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「全員……霊獣級?」
リベロ王が『お前も気付いてると思うが』とか言ってたのは、これのことなのか?
こっちは俺とエイリーの二人。
そして相手は十二人。
それで、助けなしで勝てと……?
そんなのめちゃくちゃだ。
いや、仮に国王夫妻の助けがあったとしても、こっちは霊獣級が四人で、向こうは霊獣級が十二人いるのだ。
単純に、数で負けている。
それに、仮に相手が妖精級だったとしても——
※
昨日、エイリーと合流してお城に帰ってる途中のこと。
ふと、ある疑問が沸き上がった。
「妖精級と霊獣級って、どれぐらい力に差があるの?」
霊獣級が世界の上位五%の上澄み、とか言われても、例えば霊獣級の強さが五で、妖精級の強さが三ぐらいだとする。
その場合、二人で来られたら霊獣級能力者は数で負けてしまうことになる。
それが急に不安になった。
「素晴らしい気付きです、姫」
エイリーは真面目な顔をして話を続ける。
「結論、一階級上がることに十倍強くなると言われています」
「十か……」
そう考えると、妖精級が十人集まって、ようやく俺と互角ぐらいってことか。
なら、町で絡まれて負ける、なんてことはまずなさそうだな。
「はい。妖精級を一とすると、霊獣級が十、精霊級が百、精霊王級が千とされています」
「ということは、この世界で最強とされてる……属性神王級だっけ? その人達は万ってこと?」
何か、あんま大したことないな……。
だって、精霊王級が十人、精霊級が百人、そして俺クラスの能力者でも千人でゴリ押せば勝てちゃうんでしょ?
まぁ確かに圧倒的な戦力差ではあるけど、そんな神として恐れるような相手じゃないような——
「——いえ、イッケイですね」
「え?」
何の話?
イッケイ? 誰?
——と訊こうとして、気付いた。
一京?
一、十、百、千、万、十万、百万、千万、一億、十億、百億、千億、一兆、十兆、百兆、千兆——京。
一京?
俺が『やったぁ、俺は十の力を持っているから、世界の上位5%だ』とか喜んでる横で、一京?
精霊王級の力が千だとして、一兆人いてようやく互角?
もう、笑うしかないな。
それは、本当に"神"そのものといっても過言ではないだろう。
「とはいえ、十倍ずつ強くなっていくと言われているそれは、世界一般的に言われているざっくりとした指標です」
エイリーは続ける。
「例え話ですが、妖精級の方でも一じゃなくて三ぐらいの力を持った方がいらっしゃいます。そして霊獣級の方でも十じゃなくて二十ぐらいの力を持った方がいらっしゃいます。そしてその逆に、数値が低い方もいらっしゃいます」
すべて感覚の話ですが、とエイリーは付け加えた。
「それに、以前申し上げた通り、大人より子どもの方が強い傾向にあったり、でも知識で勝る大人の方が強かったり、能力同士の単純な相性、その日のコンディション、戦法……そういったありとあらゆる要素で、数値はいくらでも覆ります」
まぁそりゃそうだよな。
数値で決められたRPGじゃなくて、これは、人間と人間の、生身同士のバトルなのだ。
乱数なんて、きっと無限に発生するのだ。
「とはいえ、基本的には妖精級が一、霊獣級が十、精霊級が百、精霊王級が千という考え方を念頭に、無理な戦闘は避けるべきかと思います」
※
——と、言っていたのに。
何で今、俺達の目の前には霊獣級の能力者が十二人もいる?
そして、何でそれを霊獣級二人で対処しなきゃならないんだ?
男達を見る。
あっちはあっちで困惑しているようだ。
いや、何でお前達が困惑するんだよ、と思ったけど、考えてみたら困惑する気持ちも分かる気がする。
きっとヤツらは、リベロ王にメタを張ってこの城に攻め込んできたのだろう。
攻め込んできた理由は分からないけど、仮に金だと仮定する。
この城から金品を奪うために、数の暴力で国王夫妻を制圧しようと試みる。
その結果、どうやってやったのか分からないけど、霊獣級の能力者を十二人も集めた。
そして、リベロ王とプリート王妃の能力を調べて、そこにメタを張ってきた。
ところが急に想定外の二人が現れて戦うことになった——
そう考えれば、困惑してるのも理解できる。
そしてこれは、チャンスと見ていいだろう。
頭がフル回転している。
イジめられっ子の俺が、今までどれだけ機転を利かせて危機的状況を乗り越えてきたと思っているんだ。
こういう時に冷静でいられるというのは、もしかするとこの世界の適性といえるのかもしれない。
「なぁ、」
男達の一人が手を挙げる。
さっきからあの一番大きな男しか喋ってないところから見ると、アイツがリーダーなのだろう。
「ちょっと、話をさせてくれないか」
話?
あれだけ盛大に城を壊しておいて、下手したら俺達死んでたかもしれないのに、話?
何を馬鹿なことを言ってるんだコイツは。
そんなの、最初から選択肢に——
「その話の着地点によっては、無駄な戦闘を回避できるのでしょうか?」
よく通る声で、エイリーは遠くにいる男達に呼び掛ける。
中身は高校生の俺より、遥かに冷静で大人だった。
「そうだな。充分あり得る」
リーダーは、やけに冷静に言葉を返してくる。
ただ考えなしに突っ込んできた盗賊集団じゃないのか……?
「別に複雑な話じゃねぇんだ。この城を置いて、出ていってほしい。そして、この国を俺達が治めたい」
は……?
いや、確かに複雑じゃないけど『はい分かりました』ってなるわけないだろ……。
「メイドさんよ、お前はもう分かってるだろ? 俺達は十二人が全員、霊獣級相当の力がある。お前達二人じゃ適うわけがない。後ろで見学してる二人を入れても適うわけがないって、分かってるだろ?」
「それはあくまでも数値上の話ですので。戦況はいくらでも変わりますし、変えられます」
そうかよ、とリーダーはため息交じりに吐き捨てた。
「じゃあ……しょうがねぇな」
リーダーが手を挙げると同時に、他の男達が身構えた。
そして——
「ネズミ……?」
土の塊が、ネズミの形をしている。
コイツら、全員がサモンなのか……?
「——行け!」
リーダーの合図で、ネズミが走り出す。
俺とエイリーに向けて、一直線に——
続く




