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恋は罪悪【ノベル大賞最終落選作】  作者: 衍香 壮
第5章「人はカイライ」
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第41話「恋敵」

 *


「なんなんだあのオッサンは……」


「嫌がらせに決まってんだろ」


「新垣さん」


「アイツがパトカーで送らせるのは嫌がらせだ。そして暗黙のメッセージだよ『早く話せ』ってな」


「早く話すも何も俺は事実を話してるだけです!」


「それを俺に言われても困るんだよ。ちょっと時間あるか?」


「ちょっとどころか、たっぷりありますよ。夏休みなんで」


「学生はいいな。長期の休みがあって……一夏の時間(とき)は、きっと夏休み前で止まってるんだろうけど」


 呟きながら歩む彼の後を付いて行く。暫く歩んでいると車が止められていた。


「乗れ。店じゃ話せないやつだ」


「分かりました」


 俺が乗ると同時に動き出す。車を運転する横顔まで絵になるものだから、同じ男として嫉妬を覚えた。

 平凡な自身と違って、涼し気で整った顔立ちをしているのだ。悔しく思っても仕方ないだろう。


「新垣さんは、一夏さんの身代りになろうとするんだと思ってました」


「俺だってなれるものならなりたかったよ。でもアイツを迎えに行く奴がいないと可哀想だろ。あの刑事相手だと、どこまで欺けるか分かんないけどな」


「欺くって……新垣さんは何もしてないじゃないですか」


「昔、浅沼……お前の父親を病院送りにした。どこから足がつくか分からないし、お前が監禁されてるのを知ってて黙っていた。そもそも、この復讐の話を知ってたんだ。余罪は、いくつもある」


 黙り込む俺に、何か勘違いしたらしい彼が舌打ちをする。


「俺は謝らないぞ。アイツがしたことは犯罪だ。病院送りにしたことは絶対謝らないからな」


「それに関しては何も言うつもりはありません」


「は?」


「俺には関係ないことですし、むしろ好きな人を痛めつけた男が父親で憤ってます。制裁を下してくださって礼を言いたいくらいです」


「へぇ、意外だな」


「意外でしたか?」


「ああ。うじうじ、じめじめ、べそ掻くだけのクソガキだと思ってたからな」


「なんですかその湿ったイメージ」


「俺の嫌いなタイプ」


「俺も新垣さんみたいな人は嫌いです」


「馬が合うな。俺も一夏に近付く男は死ぬほど大嫌いだ」


「俺だって一夏さんに大切に思われている男なんて嫌いです」


「逃げてただけのガキは卒業したってわけか」


 独る彼が車通りの少ない道を選んで行く。過ぎ去る景色は、どこも変わらず、都会の街そのものだった。


「スマホ、サンキュ。ちゃんと礼言えてなかったからな」


「そんなことは全然」


「一夏に不利な証言をしないでくれてありがとう」


「一夏さんは捕まるようなことをしてないんだから当たり前です。アレは俺が自分から言い出したんですから」


「そうか」


 互いに緘黙したことで静寂が落ちる。ずっと言うべきか言わざるべきか悩んでいたことも、今なら言える気がした。

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