穴場の景色
島へ続く一本道にはガードレールや柵などなく、一歩踏み間違えたら海にダイブしてしまいそうだ。しかも島の入り口には大きな鳥居もあってなんだか荘厳だ。みんなその鳥居の前で写真を取ったりしている。この掴まれている手さえなければもっとゆっくりとこの景色を楽しめただろう。けれど先輩も始めてくる俺を気遣ってくれているのか少し歩調を緩めてくれている。
この人でも優しいところあったのか。
ん?
「岩先輩」
「なんだ?」
「何見てるんですか」
「いや、なんだ。サーフィン気持ちよさそうだなって」
「やんないですからね」
「……分かってるよ」
優しいところがあると思った俺が馬鹿だった。ただ波に乗る人たちから目を向けていただけだった。
先輩はすねたように前を向き直すといつもの速度で歩き始めた。うん。この速度だよな。知ってた。
「おい、こっちだ」
入口の鳥居を過ぎて、みなが歩いている方に行くのかと思っていたら、先輩が急に左に曲がった。おかげで少し体がつんのめった。
「あっちじゃないんですか?」
「おう。こっちの方にいい景色があるんだ。それとも何か? 私と恋愛成就のお祈りでもしたいのか?」
「それは、丁重にお断りします」
「なんかそれはそれでむかつくなっ!」
「いっつっ!」
そう言って俺のすねを蹴ってきた。
「ふんっ。全く失礼なやつだ」
「媚び打ってわざとらしく照れた方が良かったです」
「そんなことしたら海に突き落としてた」
「ですよねー」
「分かってるなら聞くな」
先輩はぐいぐいとこちらを振り向きもせずに進む。順路が明らかに違うのか、さっきまであれほどいた人たちは見る影もなくなっていた。けれど流石観光地と言うべきか荒れているわけではなく、逆に人がいない分ゴミがなくてキレイな道であった。右手側にはヤシの木のような木々が等間隔に生えている。確かにいい景色であった。しかし、先輩はここに留まることなく真っ直ぐ進み続ける。
どれだけ進んだだろうか。もう島の反対側に来たのではないかと思うほど進んだ。そこで先輩は足を止めた。
「よし、セン。あっちのベンチの方に行くぞ」
指差す先には木陰になっているベンチがあった。そこに何かあるのだろうか。
「ほら、早く」
先輩は手を離して俺の背中を小突いてくる。
「分かりましたよ」
俺はなされるがままベンチに座る。
どこまでも続く地平線に、雲の様にその上に垂れる草木、その合間からは少し落ちた日の木漏れ日が差し込んでくる。自然が織りなす美しい景色だった。




