第二十三話「普通のヤンデレ」
人気がなく、開けた場所が必要だった。
元々拳銃というのは、至近距離での自衛用の武器で、遠くの人間に当てるのは難しい。
しかもあの少女の腕力と、ずっしり重量感のあるトカレフの組み合わせなら尚更である。
距離を保ちながら言葉で挑発して全弾消費させる作戦しかないだろう。
この作戦なら時間を稼いでいるうちに、あるいは朝倉が対処してくれるかもしれない。
人気のない開けた場所、屋上を目指した。
だんだん階段を登る足が重くなっていく。
そして小学生で成長が止まっている呼吸器も限界だ。
(…酸素が…足りない…)
一方、後ろから追ってくる少女はより体力の消耗が深刻なようで、最初こそ
「お兄ちゃんと私の仲を引き裂いて世界を破滅させる悪魔め!」
とか
「お兄ちゃんと私が結婚しないと世界が滅亡する!これがあんたの狙いなのね泥棒猫!」
などと威勢よく叫んでいたが、だんだん苦しそうな息切れしか聞こえなくなっていた。
――中二病+ヤンデレ+引きこもり+銃刀法違反…数え役満じゃないか、これ。
(…血糖値…頑張れ私の肝臓、酸素…頑張れ私の肺と循環器…)
視界が暗くなっていく感覚がありつつも、ようやく屋上に辿り着いた。
鍵を壊して屋上に出るつもりだったが――鍵が開いていた。
「…え……。」
――――屋上で… パクチーが大の字になって寝ていた。




