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第二十六話 新生活の準備

翌朝、入団試験の翌日。


ニャンピンガは養護施設から魔法騎士団の寮へ移るための手続きを進め、引越しの準備をしていた。ネモが手伝いに来て、二人で部屋の掃除をしている。


「魔法でパッと掃除できたら楽なんだけどなー」

ニャンピンガが独り言めいて呟くと、ネモがムッとした顔で返す。

「私はそんな簡単に魔法が使えないよ……使えたら楽だけど、手でやるのも悪くないでしょう」


その言葉に、ニャンピンガはふと村での記憶を思い出す。


(そういえば、アババニさんに頼まれてよく掃除してたな……)


アババニに頼まれてよく掃除をしていたこと、古い箒の感触。顔が少し和らぎ、彼は素直に言った。


「そうだな……こういうのも悪くない。悪かった、ネモ」


ネモは小さく微笑んだ。


―――


「くぁー、疲れた」


「頑張ったね……」


掃除が終わったのは、ちょうど日が傾きかけた頃だった。床に残る埃を最後に拭き取り、窓を開けると夕日が差し込む。ニャンピンガは背筋を伸ばして息を吐いた。


「でも一日で片付いて良かったね」

ネモも一息つく。


「まあ、オレの荷物がほとんどなかったからな。簡単な掃除だけで済んだな」


ニャンピンガの持ち物は少ない。故郷で着ていた古い衣類一揃いと、師フレッドから譲られた剣だけ。衣類は養護施設に入ってからから借りている。


少し寂しげな表情を見せる彼に、ネモが声をかける。


「ニャンピンガ君、引越しの準備は終わったし、明日は暇でしょう?」


「そうだけど……」


「じゃあ、明日私と街に出てみない……?」


「え……」


ニャンピンガは一瞬戸惑った。


「だってニャンピンガ君、しばらくお城の敷地内から出ていないでしょう?気分転換にどうかなって……」


(そうだったな……この養護施設も訓練場も全部城の敷地内にあるんだったな……)


養護施設に来てから、城の敷地外に出るのはネモに保護されたときだけだった。だが、ネモの声は優しく、誘いは自然だった。


ニャンピンガは頷く。

「わかった……よろしく頼む」


ネモはにっこり笑う。

「じゃあ明日、迎えに行くね」


そう言い残し、去っていった。ニャンピンガはベッドに腰掛け、天井を見上げ寝そべるのであった。


―――


翌朝、養護施設の前。


「よし、準備はいいね?早速行こう」


空は澄み、風が冷たく感じる。


ネモが先に歩き出し、ニャンピンガは後に続く。


「どこに行くんだ?」


ニャンピンガが訊ねると、ネモは少し含みを持たせて言った。


「まずはあそこ」


(“あそこ”……?)


ニャンピンガは『あそこ』という言葉に引っかかりながらも、素直について行く。


―――


城の敷地を抜け、長い階段を下り、門をくぐると、空気が変わった。


久しぶりの景色だ。

ニャンピンガが初めてヌクレウス島の地に足をつけたのはネモに保護された時であり、一ヶ月前のことだった。


市場の喧騒、屋台の香り、行き交う人々の声。ヌクレウス島の街は活気に満ちている。


「ここだよ」


ネモが立ち止まり、指差す先を見ると、そこには賑わう通りに面した一軒の店があった。木製の看板には色褪せた文字が刻まれている。ニャンピンガは息を呑んだ。


「ここは……!」

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