第二十ー話 『壁の試練』
「最後の試験は対・現役騎士――壁の試練になります」
アロファの声が会場を満たす。空気が一瞬で張り詰めた。
「ここでは模擬剣――刃を潰した剣を使用し、現役の魔法騎士に対して三分間持ちこたつか、一太刀を与えられるかを試します。相手は従騎士の新人団員です。なお、この最終試験は敷地内の者が観覧できます」
ニャンピンガは周囲を見渡す。戦場の外には結界が張られ、外側から試合の様子を観られるようになっている。結界の外には興味本位で集まった団員たちの姿。どの者も赤銅のバッジを付けている。
――「これから最終試験らしいぜ」
――「どんな奴が受けるんだ?」
――「まあ俺はアロファ様を拝みに来ただけだし?」
ざわめきの中、ネモが人目を避けるようにしてニャンピンガの方を見ていた。
「ニャンピンガ君……」
彼女の視線は短く、しかし確かに励ましを含んでいる。
アロファは戦場を見渡し、集められた新人団員の中から相手を選ぼうとする。
「どなたに相手をして頂こうかしら……」
数人の中から一人を指名しようとしたその時―
「俺が相手になるぜ」
陰から一人の少年が現れた。オレンジの髪、ルビーレッドの瞳。顔には自信と挑発が混じっている。
アロファが問いかける。
「貴方は?」
「リーヴィオ・キルパイリアだ」
アロファの表情が一瞬変わる。
「キルパイリア……水の聖騎士の弟さんね。何の用かしら?」
リーヴィオの顔がわずかに歪む。
だがすぐに冷たい笑みを浮かべ、ニャンピンガを見据える。
「俺がアイツの相手をする」
アロファは言う。
「貴方は受験者の対戦相手に選考されていないようだけれども」
リーヴィオは遮るように言う。
「条件には合ってるだろ?一ヶ月前に入団した新人だ。問題ない」
アロファは静かに首を振る。
「経験が少なすぎる。故に貴方を彼の対戦相手にすることは……」
「関係ねぇよ」
リーヴィオはそのままニャンピンガのいる戦場へと歩き出す。
審査員の一人が制止しようと前に出る。
「ちょっと君!」
しかし、アロファが止めた。
「いえ、彼に一任しましょう」
「ですが、アロファ様……」
アロファは呟いた。
「これもまた入団試験への試練……」
―――
場内がざわつく。リーヴィオは無言で戦場へ歩み寄る。ニャンピンガは短く息を吐き、剣を握る。
「あなたが相手……?」
リーヴィオはほくそ笑む。
「ああ。俺が相手だ」
互いの呼吸が聞こえるほどの静寂。剣の柄を握る手に力が入る。観客のざわめきが遠くなる。時間が濃くなる。
「さあ、見せてくれよ。どれだけやれるか」
リーヴィオは小さく笑った。
(コイツか。一ヶ月前に団員をぶっ飛ばしたっていう施設の奴は。はっ……大したことなさそうだなあ……)
ニャンピンガは心の中で呟く。
(新人とはいえ、現役騎士だ。舐めてかかるな……)
二人は向かい合った。




