観光地の弊害
「んー、あいつら邪魔だな」
「それも含めての景色じゃないんですか?」
「今撮りたいのは違うんだよ」
「そうですか」
カメラを覗きこみながら先輩が言う。表情は分からないが、きっといつもみたいな眉が寄った表情をしているのだろう。そういう時は歯向かわない方が良いのは学習した。
俺もとりあえずスマホのカメラを起動する。
「邪魔だ……」
海辺で遊んでいる人はいい。それはいいのだけれど、ベンチの前、つまり俺の前の往来が多くてシャッターを切るタイミングが分からない。なかなかストレスだ。
別に彼らが悪いわけじゃない。けれどストレスを感じてしまうのを許して欲しい。スマホが無駄に機能が多いのか、人が通る度にそっちにピントが合ってしまうのだ。
「だろ? 正論だけじゃ食っていけない時もあるんだ」
「別に写真で食ってないでしょ」
「分からんぞ?」
「え?」
岩先輩は片方の口角をあげた。あたかも写真で稼いでいるかのように。
「稼いでるんですか?」
「いや、稼いでない。セン、何を言っているんだ?」
う、うざい。
「俺、海の近くで写真撮ってきますね」
「おいおい。すまなかったって。へそを曲げないでくれ」
俺がベンチから立とうとすると手を引っ張ってそう言う。そのせいで俺の体が後ろにクイッと曲がる。倒れないように踏ん張って変な恰好になっている気がする。
「なんかマイケルジャクソンみたいになってるな」
この人謝る気ないだろ。
「俺はゾンビにはなりませんよ」
「そっちじゃない」
「じゃあどっちですか」
「いいから姿勢を戻しな。見てられない」
「……はい」
俺は言われる通りにベンチに座り直した。
「よし。人がいて微妙だし、島の中に入るか」
「まあそうですね」
「セン、お前は初めて来たんだろ? なら王道に観光してみるのもいいんじゃないか」
なんだか俺がいつもひねくれているみたいな言い方をしてくる。解せん。
「……ですね」
けれどそんなことは言わずになされるがままに頷いた。間違いなくまた睨まれるし、勝てないからだ。
「なんか不満そうだな」
「いやー、そんなことあるわけじゃないじゃないですか」
それでもそんな俺の魂胆が見抜かれているように先輩にすごまれる。
「おお? 本当か?」
しかもそれに加えて掴んでいた手を離して俺の首にその腕をかける。先輩の方が身長が低いので俺はより身をかがめることになった。
「本当ですって」
「そうか。まあ許してやろう。じゃあ、いこうか」
そして先輩は俺の首に腕を回しながら立ち上がる。待て待て、痛い痛い! 首が変な方向に曲がってるって!
「おい、何だ? 私にくっつかれて照れているのか?」
「違いますよ。早く、離してくだっさい!」
「なんだ照れるなよー。早く行こうぜー」
「だから! 離してくださいって!」
そう言いながら話を聞かない先輩に引っ張られる形で、中腰のままベンチを立った。
「まったく、センはわがままだなー」
先輩は腕を離してまた腕を掴まれる。こっちの方がまだましか。
「もうそれでいいです」




