人間なんて
『一生付き合ってもいい相手だとは思うんだ』
璃音は、そんなことを軽々しく言う人間が嫌いだった。彼女が見てきた人間達の中にも『一生大事にする』とか『ずっと友達だよ』とか言うのはいたが、皆、その舌の根も乾かぬうちに別の人間に乗り換えたり陰口を叩いたりしてた。だからそんな言葉、全く信用に値しなかった。
信用に値しない。しない筈なのに……
「…なんだよ。そんなこと言う人間なんて信用できるかよ……
人間なんて、どいつもこいつも身勝手で自分のことしか考えてない奴らじゃないか。『可哀想な被害者の気持ちを考えてやれよ』とか正義面してたって、実際には『気に入らない』ってだけのくだらない理由でリンチとかするような奴じゃないか。
私は見てきたよ?
『子供を守れ』って言ってたオッサンが小学生の女の子に悪戯したりとか、
『歩きスマホすんな!』って吠えてた奴が傘さし運転して年寄りを撥ねたとか、
『DQNは社会の害悪』とか言ってた奴が幼稚園児を蹴飛ばしたりとか、
『イジメ加害者は死刑!』とか言ってた奴が徒党を組んで一人を袋叩きにしてたとか、
『犯罪者は名前を晒して社会的制裁を加えろ!』とか言ってた奴が無関係な人間を晒してたりとか、
『デマを広めるとか最低のクズだな』とか言ってた奴が別の事件のデマ流してたとか、
『歩行者は自己中』とか言ってた奴が自転車で走りながらスマホで撮った写真をアップしてたりとか。
人間ってのは、自分のことしか考えてないんだよ! 自分が得することしか考えてないんだよ! 他人は損してもいいけど自分だけは損したくないとか考えてんだよ!
そんな奴らの言うこととか信用できるかよ!!」
一気にまくしたてた璃音にも、麗亜は何も動じなかった。
「そうだね。そういう人もいるよね。だけどさ、<類は友を呼ぶ>っていう言葉もあるんだ。似たタイプ同士の人は惹かれ合うってね。
自分がそういう人間でいると、そうじゃない人は近付かなくて、似たような考え方の人が集まるっていうのは実際にあるんだよね。
自分の周りにそういう人が多いと、どうしても他の人もそうなんだって感じちゃうっていうのはあると思う。だけどさ。そうじゃないんだよ。世の中には、そうじゃないタイプの人だっているんだよ。
私は善人じゃないけど、少なくともわざと人を傷付けたいとか思わないんだ。これは私の性分なんだよ。理屈じゃないの。
それに、自分が損したくないっていうのは誰だってあると思うよ。それはないとおかしいと思う。ただ、何が得で何が損と感じるかは人によって違うんじゃないかな」




