お付き合い
「一回言っただけで相手が分かってくれるとかさ、一回注意しただけで相手が反省して改めてくれるとかさ、何でもかんでも即席で答えとか結果とかを求めすぎだと思うんだ。
小さい子ってさ、一回言っただけじゃ分かってくれないよね。その場では分かってくれたみたいに見えても、すぐ忘れちゃう。当然だよ。誰だって赤ちゃんの頃のことなんて覚えてないじゃん。五歳くらいより前のことなんて殆ど覚えてないじゃん。
覚えてられないんだよ。次々新しいことが頭に入ってくるんだからさ。
な~んて、これ、お父さんの受け売りなんだけどね。
私のお父さんは何度でも言ってくれたよ。私がちゃんと分かるまで。理解するまで。身につくまで。だから私も同じようにするの。こうやって璃音とお話ししてさ、璃音に伝わるまで何度だって言うよ。
だって、璃音は私のところに来てくれたんだよ? これってすごいことだよね。私が赤ちゃんを産むよりももっと奇跡だよ。そんな奇跡が起こったのに、その後の結果をお手軽に求めようとするなんて罰当たりなことだと思うんだ。
璃音。私、璃音のことが大好き。璃音が私のところに来てくれただけで感謝の気持ちでいっぱいだよ。それがちょっとくらいお転婆さんだったからってキレたりしないよ。
私のお父さんとお母さんが私にしてくれたことを真似するだけだよ。結果なんて別にどうでもいいよ。
人間同士の関係って、勝ち負けって形で結果が出る<競技>じゃないんだよ。勝負の世界は結果がすべてっていう面もあるかもしれないけど、人間関係はそうじゃないって私は思うんだ。その途中の経験が大事なんだ。それから比べたら結果なんてただの<おまけ>だよ。
もちろん、良い<おまけ>が出たら嬉しいよ? だけどさ、結果だけを見てそこに至るまでの経験の全部が無駄だったなんてもったいないじゃん。良くない結果が出たんなら、そこまでのやり方のどこかに上手くないところがあったんだって分かるじゃん。それを次に活かせばいいんだよ。
誰かを好きになってフラれたって、そこに至るまでの経験の中で何が駄目だったのか考えればいいじゃん。もしかしたら最初から駄目だったとか、前提条件が駄目だったとかってこともあるかもだけど、それを含めての<経験>だよね。
残念ながら私にとってのお父さん以上の男性がまだ現れたことがないから、男性を本気で好きになったこともないけどね。でも最初から自分に合わない人を好きになって失敗することを思ったらそれでいいかもって思ってる。お父さんもお母さんも、『自分がこの人ならって思える相手とお付き合いしたらいい』って言ってくれてるよ。『そう思える相手に巡り合えなかったら無理に結婚もしなくていい』ってさ。
璃音は結婚とかっていう形でお付き合いする相手じゃないけど、でも、一生付き合っていってもいい相手だとは思うんだ」




