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幻想譚   作者: 国分
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魔物の王4◇


魔物が何か?


うん、教えて欲しいんだ。


アイツに聞けば良いだろう。


そう、だけど…その…。


逃げたか。


いや!?

ずっと聞いてばかりだと呆れられるかもって!


…とは言え、アイツよりも知識は無いぞ。


大丈夫!

何も知らないよりは良いだろう!


つまり、貴様は何も知らないのだな。


…すみません。


意地を張らずに聞けば良いだろう。

丁度良い、魔物の話は気になってはいた。



~旅の一コマ~


「魔物だ!魔物が出たぞ!」

「村の皆を避難させろッ!」

「おい、アンタ。直ぐにグラハムさんを呼んでくれ!」

「他の団員は!?」


魔物の襲来に迅速に反応したのは、やはり、団員達であった。彼等は声を張り上げて、互いに鼓舞し合うかの様に指示を、現状の対応をしていく。


「嬢ちゃん、下がれ!此処は俺等の仕事だ」


晴香の肩を掴んで、後ろへと退かせながら魔物へと剣を抜き放ちながら駆けて行くのは。つい先程、別れた待機担当の男だった。


「おい!」

「あぁ!」


遅れて追い付いたもう一人の待機担当だった団員を、短い会話だけで二人は左右に別れて、魔物へと向かう。


まず、右に向かった男が魔物の足へと剣を凪ぎ払い。それに魔物がうつ伏せになっていた状態から男へと首を動かした。


その瞬間、魔物の死角から左に行った男が図上高く飛び上がり、魔物の首へと剣を自身の体重を乗せて叩き斬った。


「ガマディア、そのまま下がって、魔技の手伝いをしろ!」

「浅いぞ、ノルウェイ!酒で手元が狂ったか?」


魔物の首から、黒い粘着質な液体が吹き出し、首がぐらりと奇妙に裂けて揺れる。

他の団員達も魔物を囲み、右に向かったガマディアに次々と後方に走る彼の肩や頭を叩いて激励し。逆に魔物の首を半分切断したノルウェイにからかいの含めた声を掛けた。


「うるせぇ!直ぐに首を落としてやらぁ!」


ノルウェイが剣に付着する液体を、剣を振って払い落として。


「…はぁッ!?」



驚愕した。



魔物から零れ落ちる液体が、突然無くなったのだ。



嵐が来るよ。



団員達が叫ぶ事も無く、静かに動きもしない魔物に動揺を見せながらも警戒している。



来るよ、黒き門が。



「ニ…ッ」


腹の奥底で蠢く様な不快感に、晴香は足を竦ませながらも、危機感に背中を押される様に叫ぶ。


「逃げてぇええええッ!」


その場に、晴香の叫びが響き渡り。


皮肉にも、少女の声に応えたのは魔物だった。


ごぽり、と始めに何かが溢れ出す音が魔物の体内から聞こえ。続いて骨が折れる様な軋む音と肉同士が押し潰し合う生々しい耳障りな音が絶え間無く、段々と大きく辺りに広がり。

魔物の背中が盛り上がっていく。


「…何だよ、これ…」


団員の一人が呟いたのはその場に居た、晴香を含めた全ての人の想いだ。


この疑問に答えを持つ人物は。



早く、逃げないと魔物になるよ?



晴香に囁く、姿無き笑う声。


「テメエ等、直ぐに逃げろ!!!」


そして、身の丈と同等の大剣を片手に担いだ。


「直ぐに離れろ!魔技を片っ端からぶっ放せ!これを『開かせるな』!」


「グラハムさん!」


魔狩りの英雄である、グラハム・ダインである。



グラハムは大剣を両手で持ち上げて、既に魔物を押し潰してまで膨れ上がる肉の山へと狙いを定める。


「グラハムさん、これ…」

「この村を魔物に滅ぼされたくなきゃ、早くしやがれ!」


助けを求める様に口を開いた団員を一喝し、グラハムは速度を落とさずに腰を低めて肉の山の煌めく光に、大剣を槍投げの如く放つ。


大剣が命輝を砕くよりも先に、肉の中へと埋もれ。ぱっくりと縦に裂けると中から『手』が伸ばされでグラハムの大剣を掴み。

軽々と、力を込めずに握り締めて真っ二つに折ったのだ。


「畜生ッ!『開いた』…逃げろ!」


折られた剣が地面へと落とされ、落ちた箇所から火が燃え広がる。

のそりと、『足』を踏み出したそれは中で屈んで居たのか異様に大きい。


まるで、棒の様にひょろりとした『人の形』をするそれは。全体が最初の魔物から溢れた黒い液体に濡れている。

しかし、地面が燃え広がる為に咄嗟に液体の無い見えた表面は、粘土の様な肉のもの。


既に太陽は沈み、闇の世界の始まりを迎える象徴の如く。背中から、骨格だけの翼を出して。



赤く輝く両目を、晴香に向けた。




「…おい、冗談だろ?だって…居る訳が無い。だって…『人の形』をした魔物だなんて、ユフクスだけじゃないか…」


団員の哀れに感じる程に、震えて恐怖を孕ませた声に晴香は考える。



これが、ユフクスなのだろうか。



脳裏に歪んだ笑みが浮かび、即座に否定する。違う、『これ』は違う。だとすれば、一体。


「…何、これ…?」



どろりと肉の山が異臭と煙を撒き散らして崩れ落ちる中で、『それ』は他の人間に目も向けずに晴香へと足を動かす。


「ユフクスが来たぞッ」

「シモーヌ、逃げろ!」


グラハムに名前を呼ばれてやっと、晴香は目の前に迫って来る『それ』から逃げる為に、足を動かした。



耳元で、狂った様に笑う声を聞きながら。





呼ばれて来たけど、何か用?


用が無ければ呼ばん。


確かに、で…何か狩って来るの?


いや、魔物について教えて欲しいんだ。


人間を襲うよ?


…他には?


命輝を持つ?


…知らないの?


聞いてはいるけど…誰の魔物説を話せば良いの?


待て、つまり…魔物の定義は定められていないのか?


定義?

それかは知らないけど、冒険者で言われ続けてる話があるよ?


話せ。


魔物は人間の魔力が好物で、まぁ…食べない奴等もいるけど?

命輝はその魔力が魔物が一つに固めた結晶なんだ。

だから、同じ生き物でも命輝があれば魔物化した、立派な魔物なんだって。



そうなんだ…あれ、じゃぁ色が違うのは?


魔物が初めて命輝を作った時に、色か決まるんだ。

後は取り込んだ魔力が、体内で変化して貯まれば大きさや濃度が変化していくんだよ。


…何で?


料理でも汁を煮詰めながら足していったら、量が多くて味も濃いでしょう?


例えが解らん。


んー?

…習性じゃない?


習性?


他人の取り込んだ、魔力を結晶化させるんだ。

魔物は命輝が無いと生きてはいけないから。


あ、だから魔物は命輝が無くなると灰になるんだ。


そういう事。


待て、それが何故習性なんだ。


あ。


ん?

まぁ…長い間に刻まれた行為が、子孫にも受け継がれるのは習性と呼ばないの?


…もういい。



~旅の一コマ~

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