次へいきます」
「なるほどね」
大男はびゅ、っと拳を振るう。
その拳を、鋭い風が包む。
「そういう、人を食った余裕……本当にあの男にそっくりだぜ」
あの男——
さっきは必死だったから流してたけど、コイツ、リベロ王の知り合いなのか?
「ねぇ、さっきから気になるんだけど、あなたは父上を知っているの?」
「さぁな。俺をぶっ倒して無理矢理聞いてみたらどうだ? ——っらぁぁああ!」
大砲が打ち込まれるように、大男がぶっ飛んでくる。
まばたきをした瞬間、大男の顔が目の前にあった。
ぶつかる直前の肩を——
「——『絶望の終末【着】』!」
泥のアームでがっちりと掴む。
「力づくとか好きじゃないけどっ……」
ぐっ、とアームに力を入れる。
「——たまにはっ……悪くないかもね!」
そのまま地面に叩き付けようと力を込める。
だけど踏ん張られたから、逆に思いっきり上に投げた。
「はぁっ!」
空に向けて挙げたアームを、今度は地面に叩き付ける。
その反動で、大男を追いかけるように一気に上昇する。
心臓がひゅっと浮かび上がる感覚と、頬を涼しい風が切っていく感覚。
遠くまで見える青い海と白い建物がきれいだ。
キャンディを口から出すと、アームはさらさらと輝いて消えていった。
重力に従って、大男と共にゆっくりと自然落下していく。
次に舐めるのは——
「『——操獣機巧【着】』!」
がちゃがちゃがちゃ、と全身に力がみなぎっていく。
勇気が、みなぎっていく。
「お先に——どうぞ!」
空中で身を翻して、大きな鎌を振るうように——
「——うぐっ!」
重力と歯車の力が合わさった脚の一撃を、大男の腹に入れる。
どぼん、と確かに入った音がして、大男は地面に吸い込まれるように、俺より先に地面に到達した。
地面に叩き付けられて、泥が飛び散る。
それを確認してから再び泥のアームに切り替えて、重力に従って大男目がけて真っ直ぐ振り下ろし——
「——いやぁ、悪かったよ」
俺のアームの攻撃を拳と風で受けて拮抗しながら、大男は低い声で静かに唸った。
「大人よりガキが強いだなんて、そんなバカな話あるわけないと思ってた。だけどよ、お前と戦って改めて分かった。子どもってやつは容赦がねぇな——」
ぐぐぐ、と力を入れてくる。
「——なら、こっちも容赦なく潰していかねぇとなぁ!」
突然、大男は膝の力を抜いて後ろに倒れ込んだ。
「う、うわっ——」
後ろにぶん投げられる。
空中で身動きが取れない。
逆さまに目に映る大男の足元に風が展開する。
血走ったその目が一瞬で目の前に迫って——
「ぶっ飛べ!」
衝撃に身構える。
全身が砕かれるような衝撃が——こなかった。
「——エイリー!」
グルにくわえられた俺は、乱暴に背中に乗せられる。
「ありがとう! 助かった!」
「まだ油断はできませんよ!」
空振りをした大男から距離を取って、再び正面に向き直る。
「ちょこまか動き回るんじゃねぇ!」
大男は足元の風を器用に操って体勢を整える。
「上等だ——『操獣機巧【着】』!」
真っ正面から大男と殴り合う形になって——
「——ぉお⁉︎」
消えた——と、大男は思っただろう。
『困った探偵鳥【着】』——
カリーノからコピーさせてもらった、オウムの能力。
一瞬しか消えられないけど——
「可愛い女の子から目を反らすなんて、男としてどうなの?」
コイツの頭上まで飛べさえすれば、それでいい!
「——『絶望の終末【着】』!」
空高くからの重加速と、泥のアームの一撃が——
「お前、いつの間に上に——」
「ひみつ」
——轟音と共に、大男の脳天に叩き込まれた。
続く




