後輩の勘違い
「では少々お待ちください」
「おいセン」
「なんですか」
「バイトいつまでだ?」
嫌な予感しかしない。
「……一応昼までですけど」
先輩は着けている腕時計を見てにニヤリと笑った。でた。この顔だ。
「よし。じゃあ、待ってやる」
「待たなくていいですよ」
「待ってやる」
俺はもう学んだ、この問答に意味などないと。
「はい」
「いい子だ。撫でてやろう」
「仕事があるんで結構です」
「照れるなよ」
「照れてないです」
そう言って俺はいち早くこの場から離れた。
「せんぱぁい。大丈夫ですか? 腕とか手とか指とかなくなってないですか?」
戻ると渡辺さんが俺にしがみつくように駆け寄ってくる。なんでそんなに腕関連のものが無くなるんだ。
「大丈夫だから離れて」
「は、はぁい」
離れた渡辺さんは涙目でこちらを見上げてくる。
「先輩はあ、あ、あの人に脅されてるんですか? わ、わたしにも何か力になれることとか……。せ、先輩にはお世話になっているので、頑張って頑張りまふ!」
「渡辺さん、落ち着いて落ち着いて」
「は、はい!」
渡辺さんは気を付けのポーズを取る。
「ほら、まだ仕事あるから」
「はい!」
とりあえず落ち着いて良かった。あの後渡辺さんはぼそぼそと何か言っていたけれど、まあ大丈夫だろう。
けど岩先輩にバイト先がばれたのは面倒くさくなるかもしれない。というかなる。そんな憂鬱なことを考えながら俺も仕事に戻る。
「お待たせしましたー」
できた料理を俺が持っていく。できれば関わりたくはなかったがあの様子の渡辺さんを行かせるよりはマシだ。
「おう」
先輩は届いたポテトをすぐに齧りはじめる。なんでこの人は大盛ポテトを二つも頼んでるんだ。好きなのか?
「ん? どうした? 一本欲しいのか?」
「いや……んぐっ!」
いりませんと言おうとして口を開けた時にポテトを突っ込まれる。
「仕方ないな。わがままさんめ」
俺はポテトを咀嚼する。本当に解せない。俺は不服を表すために眉を寄せてからそのままポテトを食べながら戻る。
「岩先輩、終わりましたよ」
「おう終わったか」
バイト終わり、さらにポテトを注文したのか、まだポテトを食べている先輩の対面の席に座った。
「ほら、お前も食べていいぞ」
「……ありがとうございます」
なんかこういうところもあるからこの人を嫌いになれない。ここ数日付き合っただけだけれど、この人に振り回されるのも悪くないとも思っているのも事実だ。非常に悔しいが。
「この後予定はないよな?」
「ないですけど」
「じゃあ道の駅でも行くか」
「道の駅ですか?」
「おう。結構面白いもんだぞ」
結構以外だった。道の駅といえばなんだか地元の野菜とかを売ってるイメージしかない。
「まあ俺に拒否権はないんでついて行きますよ」
「何言ってるんだ、拒否権ぐらいあるさ」
「そうなんですか?」
「おう。拒否されたらそれ以上に押せばいいだけだしな」
先輩はラストのポテトをほおばった。
「それを拒否権がないって言うんですよ」
「そうなのか? ま、細かいことは気にすんな、行くぞ」
そう言って先輩が席を立った瞬間だった。
「あ、あの!」
「え?」
「お?」
「先輩を解放してください!」
俺と同様にバイトを終わらせた渡辺さんが突撃してきた。




