第二十八話「普通の事情聴取」
…………。
時間感覚がおかしい。
どれだけ意識を失っていたかわからない。
いや、正確には意識を失った状態で麻酔が入ったはずだ。
自分より遥かに高い位置にぶら下がっている点滴の薬剤を見て察した。
(セファゾリン……外科手術の際によく用いられる抗生物質……。弾の摘出のために外科手術したのね…。)
病室の内装には見覚えがあった。
子供の頃は何度もここに世話になった。
つい最近もここに担ぎ込まれてクラスメイトに随分と心配をかけた。
神無宮郡市医療センターで間違い無いだろう。
現在時刻は……。
時計が見える位置にない。
病室の窓を見ると、直接日が見えないが、影の長さでおおよその太陽高度を推測する。
ほぼ南中高度、正午前後と思われる。
(つまり、ほぼ1日意識がなかったということね…。YaaSのSLAに抵触してしまうわね…。)
とりあえずナースコールを押す。
来た看護師に意識が回復したことを伝えて、色々質問された。
(この後色々あるだろうな……。)
看護師が去ってから10分後に、病室に入って来るのが妥当とは思えない内科の外来の医師が来た。
「…お母様、職権の濫用じゃないの?」
「下手したら即死だったかもしれない娘が助かって意識が回復して開口一番がそれって…辛辣だなぁ…」
「あいにく死にかけても思考回路が仕事モードなのよ…。お母様とお父様のせいよ。」
「見た目は幼女、中身は社畜…格好良くないね。」
「…『ロリ社畜』って言ってほしいわね。」
「どっちにしてもダメだわー…。流石我が娘だー…。」
他愛もない会話の後、警察官二人が入ってきて、色々と質問された。
……が、予想していたよりあっさりと終わった。
(こんなにすんなり終わる物なのか…??)
「…君に聞いたのは確認だけだからね。調書を書くのに十分な情報を事細かく朝倉さんが説明してくれたから、矛盾がないかだけ…。」
警察官はそう言って去って行った。
因みに警察官は現実を受け入れがたかったのか、執刀医には何度も同じことを聞いていたが…。
「弾、筋繊維で止まってたんですよね?貫通とかしないで。」
「筋肉隆々なアメリカ陸軍の軍人とかならまだ理解できるが、あんな華奢な体であり得ない…。」
「……そうですね。これがCTの画像なんですが、このように筋層で止まっています。………あり得ないのは彼女の肩こりですよ。」
(朝倉親子も普通じゃないよなぁ…。知ってたけど。)
その朝倉からのメッセージによると、パクチーは一度目の前の壮絶な光景で失神し、私と一緒に搬送されたが、今朝問題なく退院したとあった。
朝倉に「よかった」と返信したら…
『自分の心配しろ、この姉バカ』と返信されてしまった。




