第34話「罪業」
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「することがないなら歌を作るなり文章書いてみたら? ブログとかさ」
「どうして?」
「今は、それで金が稼げる時代だろ? ボカロで有名になれば作曲の面で稼げるし、ブログ書いて出版した人もいるしな」
「でも……」
「それにネットの世界ならリアルより簡単にサヨナラ出来るだろ? 間違ってもいいんだしやってみない?」
彼は私に対し「外に出ろ」と言うことは無かった。曖昧な関係のまま、唇だけが重なっていく。いつしかそれは彼に対する〝謝礼〟のようになっていた。
見よう見まねでブログを作るも、書き込むことがないまま日々が過ぎていく。コメントも付かない為、飽き性の私は、すぐに飽いた。けれどもブログをカスタマイズするのは楽しくて、試行錯誤を繰り返してはネット上を転々としていた。
「え、これ自分で作ったの? 凄いな」
「うん」
「書き込まないのに?」
「書き込まないけど」
「ふっ、一夏にはWebデザインとか向いてんのかもな」
彼の一言は、いつも私の人生を左右してきた。褒めて貰えるのが嬉しくて、やっていたことが今は仕事になっている。同じ要領で作曲をしてみれば存外向いていた。
歌詞付けが苦手な私は曲作りのみに没頭し、名無しの曲を量産していく。それを見ていた伊澄は笑いながら「歌詞も書けばいいのに」と言っていた。
それを仕事に変え、住居も変えて過ごしていた時。三〇歳の私に同窓会の知らせが届く。ハガキの裏には参加、不参加の欄があり、どちらかに丸を付けて出せとのことだった。
コレが届いたということは私のことを忘れていないということになる。けれども、平然と送りつけてくる様に怒りが湧いた。
――私にあんなことをしておいて……!
直接的な原因は浅沼が企てただろうレイプだが、私の心を日々擦り減らしていたのは他でもないクラスメートである。
もしかしたら深い意味などないのかもしれない。頭の片隅でそう考えながらも、心の奥底では、どす黒い感情が渦巻いていた。
殺してやりたい。私が未来を奪われたように、あいつらの未来も奪ってやりたい。ああいう人間は生きているだけで罪悪なのだ。会場に乗り込んで滅多刺しにしてやろうか。否、それでは全員殺せない。そもそも何故、アイツらを殺した私が捕まらなければいけないのだ。
――悪いのは全てアイツらなのに!
憤怒をペン先に注ぎながら〝参加〟に丸を付ける。人の人生を踏み躙った奴らの姿を見てやろうと思ったのだ。
――私より幸せだったら殺してやる。
怒りに身を任せたまま。




