初めての撮影
「そういえばセン。お前はここの生態系とか分かるか?」
「正直、全然分からないですね」
「なんだ使えないな」
「そう言われても」
「まあいい」
そう言って岩先輩はレンズを覗き込んだ。
「んー」
でもなんだか納得しない様子で色々角度を変えてみたりしている。そして試しに一二枚撮ってみては確認してを繰り返しているが、やはり納得しきれていないらしい。
そんな様子を見てると俺も少し写真を撮ってみたくなる。俺はポケットからスマホを取り出す。近くに木漏れ日が入ってる草場にカメラを向ける。とても幻想的な感じがしたからだ。
けれどいざ撮ってみると、実際に見た景色とは全然違う写真が撮れた。んー。何が悪いのだろうか。
「お、いい写真じゃないか」
「いや、なんか全然思う通りにならなくて」
「なるほどな。ちょっと貸してみろ」
そう言って岩先輩は有無を言わせず俺のスマホをひったくった。そして俺が撮った写真を開いて、何やらいじってる。見るとどんどんキレイな写真になって、岩先輩が手を止めた時にはどこかの写真家が撮ったんじゃないかと思うほどの写真が出来ていた。
「凄いですね」
「だろ? 実はカメラなんてなくても結構いい写真が撮れるんだ」
「じゃあ先輩はなんでそのカメラ使ってるんですか?」
カメラがなくてもこんな写真が撮れるのならスマホの方が便利でいいんじゃないかと思ってしまう。
「ん? おいおい。分ってないな」
そう言って先輩は自分のカメラを頭の横に掲げてニヒルに笑った。
「そっちの方が粋ってやつだろ?」
「……確かにそうですね」
「分かったか。よし! じゃあ少し奥まで行こう。そっちには辺りを見渡せる場所があるんだ」
「岩先輩はここでの写真は良いんですか? なんか納得いかない感じだったじゃないですか」
「何言ってるんだ。お前が撮ったから良いだろ」
「でも何も知らない素人の写真ですよ」
「お前はなんでそんな卑下するんだ? 趣味か?」
呆れたように言う。
「いやそんなんじゃないですけど、事実でしょ?」
「私がいい写真と言ったんだからそれで充分だろ。それともなにか? 私がセンごときに気を使ってるとでも?」
「そうは思ってないですけど」
「いいか。私はあの写真を良いと思ったからいい写真だと言った。それがすべてだ」
「でも」
「あー! でもでもうるさいな。お前の撮った不格好な写真には伝えたい思いがあった。そして私はそれを汲み取った。そんな無言のやり取りも今の景色の一つだろうが。私が残したいものだよ。ごちゃごちゃ言ってないで行くぞ」
そうして岩先輩は俺を引っ張っていく。俺はそんな清々しい彼女にあまりにも自分が小さく見えて、笑ってしまった。
「やっぱ不格好なんじゃないですか」
岩先輩もにやりと笑う。
「下手とは言ってないぞ」




