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第十八話 実戦技能試験、開幕

「受験者の皆さん、集まりましたね。只今より午後の部の試験を開始します」


アロファの声が演習場に静かに響く。声は穏やかだが、空気を一瞬で引き締める力がある。


「午後の部は実戦技能・対人能力試験です。ここからは魔法適性の試験と騎士専門の試験で内容が分かれます。ヴァインさん、ローレグルさんは案内に従ってください」


アロファが掌を掲げると、空間が揺らぎ、彼女の分身が二体ふわりと現れた。


「「「……っ!」」」


三人は同時に息を飲む。分身は本物と見紛うほどの姿で、しかしどこか淡い光を帯びている。


「私の分身が、ヴァインさんとローレグルさんの試験官を務めます。分身だからと侮らないように。お二人はこの分身に同行してください」


「はい」

二人は揃って答え、軽く会釈して去っていく。ニャンピンガは手を振り返す。


「では、ニャンピンガさん。試験後に会いましょう」

「お互い頑張りましょう……!」

「おう、後でな!」


―――


アロファは静かに手を振ると、地面に魔法陣が浮かび、演習場が出現した。視界が切り替わると、そこは鬱蒼(うっそう)とした森。木々の間に小道が伸び、茂みの奥から低いうなり声が聞こえる。枝が風に揺れる音さえ、どこか不穏だ。


「実戦技能試験第一。今私が出現させた演習場に放たれた魔物や、特定の森での狩りを通じて実戦能力を測ります。評価項目は索敵、判断力、機動力、そして状況把握です。準備ができたら、そこの魔法陣にお立ちください」


ニャンピンガは深呼吸を一つして、魔法陣に足を踏み入れた。視界が揺れ、次の瞬間には森の中に立っている。空気は湿り、土の匂いが鼻をくすぐる。


剣の柄を握る手に、師匠フレッドの声が蘇る。


――距離を測れ、腰を使え、木を味方にしろ。


「それでは、魔物討伐開始!」


アロファの合図で試験は始まった。


―――


最初に現れたのは低い四足の獣型魔物。黒い毛並みが逆立ち、牙をむいて飛びかかってくる。


「グァァァ!」


その咆哮に一瞬身がすくむが、ニャンピンガは冷静に動いた。木の陰に身を隠し、相手の視線を誘導してから側面へ回り込む。フレッドの稽古で鍛えた足さばきが自然に出る。剣先が鋭く振られ、魔物は地に倒れた。


審査席ではアロファが静かに観察している。彼女の瞳は冷たくも温かい光を帯び、ニャンピンガの動きを一つ一つ拾っている。


だが、油断は禁物だった。茂みの奥から別の影が滑り出し、次々と魔物が現れる。(つる)を伸ばす植物型、空中を舞う小型の羽虫型、そして二足で跳躍する獣型。気づけば周囲を囲まれていた。


「いつの間に……!」ニャンピンガは短く呟く。だが、焦りは長く続かなかった。彼は周囲を見渡し、優先順位を決める。まずは脅威度の高い相手を潰し、次に索敵を広げる。木の幹を蹴って跳躍し、上からの奇襲で一体を仕留める。地面を蹴って回り込み、別の魔物の背後を取る。動きは速く、無駄がない。


審査席のアロファが低く呟く。

「これは実戦技能の本質を問う試験。囲まれた際の判断、索敵の速さ、そして状況に応じた攻撃の選択――ニャンピンガ・イントワーリ、どう対処する……?」


ニャンピンガは笑みを浮かべる余裕すら見せた。


「へへ、こんくらい楽勝だぜ!」


彼の動きはさらに鋭くなる。木々を利用したフェイント、地形を使った転倒誘導、そして一瞬の隙を突く突き。魔物たちは次々と倒れていく。


審査席からは小さなどよめきが上がる。だがアロファの表情は変わらない。手を組み、薄く笑みを浮かべるだけだ。その笑みには、まだ見ていない何かを期待する含みがあった。

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