第二十七話「普通の男らしさ」
……。
ぼくの名前は結城みぞれ。
雪ねえさんとは従兄弟だけど、どちらかというと兄弟のような感じだ。
顔も背丈もほぼ同じで、一緒にいると双子と間違えられることもあった。
雪ねえさんは言葉を話せるようになるのが遅かった。
まわりの子どもたちとは仲よくなれなかった。
ときどき、いじめられていた。
そういう時はぼくが雪ねえさんを守っていた。
……。
小4の時のことだった。
雪姉さんとは顔は似ているが、僕は一応男の子である。
が、顔が女っぽいという理由でやたらとからかわれた。
………。
後から思えば、小学生のよくある一時的なからかいで、無視しておけばよかったのかもしれない。
でも、毎日毎日顔を見るたびにからかわれる。
さすがに僕の中の何かがプツンと音を立てて切れた。
「…つまり、『堪忍袋の尾が切れた』というやつね…。」
同い年なのにこういう難しい言葉を知ってる。
この時にはすでに、僕は守られる存在に逆転していた。
「…でも、普通にケンカしても勝てない。」
「そもそも、相手から直接何もされていないのに手を出したらダメよ。」
「…じゃぁ、泣き寝入りするしかないの?それはいやだ。」
「…だから私に相談しに来たんでしょうに。左斜め45°から反撃してあげましょ?」
そこから雪姉さんコーディネートの謎反撃シナリオがスタートした。
次の授業、担任が言葉を詰まらせた。
「………結城くん……だよね?なんでその格好?」
「はい、結城みぞれです。みんなして顔が女っぽいとか言ってくるので、姉さんと服を交換してみました。似合ってますか?」
「………………。」
「………………。」
担任だけでなく、からかってきた男子一同が沈黙していた。
「相手が仕掛けてきた攻撃は、利用しながら反撃するのよ。合気道みたいに。」
「…合気道やったことないからわかんないんだけど?」
「まぁ、私もないけどね。」
因みに、雪姉さんはこう言った。
「やるなら、徹底的にやるのよ。からかってきた男子全員惚れさせちゃいなさい!」
そう言いながら、自分の髪を止めていたヘアゴムを外して、僕がさっきまでの雪姉さんと同じツーサイドアップにされていた。
―――この謎復讐のゴールは、当時の揶揄ってきた男児全員を陥落させることである。
まだあと一人残ってる。
そんなくだらない理由で女装しているのが結城みぞれという人物である。
「みぞれって、雨と雪が混ざった中途半端な状態を指すんですよね。ある意味僕は『名は体を表す』で、中途半端なのかもしれません。」
「………性別が?」
「……そしてその最後の一人っての、俺なんだよな。」
目を逸らしながら高島が言った。




