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第二十二話 覚醒の一閃

「それでは最終試験、壁の試練、始め!」


最終試験の開始の鐘が鳴った。


両者は見合った。

風が止んだように、会場のざわめきが遠くなる。剣の柄を握る手の汗。呼吸の音だけが、二人の間を満たす。


リーヴィオが口元を歪め、挑発の声を投げる。

「来いよ」


ニャンピンガの胸に時間の重さが落ちる。


心の中で短く呟く。

(時間は限られてる。オレが攻めなきゃ、ただの見せ物だ)


一気に詰め寄る。踏み込み、腰を落として剣を振り下ろす。


「うおおおおおおおおおおおっ!」


刃が振り抜かれる瞬間、リーヴィオはほくそ笑いながら軽く受け止めた。

刃と刃がぶつかり、衝撃が腕に走る。

ニャンピンガの体が一瞬弾かれる。

だが、押し返す力は残っている。


リーヴィオは嘲るように言った。

「確かに、団員をぶっ飛ばすだけの馬鹿力“だけ”はあるな。だが、大したことねェな。そんなモンかよ」


悔しさがニャンピンガの胸を焼く。刃をさらに押し込み、声を絞り出す。


「舐めんな!!!」


リーヴィオは軽く弾き返し、二人は一度距離を取る。互いに呼吸を整え、再び見合う。


今度はリーヴィオが仕掛ける番だ。


速い。水のように滑るステップから、刃が流れるように伸びる。


「……っ!」

リーヴィオの連続フェイント。ニャンピンガはスレスレで受け流し、体勢を整える。


刃先の風切り音が耳を切る。受け流すたびに、腕に振動が残る。


リーヴィオの言葉が続く。

刃の合間に吐き捨てるように。


「お前、施設の奴なんだってな。施設の奴が魔法騎士だァ?魔法騎士ってのはなァ、軽い気持ちで入れるようなところじゃねぇンだよ。覚悟がねぇ奴は魔法騎士目指すんじゃねぇ」


「は……?」


その言葉が、ニャンピンガの中の何かを弾いた。怒りでも、悲しみでもない。もっと深い、燃えるような決意だ。彼は低く唸り、刃を再び振るった。


「……!」


刹那、動きが変わる。速さが一段階上がった。

リーヴィオは一瞬、表情を崩す。


(コイツ……さっきより速い……)


「フッ……少しはやるじゃねぇか……いいぜ」


リーヴィオは攻撃を仕掛ける。


―が、ニャンピンガはいとも簡単に躱したのだ。


(躱しただと……?)


ニャンピンガは自分でも驚くほど冷静だ。視線は相手の腰、足のリズム、肩の入り方を追う。相手の癖を読み、先に動く。受け流し、返し、また受け流す。リーヴィオの余裕の笑みが、少しずつ薄れていく。


観戦していたネモが小さく声を漏らす。


「すごい……」


ニャンピンガはふと感じた。


『遅い』


と。何故なら彼の師は疾風の如く速かったのだ。姿を捉えることすら困難であった。そんな師と目の前の対戦相手を比べたら、速さの違いなど一目瞭然。ウサギとカメのようだ。


――試合は続く。時間は刻一刻と進む。ニャンピンガの拳は、ただの力任せではない。覚悟と技術が混ざり合い、刃先に宿り始めていた。


―――


遠く、城の屋根の上。白金のバッジを胸に付けた男が、影のように立っていた。彼の瞳は冷たく光り、二人の戦いをじっと見下ろしている。表情は読み取りにくいが、その視線には確かな興味が含まれていた。



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