第二十二話「普通の襲撃」
教室の扉がものすごい勢いで開かれると同時に、
「結城雪っていうのは、あんたね!」
私を名指しする声が響く。
私の席は一番後ろの廊下寄り、扉に一番近いところである。
侵入してきた不審者と真っ先に対面することになる。
身長は140cmくらい、私よりやや小さい。
異常に痩せている。
おそらく著しく摂取カロリーが足りていない拒食症か、もしくは運動強度が足りていない引きこもり。
パーカーのフードを深く被って顔を隠しているとこから見て、後者であろう。
そして手に持った包丁。
だいたい察しがつく――明らかに正常な精神ではなさそうだ。
まだ少女が包丁を持った右手をだらりと下げて構えていないうちに、私は目を逸らさないよう手探りで、スクールバッグからペンチを取り出す。
父の影響で常に持ち歩くようになった工具をこんな形で使うことになるとは…。
少女は明らかに敵意を私に向けている。
「何でお前がここにいるんだ!!」
多田の叫び声。
おそらく事情を知っていそうだが、説明を求めるのは後回しである。
少女が包丁を構えて突進してきたタイミングで、脳をオーバークロック。
(あ、午前中で終業式終わってお昼前で血糖値足りないな…これ長期戦は厳しい…)
包丁の刃をペンチで掴み捻る。
パキーン 音を立てて包丁が折れた。
一安心か。
私の後ろから少女を取り押さえようと朝倉が走ってくる。
しかし…。
少女は凶器をもう一つ持っていた。
重力で記事が下に伸び切ったパーカーのポケットから取り出された物を見て、朝倉が急ブレーキ。
教室に残っていた生徒全員が、包丁で一度凍りついたが、それを見て再度凍りついた。
少女の手に、銀色の金属の塊が握られていた。
「トカレフ…?」
朝倉がボソッと言った。
私には種類までは判別つかないが、重要顧客案件でそこらへんの知識を叩き込まれた朝倉が言うのであればトカレフなのであろう。
少女は拳銃を握っていた。
(まずいな…)
ネット知識ではあるが、トカレフは集弾性が悪く威力過剰でどこに弾が飛ぶか読めないし跳弾リスクもある
ついでに持ってる本人がガリガリで腕がプルプルしている。
なのに片手で構えている…。
場所を変えた方が良さそうだ。
私は咄嗟にカーディガンを脱いで少女の顔に被せるように投げて一瞬視界を塞ぎ、
「こっちよ、着いてきなさい。」
教室前方の扉から出る前に声をかけて誘導した。
一方――
「僕たちも追おう!」
「待って、ちょっと距離空けた方がいいから。」
「あ、高島、職員室に行って状況報告ね。」
「全員、後で実況見分あると思うからこの包丁とか触らないでね!」
教室で朝倉がテキパキと指示を出していた。




