表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋は罪悪【ノベル大賞最終落選作】  作者: 衍香 壮
第5章「人はカイライ」
48/54

第47話「恋恋」

「レイプのことを言っても、水卜は歯牙にもかけなかった。あの不気味な面で『そうなんですか』で終わり。たしかに〝復讐〟なんてものに正当性はない。それでも経緯次第で、いくらでも免罪になる可能性はある」


「だったら、それを貫いていけば……」


「いいのか?」


「なにがですか?」


「お前は犯罪者の息子になるってことだぞ?」


「……はい」


「一生背負っていく業だ。簡単に返事をしていい問題じゃない」


「分かってます」


「本当に?」


「分かってますよ。でも、俺だけ安全圏にいるわけにいかないじゃないですか」


 心配そうな面持ちに、苦笑を浮かべる。どうすれば彼を安心させることができるのか、俺には分からなかった。


「ここまできたら真実を明らかにしましょう。誰も救われなくても。俺達家族が後ろ指を差されても、一夏さんが苦しんでも……それが一番良いような気がするんです。

 俺は早く大人になりたい。一夏さんを支えていけるような大人になりたいんです」


「一夏を支えるのは俺だ」


 額を軽く小突かれる。僅かな痛みに目を見開けば、柔らかく笑う彼がいた。


「痛いです」


「そんなに強くやってない」


「真実は一夏さんの罪を重くしません。心を救えるかは分かりません。きっと父が話していた真実は、一夏さんを苦しめると思います。でも、彼女を罪から引き揚げることは出来る。

 俺は一夏さんに前を向いて歩いて欲しい。明るいフリじゃなくて、俺みたいに見てみぬフリをするんじゃなくて、ちゃんと……ちゃんと前を向いて、未来を見据えて生きて欲しい。俺が出来たんだ。強い一夏さんになら、きっと出来ます」


「俺もアイツの時間(とき)を進めたい。それには罪悪感が付き纏うけど……それがきっと俺の責任だから」


「はい。じゃあ俺達も進みましょう。一夏さんを助ける為に……でも今までのようにじゃなくて前向きな気持ちで」


「……本当にいい子に育ったな。クソ親父の血が入ってるとは思えん」


「俺がこんな風になれたのは、一夏さんのお陰ですよ。彼女が貸してくれた部屋で沢山の本を読んで、色んな価値観を学んだんです。そして、考える時間を沢山くれました」


「そうか」


 彼女は復讐の為に俺に近付いたのだと言っていた。けれども彼女が、俺という人間と向き合ってくれたからこそ、いい方向に向かうことが出来たんだと思う。

 ならば、彼女の未来も明るいものがいい。ヒーローにはヒーローらしく、抜けるような青空のもとに居て欲しいから。










「そういえば二人っていくつなんですか?」


 家路を辿る車内で問い掛ける。彼は暫し逡巡してから口を開いた。


「一夏は三十四で俺は三十八だな。いや、三十九か?」


「あ、そっか。一夏さんは父さんと同級生だから同い年……って新垣さん三十八なんですか!? もう四〇じゃないですか!?」


「うるさいな。なんだよ」


「全然見えないです! いってても三十五ぐらいかと思ってました」


「それじゃ一夏と変わらないだろ」


「一夏さんはいってても三〇くらいかと思ってました。そもそも二十五くらいかと思ってました」


「二十五!」


 大口を開けてゲラゲラ笑い出した所為で車が左右に揺れる。


「あ、安全運転でお願いします!」


「お前天然かよ。あー、笑った。昔は老け顔って言われてたアイツも今じゃ童顔か」


「だ、だってハードな服着てるから……」


「確かに三〇越してるやつがする恰好じゃないよな。露出度高いし」


「ですよね!」


「まぁ、似合ってるけど」


「ですよね」


 帰りの車内は意外と明るかった。久しく笑っていなかった俺は、彼と話す度に笑声を上げていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ