第八話「普通の目撃」
学校と駅の中間にあるコンビニの前を通過中だった。
自分はコンビニには用はないが、コンビニの方を見ると、見覚えのある人物がいた。
結城雪だ。
何やら明らかにガラの悪そうな上級生に絡まれているようだった。
近くに行った方がいいだろうか?
自分があのガラの悪そうなのから見れば貧弱そうな下級生とはいえ、曲がりなりにも男子だし、下手な行動には出なくなるのでは…?
自分は今、車道を挟んだコンビニから見て向かい側の歩道にいるので駆け寄るにも少々時間がかかりそうだが、ガードレールを跨ごうとした刹那…。
「てめー!」
…あ、遅かった?
と思ったら、次の瞬間上級生がよろけていた。
そして、何事もなかったかのような涼しい顔でコンビニに入って行った。
(結城さん、今のは一体?)
直接聞きたい衝動に駆られ、結局車道を渡った。
と同時に、もう一人の知っている人が遅れてやってきて、そしてそのガラの悪そうな上級生の餌食となっていた。
それが自分の一つ前の席の高梨香菜だった。
今朝教室で結城に喧嘩を売ったのとは別人のように顔面蒼白になって店に入っていく。
(自分、何もできてないな…)
別に自分が悪いことをしたわけでもないのに、目の前でよからぬことが起きているのに止められない。
自己嫌悪になりそうだ。
「何見てんだよ?」
因縁をつけられてしまった。
「いえ、別に。」
このガラの悪いのとは関わりたくない。早々に立ち去りたいが店内の二人も気になる。
自分も二人の後を追って店内に入った。
…あれ?高梨がいない?
「あぁ、多田くん…あの不良に絡まれてない?」
結城に話しかけられた。
ちょうど良いか。さっきのことも気になっていたところだし。
「絡まれかけたような…。それより高梨さんは?顔真っ青だったけど?」
「万引きを命令されたみたいね。私が考えた『この場を切り抜ける作戦』上の撤退タイミングまでトイレに隠れていてもらってるわ。」
…流石だ。
高梨の異変も全部わかってただけじゃない、対処まで考えているとは。
今の一言で結城が「普通じゃない」のではなく、「普通の人間ができないことをする」のだとわかる。
「タイミング…?」
作戦というのが気になって聞いてみた。
結城がスマホを見ながら言う。
「あと3分…。」
そう言いながら高梨にメッセージを送る。
高梨がトイレから出てくる。
ほぼ同時に、店の駐車場の一番近い場所にタクシーが止まり、ドアが開いた。
「行くわよ!」
結城が高梨の手を掴んで猛ダッシュして、タクシーに吸い込まれていった。
乗車寸前に、何か入ったレジ袋をガラの悪い上級生に投げつけていた。
「君、さっきの子と知り合い?」
店員に声をかけられた。
「すごいね彼女、やらされてた万引きを止めて、盗んでこいって言われた商品は律儀に買ってったよ。今投げつけたレジ袋の中身がそれ。」
……理解が追いつかない。
(結城さん、何やってんの……。)
店から出た時に、ガラの悪そうな上級生も独り言を言っていた。
「あいつ、何者なんだ…何を考えているんだ?」
うん、それ自分も知りたい。




