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準備

本日二本目です。

翌朝、幸いベッドはフカフカだったのでぐっすり寝ることができた。

起き上がってドアを見ると、昨日あった魔法陣はなく、普通のドアになっていた。


ドアを開けると、長い廊下にでる。

ただし城の端っこのようだ。だから窓が小さかったのか。


と、むこうからメイドさんが歩いてくる。

というかメイド長のアリスさんだ。

アリスさんは先々代王の時からこの城に勤めているエルフで、年齢は知らない。

うん、知らない。


「おはようございます。ヴィクター様。朝食をお持ちしました。」

「ありがとう、アリスさん。おっ、美味そうだ。」


スクランブルエッグとトースト。それにトマトジュースとコーンスープ。

ザ・モーニングって感じ。


「勇者様の人数が多く、手の空いているものが居なかったため、私がお作りいたしました。お口に合うといいのですが。」


アリスさんの飯は美味い。

前に立食パーティで食べさせてもらったが、今まで食べた中で間違いなく1番美味しかった。


「それと、ハルート王より伝言です。本日2時より教育係の紹介を行うので、正装で謁見の間へお願いします。」

「分かりました。2時ですね。」

「では、ごゆっくり。」


部屋に戻り、朝食が乗ったトレーをテーブルに置いて、食べ始めた。

やっぱり美味かった。


それから一旦城下町に戻って、勇者とダンジョンに潜るときに、必要になりそうなポーションや薬草などを買い占めた。

マジックストレージにも入ってはいるが、最上級の〈聖水〉や〈神薬〉などしか入っていなかった。傷に見合わないほどの回復を一度に受けると、体に負担がかかり、気絶してしまったりするからだ。

そのあと、冒険者ギルドに行き顔馴染みへのあいさつと、ギルド長のメネウスさんにしばらく勇者に同行することを伝えた。


「…というわけで、しばらくの間はギルドの依頼とかできなくなります。」

「ふむ、なるほどな。分かった。頑張って来い。」


客間で、ひげを触りながら、話を聞いている大男こそ、アルメギア王国冒険者ギルドのギルド長、メネウス・フェルラーゼだ。

筋骨隆々、服を着ていてもわかるマッチョマン。

〈威圧Ⅳ〉を常時使ってるんじゃないかってレベル。


「というかヴィクター、人に教えたことあるのか?」


えーとね。

ないね。うん。


「ないですね。」

「そんなんで大丈夫か?なんならわしが教えてやってもいいが、今はギルド長の身だしな。冒険者時代はもっと身軽だった。」

「とりあえず自分なりに頑張ってみますよ。」

「おう、時々顔出せよ。」


俺は冒険者ギルドをあとにした。


正装と言っていたが、要するにいつもの格好でいいってことだよな。

いい機会だし、装備の整理でもしようか。


上は、〈俊敏Ⅳ〉が付与された黒いコート。前は閉じよう。ビラビラして邪魔だし。

下はブラックパンツのフィットタイプ。

腰にはエンシェントダガー。

このダガーは魔物からとれる素材の中ではトップクラスの硬さを誇るエンシェントドラゴンのうろこを使っている。

戦闘スタイルは基本的にはエンシェントダガーの二刀流で、マジックストレージから大物を取り出して戦ったりもする。

だから軽量な装備がいい。というか鎧とか俺の防御力だったら要らないし。

靴も〈俊敏Ⅳ〉が装備されたブーツで、なるべくスニーカーに近いものを買った。


よし、整理終了。

じゃあ城に向かうか。


城に到着し、謁見の間へ通される。

謁見の間は本来は外交などでしか使用しないもので、入るのはスタンピードを撃退したとき以来だ。

そこには、俺以外の教育係になった4人と、ハルート王、それと先代のルシアス王がいた。

勇者はまだ来ていないようだ。


「ほお、あんたが最後の教育係か。」


いかにも冒険者といった感じの大剣を持った男が話しかけてくる。

はっきり言って、教育係同士で仲良くするつもりはない。

社交辞令だ。


「そうだ、よろしく頼む。」

「強そうな格好してるじゃん。冒険者?」

「ああ。冒険者だ。」

「へー、ランクは?」

「…言わんよ。」


なので、不必要な情報は公開しない方針でいこう。


「けっ、つれねーな。」

「とりあえず全員集まったところで自己紹介でもしようではないか。」


白いひげを生やしたドワーフが話し始める。

細かい所は聞き流すけど、一応鑑定を使ってみた。


さっきの大剣がマーカス。29歳。

話し始めたドワーフがブレン。魔術師。55歳。

元盗賊の首領の娘もいた。カトレア。18歳。

女剣士のゾフィア。アルメギア王国騎士団副団長だそうだ。26歳


若いな…。

俺が言えたことではないんだが。

この世界は前衛は20代後半がピークで、逆に魔術系は、研究や鍛錬によって強化されるので、老人のほうが魔術師としては強い。


「次、お前。」


マーカスが自己紹介しろと顎で指してくる。

しなきゃダメな流れか。


「冒険者のヴィクターです。装備は2本の短剣で、基本前衛です。よろしくお願いします。」

「あんた、年いくつ?」


カトレアが年齢を聞いてくる。

誤魔化してもいいけど、面倒になりそうだし正直に答えるか。


「18歳です。」

「じゃあ同い年だね!やったあ!」


自分が1番下ではないから喜んでる。

まあいいんだけど。


「君が任せられるところは大変だろうが、世界のために頑張ってくれ。何かあれば何でも聞いてくれよ。」


ゾフィアさんは副団長なだけあって、しっかりしてる。

あれだ、カッコいい系女子だ。


「ヴィクター、足引っ張んなよ。」


マーカスが見下した感じに言ってくるが、そのままお返しするよ。


「ハハハ、何にせよ変な奴じゃないことは王国お墨付きじゃよ。ヴィクター、お主も相当強いんじゃろう?聞いたことあるぞ。お主の名前。」


ブレンのおっさんは、俺の名前を知っているようだ。

いままで俺の功績を公表したことはないから、知ってるのは一部の人だけなはずなんだけどな。


「えー、みなさん、お集まりいただきありがとうございます。事前にお伝えしていた通り、これから3ヶ月、みなさんには勇者の教育を担当していただきたいと思います。」


今まで黙っていたハルートが口を開く。

後ろにいる先代王ルシアスは、あくまで補佐的な立ち位置なのか、静かに聞いている。


「今からみなさんには一度部屋を出てもらって、勇者の方々に発表するときにもう一度お呼びさせて頂きますので、よろしくお願いします。」


というので、俺たちは部屋を出て、となりの控室で待っている。


数十分後。

メイドさんが入ってきた。


「ブレン様、お呼びです。」

「あいわかった。」


といって一緒に出て行った。

そのまま順番に出て行き、最後に俺。


「ヴィクター様、お呼びです。」


ふぅー。

さて、行こう。


控室を出て、謁見の間への階段をのぼる。

そして、謁見の間の扉を開ける。


そこにいたのは、壇上にいるさっきの5人の教育係と、ハルート王、先代王ルシアス、執事、衛兵、そして…




―元の世界で2年間ずっと着続けてきた、青いブレザーにグレーのズボンを着た、勇者達がいた―

ようやくタイトルと内容が一致。

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