第六話「普通のカツアゲ」
下校途中にコンビニに寄ると、突然見るからに不良という感じの、うちの学校の女子生徒に絡まれた。
「ねー、そこのチビ、金貸してくんない?」
リボンの色は3年生、これいわゆるカツアゲである。
こんな言い回しでカツアゲする人物、実在するんだ…。
どう答えようか一瞬考えたが、すぐさまいかにもテンプレな文言が浮かんだので言ってみた。
「融資のお申し込みですね?
かしこまりました。
では、こちらに氏名と住所と年収と現在の家の持ち家か賃貸かの区分と居住年数、あと連帯保証人の記入をお願い致します。
印鑑は三文判で結構です。
あと、身分証明書と源泉徴収票のコピー提出してください。
審査には1週間ほどかかります。
審査の結果ご期待に添えない可能性もありますがよろしいでしょうか?」
一通り言い終わると、不良は馬鹿にされたと思って襲いかかってきた。
「てめー!」
(これは胸倉掴む腕のベクトルね。それなら一歩後ろへ下がりながらしゃがめば躱せるわ。)
人は身の危険を感じた時、超スロー体験をするのだという。
いわば死を回避するために脳が余計な思考に割いているリソースを、一度全部止めて死亡リスクの回避に回すためらしい。
私の場合、意外と意図的にそれができる。
個人的に「脳のオーバークロック」と呼んでいる。
オーバークロックよろしく、エネルギー消費が激しいのであまり使いたく無いのだが。
そして、この脳のオーバークロックを活用して胸倉を掴みにくる腕を躱した。
「!?」
不良は全力で力を込めた腕がスカしたせいで、バランスを崩してよろけた。
「自分で作り出した運動エネルギーを制御できずに転んでも文句言わないで欲しいわ。じゃ、私はこれで。」
そう言ってコンビニ店舗内に入るのだった。




