表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/32

第十四話 試験開始の鐘が鳴る

「ニャンピンガ君!早く!」


「おいネモ、そんなに急がなくても大丈夫だって……!」


魔法騎士団入団試験当日。


ネモはニャンピンガより気合が入っている。試験会場は訓練場で、試験の日だけ特別に貸し切りになる。二人は朝の冷たい空気の中を歩きながら、会場へ向かっていた。


「集合は八時半だろ?あと十分もあるぜ?」


「何言ってるの、ニャンピンガ君! その十分で気持ちを落ち着かせるの!だから早めに着いておくのが大事なの!」


ネモは早口で返す。


ニャンピンガは呆れ顔で肩をすくめた。




試験の要項は簡潔だ。


- 八時半 受験者集合・持ち込み武器の安全点検(粗悪品や不正な魔道具は厳重チェック)

- 九時 午前の部:基礎能力試験

- 十二時 昼休憩

- 午後 実戦技能・対人能力試験

- 十六時 試験終了、休憩の後に合格発表




(ついにこの日が来た……父さん、母さん、じーちゃん、みんな、オレ頑張るからな…!)


ニャンピンガは心の中で誓う。

拳を固く握るニャンピンガにネモが、にわかに真剣な声色で訊ねる。


「ニャンピンガ君、準備は抜かりないね?」


「ああ! 師匠から預かった剣もここに……って、あれ?」


ニャンピンガの顔が一瞬で青ざめる。


「どうしたの?」


「剣……部屋に置いてきたかも……」


「えっ……!」


二人は固まる。

時間は刻一刻と迫る。

二人は慌てて走り出した。


―――


養護施設へ戻る道は、いつもより遠く感じられた。ネモは息を切らしながらも必死に走る。ニャンピンガも全力で駆け、扉を蹴って部屋へ飛び込む。剣箱を掴み、冷たい金属の柄を握った瞬間、胸の奥が少しだけ軽くなる。


二人は会場へと走る。


「やばいよ……! 間に合わないかもっ……!」


(まずい……!)


そう感じた瞬間、ニャンピンガは地面を蹴り、超加速していた。


「……!ニャンピンガ君……!」


(すげぇ……今のオレ……風のようだ……)


加速したニャンピンガにネモは追いつけず、後ろから叫ぶ。


「ニャンピンガ君、ファイト!」


―――


「はぁ……はぁ……はぁ……何とか間に合った……」


集合時間ちょうどに、ニャンピンガは会場に滑り込んだ。

持ち込み武器の安全点検を受け、ようやく一息つく。周囲を見渡すと、自分以外にも受験者がいることに気づいた。


一人はエクルベージュの髪にエメラルドグリーンの瞳の少年、もう一人はパステルピンクの髪にサファイアブルーの瞳の少女。二人は互いに顔見知りのようだ。


ニャンピンガは軽く声をかける。

「よお!アンタたちも受験者?」


「は、はいっ……!」


少女が小さく答え、少年が前に出て説明する。

「すみません、コイツ人見知りでして。打ち解けるのは早いんですけど」


「そうか。二人は知り合いなのか?」


「ええ、幼馴染です」


少年が答える。


自己紹介のやり取りはテンポよく進む。


「オレはニャンピンガ・イントワーリ。よろしく」


「僕はヴァイン・スナルヴィンドゥル。彼女は……」


「ローレグル・ヴァトンです……よろしくお願いします」


少女は小さく一礼した。


ニャンピンガは手を差し出す。


「ヴァイン、ローレグル。二人ともよろしくな!」


「はい。よろしくお願いします。ニャンピンガさん」


ヴァインと握手を交わす。


その時―


「ようこそお越しくださいました。受験者の皆さん」


会場に低く通る声が響いた。


泡と共に現れたのはスカイグレーのショートヘア、フォグブルーの瞳の女性。


彼女はゆっくりと自己紹介を始める。


「受験者の皆さん、お集まりいただきありがとうございます。(わたくし)は元魔法騎士団副団長、聖騎士(パラディン)アロファ・ポウポウ・ポトと申します。本日の試験官を務めさせていただきます。よろしくお願いします」


小さなざわめきが起きる。


ヴァインとローレグルは顔を見合わせ、囁く。


「アロファって、あのアロファ副団長……?」


「“伝説の時代”の、あのお方だよね……?」


(“伝説の時代”……?)


アロファは静かに壇上を見渡し、訓示を始めた。


「皆さん、今日はただの試験ではありません。これは王と民を守る者としての資質を問う場です。

我らが王は、この国の象徴であり、秩序の中心であらせられます。王の下に秩序が保たれるとき、民は平穏に暮らすことができる。ですが秩序は自然に生まれるものではありません。守る者がいて初めて成り立つのです。


魔法騎士とは、単に強さを誇る者ではありません。弱き者を守る覚悟を持ち、暴力を正義と混同しない知恵を持つ者であります。剣は力を与えるが、同時に責任を課します。力を振るう前に、常に自らの心を問いなさい。王のため、民のため、世界の平和のために何を為すべきかを。


世界平和とは遠い理想に聞こえるかもしれません。ですが小さな秩序の積み重ねが、やがて大きな安寧(あんねい)を生みます。あなたたちが守る一つ一つの村、一つ一つの命が、やがて国を、そして世界を安定させるのです。


今日、我々は技量を測ります。ですが同時に、覚悟と節度を見ている。剣の振るい方だけでなく、心の在り方を示しなさい。あなたたちの行動が、王と民、そして世界の未来に繋がることを忘れぬように」


アロファの言葉が会場に染み渡る。

声は落ち着いているが、言葉には重みがある。


静寂の後、受験者たちは一斉に息を飲んだ。

ニャンピンガの胸にも、言葉の重さが深く刻まれる。彼は剣を握り直し、覚悟を新たにした。


(ついに……始まったんだ……魔法騎士団入団試験……!)


会場の空気は引き締まり、試験の幕が上がる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ