行きたいところ
「ここで食べるのが好きなんだ」
先輩はフェンスに肘をのせてそう言う。フェンスの先には俺たちが前に行った島も含めた海とその周りの町々が広がっていた。となり——といってもかなり遠いが。のフォトスポットはかなり賑わっていて、そこからもこの町が観光地として栄えていることが分かる。
「なあセン。人がごみのようだ」
「それ言ってみたかっただけでしょ」
「ふふ。まあな。前までは一人で来てたから言える相手がいなかったんだ」
「ぼっちなんですか?」
「私についていける奴がいなかっただけだ」
先輩は少し拗ねるようにいう。こう見ると華奢な見た目もあいまって、いつもの傍若無人っぷりが消えて普通の女の子みたいだ。
「なんか失礼なこと考えてないだろうな?」
「いえ、まったく」
「ふんっ、ならいい。セン、あそこだ」
先輩は突然、景色に指をさした。
「何がですか?」
「あそこが前回私らが止めた駐車場だ」
「あー、確かにあそこらへんですかね」
「案外こう見ると遠いよな」
「そんな長い距離歩いた記憶はないんですけどね」
「まったくだ」
そんなことを話しながらただ二人で景色を眺める。俺のソフトクリームはもうコーンにまで達していた。思ったよりも美味くてずっと食べてしまっている。先輩はそんな俺を見て「美味いだろ?」とニヤついた。
「セン、お前行きたいところあるか?」
突然そんなことを訊かれた。
「行きたいところですか?」
「おう。どこでもいいぞ」
「そうですね。……せっかくなら近隣の県は制覇したいですね」
「なんだ、欲望が小さいな。じゃあ近くから回っていくか」
先輩が伸びをしながら答える。
「さらに遠くいくなら流石にバイクだけじゃあれだな」
「やっぱり疲れちゃいますよね」
「ケツがな痛くなるんだ」
そう言って自分のお尻をパンパンと叩く。
「はしたないですよ」
「お前はオトンか」
カラカラと笑う先輩を尻目に俺は景色に視線を戻す。なんだかいつもと近いところにいるのに遠くまで来た気分だ。灰色だった自分の高校時代とはえらい違いだ。
また先輩がいる方に目を向ける。先輩はコテッと頭を倒す。なんかあざとくて少し可愛いと思ったのが悔しい。中身あんななのに。
「なんだよ」
「いや、なんもないっす」
「私の顔が好きなのは分かるが少し自重してくれ。照れちまう」
て、照れ? そう言いつつも全然照れてる様子なんてないんだが。
「岩先輩が照れることなんてあるんですか?」
「お前が私をどう思ってるかは分かった」
そう言われても……。仕方ないじゃないか、普段の行いが行いだ。
「よしよし。じゃあもう一軒行くか」
「もう一軒? それって……」
「そりゃあ道の駅に決まってるだろ」
先輩は俺の手首を掴んで俺を駐車場の方に引っ張っていった。




