第二十三話 剣を握る資格
ニャンピンガの動きは、確かに覚醒していた。
リーヴィオの攻撃を受け止めるだけだった序盤とは違い、今は一気に詰め寄り、刃を連続で叩き込む。
足さばきが鋭く、視線は相手の腰を追い、刃の軌道は以前よりも短く、無駄がない。
―――
城の屋根の上。
白金のバッジを胸にした男――聖騎士フレッドが戦場を見下ろしていた。
隣に人影が現れる。
「何だ」
「――」
短い沈黙の後、フレッドが口を開く。
「――あの少年か。私が稽古をつけた者だ。入団は確実だろう」
相手が問い返す。
「―― ―?」
フレッドは視線を戦場に戻し、静かに答えた。
「私が最後まで剣術を教えなかった理由か……」
「それは……単に少年が未熟者だったからだ。未熟者に剣を握る資格はない。その資格を得るまで教えなかった。それだけのことだ」
―――
(コイツ……馬鹿力すぎんだろっ……!)
追い詰められたリーヴィオの顔が歪む。
息が荒く、瞳に焦りが混じる。
「俺が……手前なんざに負けるとか有り得ねぇンだよォ!」
彼は魔法を呼び起こそうとしたその瞬間、場内にアロファの声が響いた。
「そこまで!」
「三分が経過しました。壁の試練、終了です」
短く、しかし長く感じられた時間。
「チッ……」
リーヴィオは舌打ちをして去っていく。
アロファは戦場を消し、結界を解く。訓練場は元の静けさを取り戻した。
「最終試験は終わりました。観戦者の皆様はご解散下さい」
観戦者たちはざわめきながら散っていく。
――「今回の試験は凄かったな」
――「ヤバかったな」
――「アロファ様……素敵だな……」
ネモは遠くからニャンピンガを見つめ。安堵の笑みを浮かべた。
「ニャンピンガ君……この一ヶ月、よく頑張ったんだね……」
―――
アロファは淡々と告げる。
「入団試験はここまで。ほかの受験者が戻るまで待機してください」
ニャンピンガは拳を強く握る。胸に浮かぶのは、最初に思い出す家族と村の仲間の顔だった。やれることはやった――その実感と、まだ続く道への決意が混ざり合う。




