7.空白の真実
月子(田村さん)が帰ってきたが、なぜ長い間学校を休んでいたのか、理由を聞きそびれた優希。次の日の朝、電車で聞こうと考える。
田村さんが僕の家に来た次の日の朝。今日もいつもと同じ電車に乗った。
電車に乗って、僕はすぐに田村さんの姿を探した。良かった。いた。田村さんは笑顔でおはようと声を掛けてくれた。
「おはよう優希君」
「おはよう、田村さん」
「優希君は久しぶりの学校ね」
サボってたなんて言えない。田村さんの前でそんな格好つかないこと言いたくない。
「はは、風邪が早めに治って良かったよ……」
「そうね」
ああ、幸せな時間だ。……って違うだろ! 僕は、親戚の葬式に行っただけなのに、なぜあんなに長い間学校を休んだのか聞くんだった。忘れるところだった。
「ところで田村さん、親戚の葬式に行っただけで結構な間学校を休んでいたけど、何かトラブルでもあったのかい?」
「あら、私、優希君に親戚の葬式行っていること話したかしら」
しまった。そういえば、田村さんの口から直接そのことは聞いていなかった。盗み聞きしたんだった。とりあえず、誤魔化して話を進めたい。
「え、え? 昨日家にプリント届けに来てくれたときに話してなかったっけ?」
「あら、私いつの間に……」
「まあそんなことより質問……」
「あら、そんなに気になるの? そんなたいしたことじゃないわよ」
「構わないさ」
「ただ、親戚の葬式の交通手段は飛行機なのだけれど、台風が来て帰りの飛行機が飛ばなかったのよ」
「台風? 台風なんか来てた……」
僕は思い出した。田村さんが学校を休んだ初日は、雨の日だったことを。
「……来てたね。そういうことだったのか」
「まあ確かに、台風はここまで来る前に進路が外れたものね」
「ところで、親戚の葬式はどこでやったんだい?」
「沖縄県よ」
まじか。親戚凄いとこに住んでるな。僕はとても驚いた。
「もしかしておみやげを期待してるのかしら?」
「え!? そんなことないよ、ただ気になっただけさ」
「ふふ、本当かしら?」
「本当だよ〜」
なんだ。台風が来て飛行機が飛ばなかっただけなのか。もっとニュースを見ておけばよかった。いやー、解決してすっきりした!
こうして、楽しく会話をしながら、今日も学校へ向かうのだった。
読んでいただきありがとうございます。皆様はどのような理由をお考えだったでしょうか?私と同じ方がいたら驚きですね。
作中で優希は、月子(田村さん)が学校を休んでいた日を「長い間」と思っています。実際には三日〜六日間休んでいただけなんですけどね。
次回もよろしくお願いします。感想も待っています。