依頼
遅くなりました。
やや長めです。
「ん…ハッ!ここは…」
気が付くとそこはベッドの上だった。
どうやら城の一室の様だったが、窓が小さい。
手足は縛られていなかったが、ドアが開かない。
魔法陣で封印されていて、監禁状態だ。
「ハルート…、どういうことなんだよ…」
最初に入ってきたときの口調が気になって、〈鑑定Ⅴ〉を使っておいたが、呪いやなりすましというわけでは無かった。
「そうだ、とりあえず…」
いつも戦闘時に使用する〈高速思考Ⅴ〉〈耐性Ⅴ〉〈視力Ⅴ〉を起動し、〈索敵Ⅴ〉でトラップなどを調べる。
〈透視Ⅴ〉で外を見ようとしたが、魔法陣によって妨害されてしまった。
「どれだけ強い魔法陣なんだよ…」
〈索敵Ⅴ〉を防げるのは、同じレベルⅤの〈封印Ⅴ〉や、〈結界Ⅴ〉などで、この世界でレベルⅤのスキルを使えたのは、勇者パーティや、伝説の賢者と呼ばれるものだけで、もう勇者パーティは全員が百年前に死んでいる。
賢者に関しては、謎な部分が多く、既に死んでいるとか、魔法によって不死になったとか言われている。
なので、本来ならばこの世界には、防げるものは存在しないはず。
「じゃあ、〈魔力強化Ⅴ〉。」
魔力強化とは、その名の通り、一時的に魔力を強化するスキル。
「そして、〈透視Ⅴ〉。」
すると、ぼやーっと壁の向こうに何かが見えてきた。
「なんだあれ?」
さらに目を凝らすと、人の形になった。
「おいおいおい、人が居るのはいいとして…」
「なんでたくさんいるんだ?」
その人影は、1人だけではなく、数十人ほどの白い影となって浮かび上がった。
その時。
シュウウン…
という音とともに、魔法陣が解除され、俺を閉じ込めた張本人が入ってきた。
ハルート王だ。
「ヴィクターさん…本当に申し訳ありませんでした!」
入ってくるなり土下座をするハルート。
「何もされてないからいいんだけどさ…どういうことか説明しろよ?」
スキル〈威圧〉を軽く放つ。
「はい、今からご説明します…」
と、突然ハルートの後ろから俺目がけて剣が飛んできた。
「うおっ!?」
とっさに手で剣の腹を叩き落とす。
剣の持ち主と思われる人物が、後ろから出てきた。
金髪で、若い青年だ。
軽装備で、腰には剣を3本刺している。
「おーい、俺の魔法も破れない人が、本当に教育係なんてできるんですかぁ??」
「は?」
いきなり話しかけてきた。しかも煽りかよ。
というか魔法陣作ったのこいつか。
「は?とか笑うんですけど。何も言い返せない雑魚は帰れよ~」
メッチャ煽るやん…
つーか誰だよおめえ!
「てめえ誰だ?」
「雑魚に名乗るほどのもんじゃねーよ。とっとと消えろよ。」
あ~?
くっそイライラする。
こいつナイフ振ってみるか?。
腰のエンシェントダガー…エンシェントドラゴンのうろこから作ったナイフを取り出す。
「2人ともやめて下さい!」
そこへハルートが止めに入る。
「青木君、何やってるんですか!?」
「王様、こいつチョーシ乗ってるから潰そうと思ってさ。」
「はぁ、外に出てください。今から大事な話があるんです。」
「チッ、あーあ、だるいわー」
といって出て行った。
「…なんだあいつ。もう少しで死んでたぞ。いや、殺してたぞ。」
「ごめんなさい、1つずつ説明させて下さい。」
というので、怒りを抑えて部屋のテーブルに座る。
そしてハルートは話し始めた。
「まず…彼らは勇者です。」
「はぁ?もう召喚してたのか?」
「…はい、1週間ほど前に…」
そんな前にか。
「そういえば、俺に頼みごとがあったようだけど。」
「それは、彼らの教育係です。」
「彼ら?」
「手違いで40人ほど連れてきてしまったんです。」
それ手違いってレベルじゃないよな。
「多すぎないか?」
「はい、なので教育係が必要なんです。騎士団や引退した冒険者などにも声をかけたんですが、足りなくて…」
「で、何人ぐらいを教育するんだ?
「6~8人ほどです。」
手練れの冒険者となると稼ぎも良いから、付きっ切りというのは難しいよな。
それに加えて面倒見もいいとなると、そうそういないよな。
「ふーん、まあそれはいいとして。俺を眠らせたのは?」
「こうしないと受けてもらえないと思ったので…。すみませんでした…」
ほー。
いや受けるよ?
「別に受けてもいいんだが。まず口で話してくれよ。」
「すみません…。反省してます。」
そんな泣きそうな目で上目遣いされたら許すしかねーって。
ハルートもいっぱいいっぱいなんだろうし。
「…よし分かった、受けるよ。」
「!…ありがとうございます!」
で、気になるのはあの金髪野郎。
「そうだ、あの金髪野郎は俺の班には入れないでくれよ。」
「分かっています。ヴィクターさんには神のギフトがなかったり、成長が遅かったりする者を担当していただきたいんです。」
「なるほど。でもなんで?」
「パーティを組んで、下層に潜って、強い敵と戦わせる方法をするのは、彼らには厳しいので、基本を叩き込んでいただきたいんです。」
「基本は俺じゃなくてもできるだろう?」
「え?ヴィクターさんはほとんどスキルなしで戦ってますよね?」
しまった。こっちだとギフトは口で言わないと起動しないんだった。
俺は〈無詠唱Ⅴ〉が付いてるせいで、使おうと思うだけで起動するからなぁ。
「あ、ああそうだな。確かに俺が適任だ。」
「ですよね。なので、よろしくお願いします。」
「お、おう。」
とりあえず誤魔化す。
「報酬はどうしましょうか?」
「期間はどれぐらいになるんだ?」
「そうですね…3ヶ月程を予定しています。」
3ヶ月か…。ちょっと長いが、これと言って欲しいものもないしな。
「うーん…その報酬はあとでもいいか?」
「もちろんです。では、明日にでも勇者方に紹介しようと思うんですが、大丈夫ですか?」
「分かった。1週間前に召喚して、訓練はどの程度やっているんだ?」
「まだです。基礎知識は教え込んだので、明日から実戦訓練を始めます。」
基礎知識というのは、この世界のことや歴史、魔法、スキルなどのことだろうな。
「なるほど、基礎知識が分かっているなら多少は楽だろう。今日はもう夜だし。もう休むよ。」
「本日は本当にありがとうございました。それとご迷惑をお掛けしました。執事に家まで送らせます。」
家まで帰るのも面倒だし、このまま寝よう。
「いや、この部屋でいい。荷物はアイテムポーチに入っているからな。」
「分かりました。おやすみなさい。」
といって、部屋を出て行った。
はあ、色々あって疲れた。明日からはもっと疲れそうだけど。
目をつぶると、すぐに眠気に襲われ、俺は深い眠りについた。
ありがとうございました。




