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第八話 基礎からの誓い

翌朝。

ニャンピンガとネモは養護施設の前で話し込んでいた。朝の光が淡く差し込み、冷たい風が二人の髪を揺らす。


「えっと……昨日の話の続きだと、君は魔法騎士団の入団方法が知りたいんだっけ?」

「ああ」


ニャンピンガの眼差しは強かった。ネモは少し間を置いてから説明を始める。


「魔法騎士団に入るためには試験に合格する必要があるの」

「試験?」

「うん。私みたいな魔法を専門にする人は、筆記試験と実技試験があって、筆記試験では魔法の一般知識、実技試験では魔力量や技術が問われるの。君が志望する“騎士”専門の方は筆記試験はなくて、実技試験だけだよ」


ニャンピンガは顔をほころばせた。

「うえ…!筆記試験無いの!?オレ勉強したことなかったからな…ラッキー…!」


だがネモはすぐに釘を刺すように言った。

「“騎士”専門の方は筆記試験がない分、凄く大変なんだよ」


「え…?」

ニャンピンガの笑顔が少し引きつる。


「実技試験ではまず基礎体力、適応能力、反射神経、筋力、握力、持久力、バランス感覚、柔軟性、判断力、協調性、その他もろもろ、全てがテストされるの」


(ま、マジかよ……)


とニャンピンガは心の中で呟く。


顔に少し引きつりが出る。

「へ、へぇ……」


ネモは真剣な顔で続けた。

「どれも重要だけど、やっぱり一番重要なのは最後の“実戦”」


「実戦?」

「私たち魔法騎士団の役目はこの世界――マギクスを守ること。マギクスを守るためなら敵と戦わなくてはいけないの。だから試験の最後に魔法騎士団員と実戦を行うの。容赦はしない…と思うよ…」


ニャンピンガの表情が一瞬引き締まる。ネモは優しく問いかけた。


「魔法騎士団は決して楽な仕事じゃない。むしろ過酷なことが多い。それでもやるの?」


ニャンピンガは迷いなく答えた。


「ああ、もちろんだ。言っただろ?オレは幸せに生きていくつもりなんてねぇって。家族と仲間の無念を晴らすためなら、どんな過酷な道でも進む」


不安を押し殺して彼は強く言った。

ニャンピンガの想いは強かった。ネモはその言葉を静かに受け止め、頷いた。

「じゃあ、君を今から“訓練場”に案内するね」


ニャンピンガは繰り返した。

「訓練場?」


---


訓練場に案内する途中、ネモはずっと聞きたかったことを訊いた。

「ねえ、君の名前は何?教えてよ」


ニャンピンガは頭を掻いた。少し照れたように言う。

「そういや言ってなかったな。オレの名前はニャンピンガ・インドワーリだぜ」


ネモは小さく呟いた。

「ニャンピンガ君ね……」


ネモは振り向いて、にこりと笑いながら言った。

「私は君と初めて会った時に言ったけど、忘れていそうだからもう一度言うね」


「はあ!?」


とニャンピンガは叫ぶ。


だが心の中では


(確かに覚えてないわ……)


と苦笑する。


「私の名前はネモ・フィクティオ。よろしく、ニャンピンガ君」


ネモの微笑みに、ニャンピンガも自然と返す。

「ああ、よろしく、ネモ」


---


そこからは会話も途切れ、ニャンピンガはネモの後ろをついて歩いた。城の敷地内には人々の生活音があり、商人の呼び声や箒で飛ぶ子供たちの笑い声が遠くに聞こえる。ニャンピンガは景色を眺めていた。


「ねえ、ニャンピンガ君」

「何だ?」


ネモは少し躊躇して訊く。

「あのさ、昨日のことなんだけど……どうして昨日、団長の名前を聞いたの?」


「……?」


ニャンピンガは不思議そうに首をかしげる。ネモはすぐに否定するように言った。

「別に大した意味はないよ……!ただ普通に気になっただけなの」


ニャンピンガは小さく呟いた。

「ああ……」


そして、少し声を強めて言う。

「伝えたいことがあるんだよ。リーベさんに。相手の名前は知っておかなきゃ駄目だろ?」


「そうだね……」

ネモはその言葉に頷き、前を向いた。


無言の時間が再び始まる。そよ風が二人の頬を撫で、ニャンピンガは胸に拳を当てて心の中で誓った。


(リーベさんと話すためにも、絶対魔法騎士団に入ってやる……)


---


訓練場に到着した瞬間、ニャンピンガは思わず声を張り上げた。


「な、何だここはぁぁぁーーーーー!?」


視界に広がるのは想像を超えた広さの施設だった。走路、格闘リング、魔法障壁の試験区画、重りを使った筋力トレーニング場、反射神経を試す機械、模擬戦闘用の塔。団員たちが汗を流し、技を磨いている。


「訓練場だよ」

とネモは平然と言う。


「にしても広すぎるだろ!!!」

とニャンピンガは訴える。胸の鼓動が早くなる。


(オレがいた島の何倍だよ……)


ネモは肩をすくめ、密かに呟いた。

「お金持ちには常識が通用しないんだよ。王族、貴族の考えることは分からないよね」


「そ、そうだな」

とニャンピンガは開き直るように返す。


ネモは説明を続ける。

「この訓練場は城の敷地内だから、城の敷地内にある施設の人も使っていいようになっているの。だから、魔法騎士団の団員はもちろん、ニャンピンガ君も使っていいんだよ」


ニャンピンガは周りを見渡し、団員服を着た訓練をしている団員たちを見つける。剣を振るう者、盾を受け止める者、魔法の符を編む者。どれもが真剣そのものだ。


「本当だ……」

とニャンピンガは小さく呟く。


ネモはにっこり笑って言った。

「じゃあ私は任務があるから行くね。試験はいつでも好きな時に受けられるから。ニャンピンガ君、頑張ってね」


「またね」と言ってネモは去っていった。

ネモの背中を見送ったニャンピンガは、深く息を吸い気合いを入れる。


「よしっ!」


胸の奥で何かが弾ける。ニャンピンガは拳を握り、訓練を始める決意を固めた。

そして、ニャンピンガの修行は始まるのであった。

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