からかいの代償
道の駅の中は想像と違わず、ショッピングモールの一階の一部分を切り取ったコーナーが半分と、レストランのコーナーが半分だった。
先輩は迷いなくそのレストランの方へ向かった。
「岩先輩、さっき食ったばっかじゃないですか」
「それはアイスクリームだろ?」
「岩先輩はポテトも食べていたじゃないですか」
「ポテトしか食べていない」
「でもそのポテトが大量でしたけど」
「細かいことは気にするな。それにセンは何も食べていないだろ?」
確かに少しお腹が空いてきた。こういう所の飯は久々だ。それに先輩がわざわざここに連れてきたんだ。何か珍しいものがあるのだろう。
「ほれ、メニュー表」
「ありがとうございます」
先輩に渡されたメニュー表に載っているメニューは観光地だからかここの有名な飯が多く並んでいた。参考の写真はどれも量が多そうだ。しかし、別にそんな気分ではなかった。
「岩先輩は決めました?」
「おう」
「すみません」
近くに歩いている店員さんを引き留める。
「この天そばと……」
俺は先輩に目配せをする。
「大盛フライドポテトをください」
先輩の注文はまたポテトだった。店員さんは注文をメモすると「お待ちください」と言ってカウンターの奥へ行った。
「岩先輩またポテトですか?」
「そうだな。知らないのか? ポテトは美味いんだ」
「知ってますけど、このままだと栄養が足りませんよ」
岩先輩は悪いことをした子どもの様に目を逸らした。
「分かってるが……」
そしてバツが悪そうに呟く。
「ははっ」
「おい。笑ったな!」
そんな先輩がいじらしくてつい笑ってしまう。先輩はその俺の態度に分かりやすく机に両手をついて抗議してくる。
「ポテト美味しいですもんね」
「よし、お前がどんな奴か分かったぞ。覚悟しとけよ」
笑いをこらえながら言ったのがさらに先輩のかんに触ったのか文句を続けた。けれどその文句を遮る様にポテトが先に届いた。店員さんはポテトを置くとすぐに戻っていった。
「ほら岩先輩、ポテトですよ」
「分かってるよ」
なんだかこんな先輩をいじれるのが楽しい。
「なんならあーんでもしてあげましょうか?」
そしてついそんなことを言ってしまった。先輩は何かを見つけたかのようにニヤッと笑った。
「おう。それならよろしく頼むよ」
「え?」
「あーんしてくれるんだろ? 頼むよ」
先輩はもう一度口角を上げてから、目をつぶって口を開けた。
どうしよう。やってしまった。完全にやりすぎた。
「ほら早くしろ」
先輩は目を開けてそう言うと、またすぐに目をつむった。
仕方ない。ここはもう腹をくくるしかない。俺は意を決してポテトを一本持つ。そして先輩の口に運ぼうと動かした瞬間、俺が注文したてんそばを持ちながら温かい目でこちらを見ている店員が視界の端っこに入った。
「お待たせしましたー」
俺に気づいたことに気づくと今来たと言わんばかりに普通に対応してきた。俺は持っているポテトを自分の口に入れて、乗り出した体を戻した。俺が戻る頃には先輩も普通の様子で席に座っていた。
この人め、気づいていたな。




